4 / 9
4
しおりを挟む
「確かに言われてみればそうだが‥‥‥。
なら町工場で働いている平民と変わらない女を側に置く気か?
いやそれよりも、お前。
爵位の差はどうするんだ?
子爵と侯爵令嬢では身分の差が‥‥‥」
「おいおい、機械式帆船が動くこの時代だぜ?
今時、そこまでややこしくは言わないさ。
貴族院に‥‥‥な?」
多額の献金をすれば、か。
なるほどな。
スローン卿はそこまでは納得した。
しかし、そんな大金を支払ってまであの少女を得る価値はどこにあるのか。
それが理解できなかった。
「なあ、レオン。
親友として聞くから押しえてくれないか?
あのマキナ嬢のなにが‥‥‥いいんだ?」
爵位か?
他にはないあの美貌か?
利発さか?
若さか?
幾つかの質問をかさねるが、子爵はどれにも首をふる。
「前にな‥‥‥覚えているか?
昨年の秋ごろにとある男爵閣下の持ち物だった工場が売りに出されていただろ?」
秋?
あの事業に失敗して資産を失い、持っていた物を競売にかけられた男爵閣下が確かにいた。
スローン卿は記憶を手繰り寄せる。
「それとどう関係がある?」
「あの男爵閣下な、なかなかせこい人物だった。
売る前に、名義をあのマキナ嬢に書き換えたんだ。
侯爵令嬢の資産だと値は三倍にも跳ね上がる。
契約書を交わした後にやられたんだよ‥‥‥」
「詐欺もいいとこじゃないか!?
ならなんだ?
契約金の三倍も払ってあの工場ごと‥‥‥」
レオンは困ったような顔をした。
「ある意味、人身売買に近いことをしてしまった。
もうこうなるなら、婚約をな。
そう思い申し入れた‥‥‥」
お前は馬鹿か‥‥‥!?
その言葉が喉元まで出かかっていた。
どこまでお人よしなんだ、お前は、と。
しかし、とスローン卿は思いなおす。
それであっても、彼が。
この旧友が幸せを手に入れれるなら、それは友として喜ばしいことだ。
「まあ、それでいいなら。
おめでとう、というしかないな」
この日はそれから数時間の会話を済まして、マキナ嬢はお菓子を弟たちに、と。
箱に包んで喜んで持ち帰っていった。
本当にこれでいいものか?
スローン卿はどうももやもやしたものを抱えてその日を終えたことを覚えている。
レオンはマキナとの婚約に向けて準備を進めている間。
彼は暇を見つけては運動と称して、例のポーターの仕事に励んでいた。
仲間も出来たりして、彼らの家に呼ばれ朝まで飲んだり、親方のおごりでどこかの王都内の安宿を借り切って仲間たちと飲むことも数度あった。
ある仲間がこんな話をしだした。
「最近の上流階級の奥様方の間じゃ、あれが流行りだそうだな?」
あれ?
その意味ありげな単語に、妙な怪しい雰囲気をかぎつけて周りの連中も集まってきた。
「女性同士で楽しむんだとさ。
中には、金のある侯爵夫人が、没落貴族の令嬢の若い子を集めて教育するんだとさ」
「教育?
なんの教育だよ?」
そりゃ‥‥‥なあ?
彼は酒も入っていたが、品性のない男ではなかったからうまい言い様が出来なかった。
すると、別の人物がそこに口を出す。
なら町工場で働いている平民と変わらない女を側に置く気か?
いやそれよりも、お前。
爵位の差はどうするんだ?
子爵と侯爵令嬢では身分の差が‥‥‥」
「おいおい、機械式帆船が動くこの時代だぜ?
今時、そこまでややこしくは言わないさ。
貴族院に‥‥‥な?」
多額の献金をすれば、か。
なるほどな。
スローン卿はそこまでは納得した。
しかし、そんな大金を支払ってまであの少女を得る価値はどこにあるのか。
それが理解できなかった。
「なあ、レオン。
親友として聞くから押しえてくれないか?
あのマキナ嬢のなにが‥‥‥いいんだ?」
爵位か?
他にはないあの美貌か?
利発さか?
若さか?
幾つかの質問をかさねるが、子爵はどれにも首をふる。
「前にな‥‥‥覚えているか?
昨年の秋ごろにとある男爵閣下の持ち物だった工場が売りに出されていただろ?」
秋?
あの事業に失敗して資産を失い、持っていた物を競売にかけられた男爵閣下が確かにいた。
スローン卿は記憶を手繰り寄せる。
「それとどう関係がある?」
「あの男爵閣下な、なかなかせこい人物だった。
売る前に、名義をあのマキナ嬢に書き換えたんだ。
侯爵令嬢の資産だと値は三倍にも跳ね上がる。
契約書を交わした後にやられたんだよ‥‥‥」
「詐欺もいいとこじゃないか!?
ならなんだ?
契約金の三倍も払ってあの工場ごと‥‥‥」
レオンは困ったような顔をした。
「ある意味、人身売買に近いことをしてしまった。
もうこうなるなら、婚約をな。
そう思い申し入れた‥‥‥」
お前は馬鹿か‥‥‥!?
その言葉が喉元まで出かかっていた。
どこまでお人よしなんだ、お前は、と。
しかし、とスローン卿は思いなおす。
それであっても、彼が。
この旧友が幸せを手に入れれるなら、それは友として喜ばしいことだ。
「まあ、それでいいなら。
おめでとう、というしかないな」
この日はそれから数時間の会話を済まして、マキナ嬢はお菓子を弟たちに、と。
箱に包んで喜んで持ち帰っていった。
本当にこれでいいものか?
スローン卿はどうももやもやしたものを抱えてその日を終えたことを覚えている。
レオンはマキナとの婚約に向けて準備を進めている間。
彼は暇を見つけては運動と称して、例のポーターの仕事に励んでいた。
仲間も出来たりして、彼らの家に呼ばれ朝まで飲んだり、親方のおごりでどこかの王都内の安宿を借り切って仲間たちと飲むことも数度あった。
ある仲間がこんな話をしだした。
「最近の上流階級の奥様方の間じゃ、あれが流行りだそうだな?」
あれ?
その意味ありげな単語に、妙な怪しい雰囲気をかぎつけて周りの連中も集まってきた。
「女性同士で楽しむんだとさ。
中には、金のある侯爵夫人が、没落貴族の令嬢の若い子を集めて教育するんだとさ」
「教育?
なんの教育だよ?」
そりゃ‥‥‥なあ?
彼は酒も入っていたが、品性のない男ではなかったからうまい言い様が出来なかった。
すると、別の人物がそこに口を出す。
10
あなたにおすすめの小説
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
婚約破棄の日の夜に
夕景あき
恋愛
公爵令嬢ロージーは卒業パーティの日、金髪碧眼の第一王子に婚約破棄を言い渡された。第一王子の腕には、平民のティアラ嬢が抱かれていた。
ロージーが身に覚えのない罪で、第一王子に糾弾されたその時、守ってくれたのは第二王子だった。
そんな婚約破棄騒動があった日の夜に、どんでん返しが待っていた·····
最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる
椿谷あずる
恋愛
婚約者カインの口から、一方的に別れを告げられたルーミア。
その隣では、彼が庇う女、アメリが怯える素振りを見せながら、こっそりと勝者の微笑みを浮かべていた。
──ああ、なるほど。私は、最初から負ける役だったのね。
全てを悟ったルーミアは、静かに微笑み、淡々と婚約破棄を受け入れる。
だが、その背中を向ける間際、彼女はふと立ち止まり、振り返った。
「……ねえ、最後に一つだけ。教えてあげるわ」
その一言が、すべての運命を覆すとも知らずに。
裏切られた彼女は、微笑みながらすべてを奪い返す──これは、華麗なる逆転劇の始まり。
偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜
紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。
しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。
私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。
近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。
泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。
私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。
『婚約破棄された令嬢ですが、王国は私抜きでは立てなかったようですね』
鷹 綾
恋愛
「愛しているのは彼女だ」
王太子ロネスにそう告げられ、婚約を破棄された侯爵令嬢エルゼリア・クローヴェル。
感情をぶつけることも、復讐を誓うこともなく、
彼女はただ――王宮を去った。
しかしその直後から、王国は静かに崩れ始める。
外交は滞り、判断は遅れ、市場は揺れ、
かつて「問題なく回っていた」はずの政務が、次々と行き詰まっていった。
一方、エルゼリアは帝国で新たな立場を得ていた。
帝国宰相ハインリヒ・ヴォルフの隣で、
彼女は再び“判断する側”として歩み始める。
やがて明らかになるのは、
王国が失ったのは「婚約者」ではなく、
判断を引き継ぐ仕組みそのものだったという事実。
謝罪も、復縁も、感情的なざまあもない。
それでも――
選ばれ、認められ、引き継がれていくのは、誰なのか。
これは、
捨てられた令嬢が声を荒げることなく、
世界のほうが彼女を必要としてしまった物語。
ざまぁはハッピーエンドのエンディング後に
ララ
恋愛
私は由緒正しい公爵家に生まれたシルビア。
幼い頃に結ばれた婚約により時期王妃になることが確定している。
だからこそ王妃教育も精一杯受け、王妃にふさわしい振る舞いと能力を身につけた。
特に婚約者である王太子は少し?いやかなり頭が足りないのだ。
余計に私が頑張らなければならない。
王妃となり国を支える。
そんな確定した未来であったはずなのにある日突然破られた。
学園にピンク色の髪を持つ少女が現れたからだ。
なんとその子は自身をヒロイン?だとか言って婚約者のいるしかも王族である王太子に馴れ馴れしく接してきた。
何度かそれを諌めるも聞く耳を持たず挙句の果てには私がいじめてくるだなんだ言って王太子に泣きついた。
なんと王太子は彼女の言葉を全て鵜呑みにして私を悪女に仕立て上げ国外追放をいい渡す。
はぁ〜、一体誰の悪知恵なんだか?
まぁいいわ。
国外追放喜んでお受けいたします。
けれどどうかお忘れにならないでくださいな?
全ての責はあなたにあると言うことを。
後悔しても知りませんわよ。
そう言い残して私は毅然とした態度で、内心ルンルンとこの国を去る。
ふふっ、これからが楽しみだわ。
婚約破棄から始まる、私の愛され人生
有賀冬馬
恋愛
婚約者・エドに毎日いじめられていたマリアンヌ。結婚を望まれ、家のために耐える日々。だが、突如としてエドに婚約破棄され、絶望の淵に立たされる――。
そんな彼女の前に現れたのは、ずっと彼女を想い続けていた誠実な青年、クリス。彼はマリアンヌに優しく手を差し伸べ、彼女の心を温かく包み込む。
新しい恋人との幸せな日々が始まる中、マリアンヌは自分を愛してくれる人に出会い、真実の愛を知ることに――。
絶望の先に待っていたのは、心の傷を癒す「本当の幸せ」。
エデルガルトの幸せ
よーこ
恋愛
よくある婚約破棄もの。
学院の昼休みに幼い頃からの婚約者に呼び出され、婚約破棄を突きつけられたエデルガルト。
彼女が長年の婚約者から離れ、新しい恋をして幸せになるまでのお話。
全5話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる