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「人間様と馬や犬みたいに。
躾けるんだとさ‥‥‥。
悪趣味にもほどがあるぜ‥‥‥」
と。
その場にいたポーターたちはその性癖は無理だ。
まともじゃない。
そう声を上げた。
「まったくだ‥‥‥倒錯した趣味?
いや、悪癖にもほどがある」
その場ではレオンは笑ってそう過ごした。
自分の婚約者も没落貴族の令嬢で、年ごろだ、そんなことは夢にも思わなかった。
それから数日しての事だ。
レオンがスローン卿に呼び出しを受けたのは。
「すまないな、レオン。
ここでしか話せない」
そこはスローン卿の持つ会社の、例の社長室だったからレオンは何か新規事業の話かと思い首を傾げた。
「なんだい、イゼア?
電報なんて‥‥‥」
なあ、レオン。
そう、スローン卿は悩みに悩んだ顔をして語り出す。
「あれから、マキナ嬢とは会っているのか?」
あれから?
あの、二か月ほど前に連れて来てからだろうか?
「まあ、そんなに何度も伺うのは失礼に当たるが。
週に一度程度には‥‥‥どうかしたのか?」
そうか。
スローン卿は重たそうに息を吐いた。
「お前の買ったその工場だが。
男爵閣下とやら別の貴族に名義貸しをしていたのは知っているか?」
「名義貸し?
それが何かおかしいのか?」
スローン卿は黙って、工場の売買情報などを細かく調べた書類を見せた。
「エレアザル女大公様の持ち物だ。
数年前からな。
まあ、縫製事業は売れないと分かって売りに出したんだろう」
へえ‥‥‥
レオンは社交界にはまったく疎かった。
「知らないのか?
エレアザル女大公と言えば‥‥‥裏では特殊な趣味をお持ちの貴族連中の筆頭だぞ?」
ん?
レオンの中で何かのピースがハマっていく。
あのポーター連中の噂、工場の売却、マキナ嬢を名義変更にしたことといい。
「イゼア。
これは何かの悪い冗談になる、そんなことはないよな?」
半ば、冗談であって欲しい。
そうレオンは親友に語りかけた。
「どうだろうな。
言うべきか、二週間、迷った。
そうでないことを祈りたいものだ」
「なあ、おい。
何かないのか‥‥‥その、そう言った趣味に倒錯したものが受けるような。
特徴は‥‥‥?」
「焼き印が、あるそうだ。
女大公のEの文字をかたどったものが。
左の肩甲骨の下にあるのだと。
だから、最近では背中を見せるドレスが不人気なんて噂もある」
確かめる気なのか?
そうスローン卿は視線で親友に確認する。
「さて、もしそうなら‥‥‥僕はどうするべきだろうなあ。
受け入れるべきか?」
「おい、レオン。
お前はどこまでお人よしなんだ?!
受け入れて結婚して、屋敷に牢獄でも作るつもりか?
その刻印を見るたびに、苦しむのは‥‥‥お前だぞ?」
困ったな。
そう、レオンは本心で困り果てていた。
愛すると誓ってしまったのだ。
言葉を撤回することは、もうできなかった。
「‥‥‥すまない、スローン卿。
これには感謝するよ」
レオン・ウィンダミア子爵は蒼白な顔面のまま、その場を後にした。
躾けるんだとさ‥‥‥。
悪趣味にもほどがあるぜ‥‥‥」
と。
その場にいたポーターたちはその性癖は無理だ。
まともじゃない。
そう声を上げた。
「まったくだ‥‥‥倒錯した趣味?
いや、悪癖にもほどがある」
その場ではレオンは笑ってそう過ごした。
自分の婚約者も没落貴族の令嬢で、年ごろだ、そんなことは夢にも思わなかった。
それから数日しての事だ。
レオンがスローン卿に呼び出しを受けたのは。
「すまないな、レオン。
ここでしか話せない」
そこはスローン卿の持つ会社の、例の社長室だったからレオンは何か新規事業の話かと思い首を傾げた。
「なんだい、イゼア?
電報なんて‥‥‥」
なあ、レオン。
そう、スローン卿は悩みに悩んだ顔をして語り出す。
「あれから、マキナ嬢とは会っているのか?」
あれから?
あの、二か月ほど前に連れて来てからだろうか?
「まあ、そんなに何度も伺うのは失礼に当たるが。
週に一度程度には‥‥‥どうかしたのか?」
そうか。
スローン卿は重たそうに息を吐いた。
「お前の買ったその工場だが。
男爵閣下とやら別の貴族に名義貸しをしていたのは知っているか?」
「名義貸し?
それが何かおかしいのか?」
スローン卿は黙って、工場の売買情報などを細かく調べた書類を見せた。
「エレアザル女大公様の持ち物だ。
数年前からな。
まあ、縫製事業は売れないと分かって売りに出したんだろう」
へえ‥‥‥
レオンは社交界にはまったく疎かった。
「知らないのか?
エレアザル女大公と言えば‥‥‥裏では特殊な趣味をお持ちの貴族連中の筆頭だぞ?」
ん?
レオンの中で何かのピースがハマっていく。
あのポーター連中の噂、工場の売却、マキナ嬢を名義変更にしたことといい。
「イゼア。
これは何かの悪い冗談になる、そんなことはないよな?」
半ば、冗談であって欲しい。
そうレオンは親友に語りかけた。
「どうだろうな。
言うべきか、二週間、迷った。
そうでないことを祈りたいものだ」
「なあ、おい。
何かないのか‥‥‥その、そう言った趣味に倒錯したものが受けるような。
特徴は‥‥‥?」
「焼き印が、あるそうだ。
女大公のEの文字をかたどったものが。
左の肩甲骨の下にあるのだと。
だから、最近では背中を見せるドレスが不人気なんて噂もある」
確かめる気なのか?
そうスローン卿は視線で親友に確認する。
「さて、もしそうなら‥‥‥僕はどうするべきだろうなあ。
受け入れるべきか?」
「おい、レオン。
お前はどこまでお人よしなんだ?!
受け入れて結婚して、屋敷に牢獄でも作るつもりか?
その刻印を見るたびに、苦しむのは‥‥‥お前だぞ?」
困ったな。
そう、レオンは本心で困り果てていた。
愛すると誓ってしまったのだ。
言葉を撤回することは、もうできなかった。
「‥‥‥すまない、スローン卿。
これには感謝するよ」
レオン・ウィンダミア子爵は蒼白な顔面のまま、その場を後にした。
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