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第四章
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しおりを挟むハーミアが聖女として地球からイルベルに異世界召喚されるより数年前。
はるか天上に浮かぶ銀の月に三つの神がいた。
円卓に三神だけが座っている。
一つはかつて南の大陸を管轄した、大神ダーシェの悪なる半身。
知恵と雷の神。
一つはかつて東の大陸を管轄した、海神エストの悪なる半身。
海と商業の神。
一つは現在の天空大陸を管轄する、竜神アルバス。
風と戦の神。
かれらは、その本体が消滅、あるいはイルベルにいながらその悪の半身だけが抜け出て銀の月に居座った管理者だった。
アルバスはまだ地上にいるが、エストとダーシェの善なる半身はすでにこの世から消滅していたからだ。
遊戯盤を前にして、はるか一万年まえに最高神によって禁じられた遊びに、彼らは興じようとしていた。
それぞれが管轄する大陸から、勇者や聖女や魔王や鬼人を選んで戦わせる。
そんなゲームのために、三神は集まってどちらの陣営が勝つかを楽しもうというわけだ。
「これはどうだろう、それぞれの国をかけるというのももったいない話だな」
そう、ダーシェが言う。
「しかし、どちらかの国が代表を立てないとゲームが始まらない」
エストは難色を示した。
「両国でせめぎ合っても、体力を失うだけだな、これでは」
アルバスは思案する。
「やるならば、代表者はどちらかが出せばよい。だが」
「だが?」
エストにダーシェが聞き返す。
「手勢は別のところで集めるなり、傭兵を使えばよかろう」
「ふむ・・・・・・」
ダーシェは思案する。そこに、アルバスが口を挟んだ。
「西の大陸の一部に、私を奉じる国がある」
「ふん?
それでどうする?
西は、管轄外だ」
だから、とアルバスは続ける。
「そこから代表と戦力を集めながら、西の私の神殿に来させよう」
しかし、とエストが不思議がる。
「どうやって、手勢を集めるのだ?
西でやれば、また文句がでるぞ?」
と、西の管轄の神から嫌味を言われるとエストはダーシェに言った。
「大丈夫だ。
まずは、聖女を立てよう。
エルグランデ王国という小国が東の大陸の北部にある。
そこの私の女官から誰か選べばいい。
そうだな、これはどうだ?
真紅の髪。エレーナというようだな。
しかし、善なる私に気づかれてはまずい。
夢でも見させればよいか。神託だ、聖女になり、魔族を討伐せよ、と。
東の大陸エゼアの、神聖アーハンルド王国の王都にある、竜神アルバスの神殿までいけ、と」
「ほうほう」
「その道すがら、同じように、夢を見させればよいのだ。
せいぜい、駒になる人間を天使にでも選ばせてな」
エストとアルバスは感心する。
「それは良い案だな、ダーシェ。
だがーー」
敵はどうする?
そう、エストはダーシェに問う。
ダーシェは考えた。
ふと、魔神グレアムのことが頭をよぎった。
――そういえば、ここ数百年はおろか。
千年以上、グレアムは姿を現していない。
その半身である我らのような管理者も姿を見ていないな。
そう、ダーシェは思った。
そして思いつく。
「そうだ、エストにアルバスよ。
今回は魔族だけでなく、人類にも敵をさせようではないか。
ほれ、グレアムなどもう、千年も姿を現していない。
文句の出ようもないだろう。
人間の国家なら、西の大陸の覇者、エルムド帝国があるではないか。
あそこは太陽神アギトを奉じている。宜しくない」
なるほど、とエストは感心した。
それは良い案だとアルバスは称えた。
「そうなると、ダーシェ。
魔族の長か。
魔王と呼ぶにふさわしい者など、いたのかな?」
そういい、エストは下界を映し出す水鏡を見下ろした。
ダーシェとエストは、地上に住む魔族の中で、魔力の高い者を探していく。
「ふーむ。
魔王シェイブはまずいな。
ルクスターか‥‥‥、それとも、これはどうだ?
いるとすれば、ほれ、これだ」
とダーシェは水鏡に映ったそれを見る。
「ほう、夢魔か。
まあまあ、強い力を持っているがいるな」
「そうなのだ。
名前はレガイアか」
では、とエストはダーシェとアルバスを見た。
「これで、いくか」
そう言って、その夢魔の少女を指差す。
「それでよかろう。
さて、神託かな、そうなると。
魔神殿はおらぬしー‥‥‥」
エストがどうしたものか、そう呟く。
「もう良いではないか。
神託など魔族には不要だ。
聖女に討伐させればよい。
それで、ことは足りる」
うーむ、とエストは悩んでいたが、まあいいかと納得した。
「ふふん、これは面白い―‥‥‥。
聖女と魔王の決闘か。
ならば、聖剣だの魔剣だの
いろいろと小道具が必要になるな。
これは面白くなってきた」
エストはそういうと、チェスのような盤面を円卓の上に置いた。
「さて、それでは新しいゲームと行こうではないか。
魔族と人間族。
これは久しぶりの行いだな」
「まったくだ。
さて何年かかることか。
最後は、勝った方の始末もつけねばな。
どうせ、魔神どのに、竜神アルバスの善なる方は後から文句をつけてくるだろうしな」
それは問題だな。
三神は頭を捻った。
そして思いつく。
「ならば、聖女には王族との婚姻でも与えておいてだな。
もし、魔族が勝てば人間の王家も滅ぶのだ、魔神殿も誰も文句をいうまい」
と、エストが言う。
しかし、次の疑問が生まれた。
「なら、もし聖女が勝てばどうする?」
「その時は、魔族に肩入れしたとでもして、魔女裁判にかけて殺してしまえばよかろう。
婚約など破棄させれば、ダーシェ殿の管轄する王国も痛むことはあるまい?」
なるほど、それはよく考えたものだ。
ダーシェとアルバスははエストの案にのることにした。
「よし、それでは始めるとしよう」
三神は必要な駒を盤上に並べ始めた。
こうして、神々の悪なる半身たちと竜神アルバスによる、遊戯は開始された。
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