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第一章 闇の聖女と魔王の誕生
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「長い話は好きではないからな。
まずは、これだ‥‥‥」
そう言い、魔王リクトがカイルに手渡したのは彼の二本の愛剣。
幼い頃からカイルが憧れてきた一品。魔神から賜った魔剣ともう一つ‥‥‥。
鞘から双方を抜きだしてカイルはそれぞれを確認する。
その片方の見覚えが無い剣の刀身はあきらかにカイルが、涼が良く知るなじみのあるものだった。
日本刀?
そんな、まさか‥‥‥な?
涼の心は動揺する。
どの時代だ?
戦国時代とでも言われたら――また、ややこしいことになるな。
そう思っていた。
「日本という異世界からここに来たのが、十六歳のときだ。
お前が通った学院のような学び舎があってな。仲間を奪われた」
「奪われた‥‥‥?」
「ああ、ここではない別の世界に、さらわれた。
俺のいた世界は平和そのものだった。ハグーンの進化したような国だ。
こんな剣など持ち歩けば、即、檻の中だ。つまり、俺もまともな人間ではなかった。そういうことだ」
「では、その世界では魔力などを?」
もし、そうだとしたら。
魔王の能力はこの世界に来て使えなくなったことになる。
父親の能力が死んだ姉や弟に遺伝した可能性は高い。
もしくは――魔力が使えない自分も正常だということになる。
だがカイルには記憶がある。涼と入れ替わる前にカイルは膨大な魔力を有していた。
あれはどこに霧散したのか。
「いいや、そんな便利なものはない。
あるかもしれんし、使える存在はいたかもしれん。
だが、俺には関りはなかった。
その二本。
片方が魔剣レンゲスト。神殺しとも呼ばれる魔剣だ。
もう片方は特に銘はない。祖父から譲り受けたものだからな。
刀身の柄付近に刻印があるだろう? 読めるか?」
「いえ‥‥‥このような文字はさすがに。神代のものですか?」
「いいや、俺のいた国の言語だ。
吉光、そう刻まれている」
ああ、なるほどな。
読めますよ、父上。ですが、それを語る訳にはいかない。
カイルはカイルのままで無ければ。
そう、ここで受け入れるような器は‥‥‥ありえないだろ、普通。
「王の錯乱、もしくはその身の簒奪、もしくは‥‥‥どこから変わられましたかな?
魔王リクト陛下?」
「カイル‥‥‥?」
「異世界からやって来たなどと。
そのような戯言。誰が信じますか、魔王陛下。
我が父上はどちらにいかれました?
それとも、この魔王家は日本からきたという正体不明の男に乗っ取られたということですか?」
神殺しの魔剣、か。
ちょうどいい。
異世界から二人も来るなんて、そんな奇跡が起こること自体がおかしい。
そんな偶然が数十年の間に重なる事もだ。
カイルが目覚めるまでの間に‥‥‥不都合な事実は消すべきだ。
涼は静かに魔剣レンゲストに手を伸ばそうとする。
それを見て魔王は静かに笑っていた。
「知っているぞ」
「は‥‥‥??」
俺の中身が変わったことを――知られた?
さすがリクト、腐っても魔王‥‥‥か。
「アイニスに、ラミア。ケルビム枢機卿もだ。
ああ、リーゼは‥‥‥どうだったかな?
お前の母などは、驚嘆していたが受け入れてくれた」
「な、なんですと!?
誰もが、この魔王家の重鎮たちが知っていた‥‥‥と??」
魔王はだからどうした、とせせら笑う。
さも、予想通りだと言うように。
「この世界に来た時。
ラミアの棲み処に転生した。アイニスがいたな。
あれは奴隷だった。当時はラミアとエルフが戦争中でな、ラミアのアーゲイン族は劣勢。
いや、戦うことを知らない種族だ。アーゲイン族はもともと、狩りなどせずに大森林の中でひっそりと。
そう、樹液や木々を食するそんな種族だからな。知っているだろう?」
振られてカイルはうなづくしかない。
それがどうした、そんな感じだ。
「ですが、アイニスが奴隷だったとは?
あれは、陛下の腹心の部下のはず」
「エルフにも三種類あるだろう?
ハイ、ダーク、そして‥‥‥中間のグレイだ。アイニスはグレイだからな。
神に近いハイ、魔に近いダーク。落ちこぼれのグレイ。
人種差別もいいところだ」
「だから‥‥‥奴隷だった、と?
しかし、父上の転生? それとなにが関りが?」
「カイル。
魔王は元から魔王だ。
残忍な心が無ければ、魔に近い存在でなければ一族はついてこない。
俺は大森林のハイエルフを狩った。村を燃やし、大森林の材木を売り、エルフどもを奴隷として輸出した。
人身売買だ。おかげさまでこの国は潤った。
まあ、連中の王族をラミアの婿に迎えたおかげでいまでは善き隣人だ」
なるほど。
ラミアの身辺はそれで判別した。
カイルは理解する。同時にその王はどこに消えた、とも疑問が湧いてきた。
「隣人の王は、いずこに‥‥‥?」
「ん?
ラミアは出産のたびに栄養が必要でな。
それが王だ。問題あるか?
奴隷として売られるか、生贄を捧げるか。判断はつくだろう?」
「ええ、魔王陛下。
まさしく‥‥‥魔王の所業」
だろう?
その残忍な笑顔はカイルには恐怖でしかない。
こんな狂気の世界、さっさと消滅しろ!! 涼はカイルの中でそう叫んでいた。
「さて、ラミアとアイニスは終わったな。次はリーゼか。
あれはな――」
「お待ちを、父上!
そのような国史など、後からでも宜しいではないですか。
御身の具合が大事だと聞き、こうして参りましたのに」
「不満か?」
「いえ、そのような――」
「別にお前でなくてもいいぞ、カイル?
魔王にふさわしい魔力のある者は他にもいるからな」
隷属か、死か。
実の息子にもそれを求めるのか。
さすが魔王。冷酷なものだ‥‥‥。
その声はまるで吹きすさぶ氷河の風のようだった。
まずは、これだ‥‥‥」
そう言い、魔王リクトがカイルに手渡したのは彼の二本の愛剣。
幼い頃からカイルが憧れてきた一品。魔神から賜った魔剣ともう一つ‥‥‥。
鞘から双方を抜きだしてカイルはそれぞれを確認する。
その片方の見覚えが無い剣の刀身はあきらかにカイルが、涼が良く知るなじみのあるものだった。
日本刀?
そんな、まさか‥‥‥な?
涼の心は動揺する。
どの時代だ?
戦国時代とでも言われたら――また、ややこしいことになるな。
そう思っていた。
「日本という異世界からここに来たのが、十六歳のときだ。
お前が通った学院のような学び舎があってな。仲間を奪われた」
「奪われた‥‥‥?」
「ああ、ここではない別の世界に、さらわれた。
俺のいた世界は平和そのものだった。ハグーンの進化したような国だ。
こんな剣など持ち歩けば、即、檻の中だ。つまり、俺もまともな人間ではなかった。そういうことだ」
「では、その世界では魔力などを?」
もし、そうだとしたら。
魔王の能力はこの世界に来て使えなくなったことになる。
父親の能力が死んだ姉や弟に遺伝した可能性は高い。
もしくは――魔力が使えない自分も正常だということになる。
だがカイルには記憶がある。涼と入れ替わる前にカイルは膨大な魔力を有していた。
あれはどこに霧散したのか。
「いいや、そんな便利なものはない。
あるかもしれんし、使える存在はいたかもしれん。
だが、俺には関りはなかった。
その二本。
片方が魔剣レンゲスト。神殺しとも呼ばれる魔剣だ。
もう片方は特に銘はない。祖父から譲り受けたものだからな。
刀身の柄付近に刻印があるだろう? 読めるか?」
「いえ‥‥‥このような文字はさすがに。神代のものですか?」
「いいや、俺のいた国の言語だ。
吉光、そう刻まれている」
ああ、なるほどな。
読めますよ、父上。ですが、それを語る訳にはいかない。
カイルはカイルのままで無ければ。
そう、ここで受け入れるような器は‥‥‥ありえないだろ、普通。
「王の錯乱、もしくはその身の簒奪、もしくは‥‥‥どこから変わられましたかな?
魔王リクト陛下?」
「カイル‥‥‥?」
「異世界からやって来たなどと。
そのような戯言。誰が信じますか、魔王陛下。
我が父上はどちらにいかれました?
それとも、この魔王家は日本からきたという正体不明の男に乗っ取られたということですか?」
神殺しの魔剣、か。
ちょうどいい。
異世界から二人も来るなんて、そんな奇跡が起こること自体がおかしい。
そんな偶然が数十年の間に重なる事もだ。
カイルが目覚めるまでの間に‥‥‥不都合な事実は消すべきだ。
涼は静かに魔剣レンゲストに手を伸ばそうとする。
それを見て魔王は静かに笑っていた。
「知っているぞ」
「は‥‥‥??」
俺の中身が変わったことを――知られた?
さすがリクト、腐っても魔王‥‥‥か。
「アイニスに、ラミア。ケルビム枢機卿もだ。
ああ、リーゼは‥‥‥どうだったかな?
お前の母などは、驚嘆していたが受け入れてくれた」
「な、なんですと!?
誰もが、この魔王家の重鎮たちが知っていた‥‥‥と??」
魔王はだからどうした、とせせら笑う。
さも、予想通りだと言うように。
「この世界に来た時。
ラミアの棲み処に転生した。アイニスがいたな。
あれは奴隷だった。当時はラミアとエルフが戦争中でな、ラミアのアーゲイン族は劣勢。
いや、戦うことを知らない種族だ。アーゲイン族はもともと、狩りなどせずに大森林の中でひっそりと。
そう、樹液や木々を食するそんな種族だからな。知っているだろう?」
振られてカイルはうなづくしかない。
それがどうした、そんな感じだ。
「ですが、アイニスが奴隷だったとは?
あれは、陛下の腹心の部下のはず」
「エルフにも三種類あるだろう?
ハイ、ダーク、そして‥‥‥中間のグレイだ。アイニスはグレイだからな。
神に近いハイ、魔に近いダーク。落ちこぼれのグレイ。
人種差別もいいところだ」
「だから‥‥‥奴隷だった、と?
しかし、父上の転生? それとなにが関りが?」
「カイル。
魔王は元から魔王だ。
残忍な心が無ければ、魔に近い存在でなければ一族はついてこない。
俺は大森林のハイエルフを狩った。村を燃やし、大森林の材木を売り、エルフどもを奴隷として輸出した。
人身売買だ。おかげさまでこの国は潤った。
まあ、連中の王族をラミアの婿に迎えたおかげでいまでは善き隣人だ」
なるほど。
ラミアの身辺はそれで判別した。
カイルは理解する。同時にその王はどこに消えた、とも疑問が湧いてきた。
「隣人の王は、いずこに‥‥‥?」
「ん?
ラミアは出産のたびに栄養が必要でな。
それが王だ。問題あるか?
奴隷として売られるか、生贄を捧げるか。判断はつくだろう?」
「ええ、魔王陛下。
まさしく‥‥‥魔王の所業」
だろう?
その残忍な笑顔はカイルには恐怖でしかない。
こんな狂気の世界、さっさと消滅しろ!! 涼はカイルの中でそう叫んでいた。
「さて、ラミアとアイニスは終わったな。次はリーゼか。
あれはな――」
「お待ちを、父上!
そのような国史など、後からでも宜しいではないですか。
御身の具合が大事だと聞き、こうして参りましたのに」
「不満か?」
「いえ、そのような――」
「別にお前でなくてもいいぞ、カイル?
魔王にふさわしい魔力のある者は他にもいるからな」
隷属か、死か。
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その声はまるで吹きすさぶ氷河の風のようだった。
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