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第二章 水の精霊女王アリア
旦那様‥‥‥それは、やりすぎです‥‥‥ 11
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わたしの精霊女王への昇格を祝う宴が続くなか、一日目。
エバースの城がある時間軸ではない、外界の。
人間界でのその日数がどれくらいなのかを、わたしは知りたかった。
ここで暮らすこの時間、たった数日でも外ではどれだけ時間が流れるのかを。
それは、王国へのある想いがあったから。
「エバース‥‥‥いえ、あなた。
ごめんなさい」
いきなりの謝罪に、シュネイア様が言いたいことを言い、それをクロウ様は不機嫌なまま会場の奥に連れて引っ込んでしまった後に言われた彼は、どう受け止めたものか。
一瞬、戸惑っていた。
「謝罪は聞かないぞ、アリア」
お前は水の精霊女王なのだ。
その判断を誰かに謝るな。
そう、彼が言葉の裏に含んでいるようにわたしには聞こえた。
「違うの、エバース。
過ちを犯したなんて思ってない。
わたしは、なぜあの時。
そう、鏡を抜けた先で時間が巻き戻っていたのかは分からないけど。
でも、それも誰かの責任とか。
そんなことを言いたいんじゃないの」
「時間が巻き戻った?
いや、それはおかしい。
あれは、鏡にはそんな作用はー‥‥‥」
なんだろう、エバースは何かを思ったらしい。
会場の片隅にいたアズオル様を引っ張ってきた。
アズオル様もシュネイア様になにか小言を言われたらしく――
「なあ、エバース。
俺に太陽神にお前。
今回は、どうにも割がだな‥‥‥」
なんて、ぼやいておられた。
「うるさいぞ、アズオル。
アリアが命までかけて行った神殿建設のおかげで神だとふんぞり返ることが出来たのはどこのどいつだ!?」
「それは――俺だがー‥‥‥。
ふんぞり返ってなどおらんぞ?
ただ、あそこまで無責任だのなんだのと言われてはなあ」
ああ、そんなに言ってたんだ。
シュネイア様のご機嫌はまだまだ斜めなんですね。
肩を落とすわたしを、しかし、エバースはしっかりろ、と言い聞かせるように言ってくれた。
「いいかアズオル。
お前とわたしの顔を立てる為に、アリアは家族すら危険に晒したんだ。
結果論だがな。
お前はそうやって神として再び、地上に降臨できている。
それに文句をつける輩をなんと言うか知っているか?」
うっ、と言葉に詰まるアズオル様。
ついでに待っていろ、エバースがそう言って女性陣に囲まれているところを引きずって来たのは、太陽神様。
この時のエバースは、わたしが知らない顔をしていた。
普段の優しい精霊王ではない。
夫としての顔、家族を守る柱として彼は行動しているように見えた。
「おい、太陽神。
お前もお前だ。
アリアが祈りを捧げている間、帝国に助力を求めた王国に対して神託を下しただろう。
その行為の責任を取れ!!」
ドンッ、と二人の神様をテーブル横の席に座らせてエバースは怒っていた。
なぜ、そんなに彼が怒りに思うのか。
なにをどうしたいのか。
わたしには分からなかった。
太陽神様はエバースの扱いに不満の声を上げていた。
「責任をとれなどと、仕方ないではないか。
あの計画そのものが、アズオルの信徒の回復とアリア殿の行為を黙認する。
そういう話だったではないか!?
どう責任を取れというのだ、風の精霊王?
夫として妻を庇いたい気持ちはわかるがな――」
「そんなことは言っていないぞ、太陽神。
わたしが言っているのは、全てを無慈悲に見捨てる。
その神託を出した結果の事だ」
エバースは静かに怒りを含んで二神の方々に話しかけていた。
お前たち、アリアの決断をどうこうと言いながら―――
「太陽神は王国から帝国へと避難民を受け入れ、アズオル。
お前も、王子の作った国に何割かの人々を受け入れたはずだ。
で?
最後に、誰が新たに力を得た?
アリアか、わたしか?」
二神は気まずそうに顔を見合わせていた。
ああ、そういうことだったんだ。
エバースはそこまでこの方々なら見据えて行動するだろう。
そう、考えた結果‥‥‥怒っているんだ。
エバースの城がある時間軸ではない、外界の。
人間界でのその日数がどれくらいなのかを、わたしは知りたかった。
ここで暮らすこの時間、たった数日でも外ではどれだけ時間が流れるのかを。
それは、王国へのある想いがあったから。
「エバース‥‥‥いえ、あなた。
ごめんなさい」
いきなりの謝罪に、シュネイア様が言いたいことを言い、それをクロウ様は不機嫌なまま会場の奥に連れて引っ込んでしまった後に言われた彼は、どう受け止めたものか。
一瞬、戸惑っていた。
「謝罪は聞かないぞ、アリア」
お前は水の精霊女王なのだ。
その判断を誰かに謝るな。
そう、彼が言葉の裏に含んでいるようにわたしには聞こえた。
「違うの、エバース。
過ちを犯したなんて思ってない。
わたしは、なぜあの時。
そう、鏡を抜けた先で時間が巻き戻っていたのかは分からないけど。
でも、それも誰かの責任とか。
そんなことを言いたいんじゃないの」
「時間が巻き戻った?
いや、それはおかしい。
あれは、鏡にはそんな作用はー‥‥‥」
なんだろう、エバースは何かを思ったらしい。
会場の片隅にいたアズオル様を引っ張ってきた。
アズオル様もシュネイア様になにか小言を言われたらしく――
「なあ、エバース。
俺に太陽神にお前。
今回は、どうにも割がだな‥‥‥」
なんて、ぼやいておられた。
「うるさいぞ、アズオル。
アリアが命までかけて行った神殿建設のおかげで神だとふんぞり返ることが出来たのはどこのどいつだ!?」
「それは――俺だがー‥‥‥。
ふんぞり返ってなどおらんぞ?
ただ、あそこまで無責任だのなんだのと言われてはなあ」
ああ、そんなに言ってたんだ。
シュネイア様のご機嫌はまだまだ斜めなんですね。
肩を落とすわたしを、しかし、エバースはしっかりろ、と言い聞かせるように言ってくれた。
「いいかアズオル。
お前とわたしの顔を立てる為に、アリアは家族すら危険に晒したんだ。
結果論だがな。
お前はそうやって神として再び、地上に降臨できている。
それに文句をつける輩をなんと言うか知っているか?」
うっ、と言葉に詰まるアズオル様。
ついでに待っていろ、エバースがそう言って女性陣に囲まれているところを引きずって来たのは、太陽神様。
この時のエバースは、わたしが知らない顔をしていた。
普段の優しい精霊王ではない。
夫としての顔、家族を守る柱として彼は行動しているように見えた。
「おい、太陽神。
お前もお前だ。
アリアが祈りを捧げている間、帝国に助力を求めた王国に対して神託を下しただろう。
その行為の責任を取れ!!」
ドンッ、と二人の神様をテーブル横の席に座らせてエバースは怒っていた。
なぜ、そんなに彼が怒りに思うのか。
なにをどうしたいのか。
わたしには分からなかった。
太陽神様はエバースの扱いに不満の声を上げていた。
「責任をとれなどと、仕方ないではないか。
あの計画そのものが、アズオルの信徒の回復とアリア殿の行為を黙認する。
そういう話だったではないか!?
どう責任を取れというのだ、風の精霊王?
夫として妻を庇いたい気持ちはわかるがな――」
「そんなことは言っていないぞ、太陽神。
わたしが言っているのは、全てを無慈悲に見捨てる。
その神託を出した結果の事だ」
エバースは静かに怒りを含んで二神の方々に話しかけていた。
お前たち、アリアの決断をどうこうと言いながら―――
「太陽神は王国から帝国へと避難民を受け入れ、アズオル。
お前も、王子の作った国に何割かの人々を受け入れたはずだ。
で?
最後に、誰が新たに力を得た?
アリアか、わたしか?」
二神は気まずそうに顔を見合わせていた。
ああ、そういうことだったんだ。
エバースはそこまでこの方々なら見据えて行動するだろう。
そう、考えた結果‥‥‥怒っているんだ。
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