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プロローグ
有罪のアリス
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ナバルはこれまでアリスが見たことがない、真面目な顔つきになっている。
それを見てアリスが思ったこと。
王子は何か別の意図によって断罪しようとしている?
そんなことだった。しかし――
「アリス、僕の妻も、このシェイルディア王国に住むグレイエルフの多くが‥‥‥君の大陸からの流民だ」
「え‥‥‥? 流民なんているはずが――」
「いるのだよ、アリス。どこの大陸もそうなのかは僕は知らない。だが、この西の大陸シェドにおいては、君たちグレイエルフの王国における、王侯貴族と一般の民との貧富の差があまりにも激しいことを知らないのか」
「それは民の普段の暮らしや生き方に問題があるのです。王侯貴族はなにも搾取などしてはおりません」
「呆れたものだな‥‥‥それで四百年か。それでな‥‥‥」
「なんですか、その見下げ果てたような物言いは?」
「ああ、見下げ果てているのだ。偉大なる四百歳の見識にな」
「心外ですわ、殿下」
「ほう、殿下と呼んでくれるのか?」
「仕方ないでしょう、ほら、来られましたよ。あなたの妻の使者とやらが」
「確かに、だがどうして今更殿下なんて呼んだ?」
「当たり前でしょう?」
アリスは呆れた顔をする。
何を当たり前のことを言うのかと、頭がいくつか高い、王子を見上げていた。
彼はこの国の王子なのだ。
部下の前で恥をかかせるわけにはいかない。
それこそ、当たり前のことなのに。
などと思っているとナバル王子は王子妃からの手紙を受け取っていた。
使者とやらになにか話しかけ、伝言を伝えると相手は部屋から退出していった。
「当たり前かどうかは知らんが、僕を立ててくれたことには感謝するよ、アリス」
「ええ、感謝を形であらわして頂きたいものですよ、殿下」
「正室には迎えないからな?」
「は?」
「だから、さっき言っただろう」
「何をですか?」
「正室にするなら、殿下と呼んでも良いと」
「ああ‥‥‥冗談です。あんなの。既婚者、しかも王子妃様を差し置いてそんな望み持ちません」
「持たれても困るがな。罪人には‥‥‥」
「さっきからなんですか、その罪人、罪人って」
王子は罪人はそのままだ、としたり顔でいう。
アリスはそろそろ、その理由を聞いてやろうと思っていたから丁度、都合が良かった。
苛立ちを募らせるのは精神衛生上、宜しくないのだ。
「罪人は罪人だ。もしかして‥‥‥」
「ええ、そのもしかしてです。なぜそう呼ばれているのか、ずっと謎でした」
「いやしかし、断首のときなどに読み上げをしていたはずだ」
「あんなもの、邪魔だからさっさとやってくれって言ってましたから」
「お前なあ、役人どもの仕事を奪うなよ‥‥‥」
「どうでもいいですから、さっさと仰ってくださいな。わたしが一体、この国でなにをしたというのですか!?」
「無知と言うのは怖いものだな。済まなかった」
「済まなかったって、今更謝られても遅いんですけど!?」
「謝罪しているのは、正しい法律の運用が成されていなかったからだ」
「ますますもってあなたを殴りたくなってきました!!」
もう、我慢しなくていいわよね?
そう銀色猫もどきをアリスが見た時だ。
猫もどきは、ほら、本題に入るぞと尾を上げていた。
「まあ、そういう落ち度に対してであれば、殴っても構わんぞ」
「‥‥‥は? 待ってくださいよ、じゃあ貴方にはほかに落ち度はないとでも?」
「さあ? 今はないはずだ」
「ありまくりでしょっ!! 勝手にこの国に呼びつけ、やって来てみれば歌劇を披露した夜によりにもよって同族を人質にされての婚約申し込み! その上、行き当たりばったりで婚約破棄。今度も同族を盾に取られてですよ。どうすれば良かったと!?」
「だからだ、アリス。その歌が君を有罪にしたんだ‥‥‥」
「えっ‥‥‥?」
青天の霹靂。
ならなんで呼んだのよバカ王子。
そう思ったとき多分、怒りの限界だったのだろう。
自分の手が拳を握りしめて無防備な王子の腹に叩きこまれたことを、アリスは王子が腹を抱えてうめいた時に知ったのだった。
それを見てアリスが思ったこと。
王子は何か別の意図によって断罪しようとしている?
そんなことだった。しかし――
「アリス、僕の妻も、このシェイルディア王国に住むグレイエルフの多くが‥‥‥君の大陸からの流民だ」
「え‥‥‥? 流民なんているはずが――」
「いるのだよ、アリス。どこの大陸もそうなのかは僕は知らない。だが、この西の大陸シェドにおいては、君たちグレイエルフの王国における、王侯貴族と一般の民との貧富の差があまりにも激しいことを知らないのか」
「それは民の普段の暮らしや生き方に問題があるのです。王侯貴族はなにも搾取などしてはおりません」
「呆れたものだな‥‥‥それで四百年か。それでな‥‥‥」
「なんですか、その見下げ果てたような物言いは?」
「ああ、見下げ果てているのだ。偉大なる四百歳の見識にな」
「心外ですわ、殿下」
「ほう、殿下と呼んでくれるのか?」
「仕方ないでしょう、ほら、来られましたよ。あなたの妻の使者とやらが」
「確かに、だがどうして今更殿下なんて呼んだ?」
「当たり前でしょう?」
アリスは呆れた顔をする。
何を当たり前のことを言うのかと、頭がいくつか高い、王子を見上げていた。
彼はこの国の王子なのだ。
部下の前で恥をかかせるわけにはいかない。
それこそ、当たり前のことなのに。
などと思っているとナバル王子は王子妃からの手紙を受け取っていた。
使者とやらになにか話しかけ、伝言を伝えると相手は部屋から退出していった。
「当たり前かどうかは知らんが、僕を立ててくれたことには感謝するよ、アリス」
「ええ、感謝を形であらわして頂きたいものですよ、殿下」
「正室には迎えないからな?」
「は?」
「だから、さっき言っただろう」
「何をですか?」
「正室にするなら、殿下と呼んでも良いと」
「ああ‥‥‥冗談です。あんなの。既婚者、しかも王子妃様を差し置いてそんな望み持ちません」
「持たれても困るがな。罪人には‥‥‥」
「さっきからなんですか、その罪人、罪人って」
王子は罪人はそのままだ、としたり顔でいう。
アリスはそろそろ、その理由を聞いてやろうと思っていたから丁度、都合が良かった。
苛立ちを募らせるのは精神衛生上、宜しくないのだ。
「罪人は罪人だ。もしかして‥‥‥」
「ええ、そのもしかしてです。なぜそう呼ばれているのか、ずっと謎でした」
「いやしかし、断首のときなどに読み上げをしていたはずだ」
「あんなもの、邪魔だからさっさとやってくれって言ってましたから」
「お前なあ、役人どもの仕事を奪うなよ‥‥‥」
「どうでもいいですから、さっさと仰ってくださいな。わたしが一体、この国でなにをしたというのですか!?」
「無知と言うのは怖いものだな。済まなかった」
「済まなかったって、今更謝られても遅いんですけど!?」
「謝罪しているのは、正しい法律の運用が成されていなかったからだ」
「ますますもってあなたを殴りたくなってきました!!」
もう、我慢しなくていいわよね?
そう銀色猫もどきをアリスが見た時だ。
猫もどきは、ほら、本題に入るぞと尾を上げていた。
「まあ、そういう落ち度に対してであれば、殴っても構わんぞ」
「‥‥‥は? 待ってくださいよ、じゃあ貴方にはほかに落ち度はないとでも?」
「さあ? 今はないはずだ」
「ありまくりでしょっ!! 勝手にこの国に呼びつけ、やって来てみれば歌劇を披露した夜によりにもよって同族を人質にされての婚約申し込み! その上、行き当たりばったりで婚約破棄。今度も同族を盾に取られてですよ。どうすれば良かったと!?」
「だからだ、アリス。その歌が君を有罪にしたんだ‥‥‥」
「えっ‥‥‥?」
青天の霹靂。
ならなんで呼んだのよバカ王子。
そう思ったとき多分、怒りの限界だったのだろう。
自分の手が拳を握りしめて無防備な王子の腹に叩きこまれたことを、アリスは王子が腹を抱えてうめいた時に知ったのだった。
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