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エレーナの心は激しく動揺していた。
つまり、魔族の大勝利?
いやそんなことはない。
魔族も魔王を失ったのだ。
だけど、神が勇者を封印した。
と、いうことは‥‥‥?
エレーナの視線にハーミアとリザは悲し気に首を振った。
「生き残りはわたしたちだけかもしれないわ。
それと‥‥‥言いたくないけど。奴隷となるか、食糧となるか。
魔王は滅んでも魔族はまだ生き残っているし、援軍は入ってこれない。
エレーナ、もうどうしようもないわ。
でも、わたしはリザを助けたい」
「ちょっと、ハーミア!
勝手に人を裏切り者にしないでよ!!
虚空には入れない。転移魔法は使えない、か。
どうするかな‥‥‥」
彼女は魔族だから情けをかけて貰えるかもしれない。
そう思っていたことを甘い認識だったと、ハーミアは改めることになる。
リザは最後まで勇者一行の仲間だった。
わたしは仲間を裏切るような真似はしない!!
そう叫ぶと、女魔法使いは最後の手段に打って出た。
少しでも仲間を生還させるために‥‥‥。
「いい、ハーミア?
あなたは、きちんと生きなさい。
そして、帰るの。元の世界にね‥‥‥」
「リザっ!?」
まだ魔王軍の生き残りは多い、連中は彼女たちを見つけては集中的に攻撃を仕掛けてきた。
その数度目かの特効を受けた時‥‥‥リザはその命をかけて敵を道連れに爆散して果てた。
残るは二人。
できることはただ一つだけだった。
ハーミアは自身の命をかけた魔法なんて使えない。
可能なら、エレーナを生かすことが彼女にできる、唯一の方法だった。
そして、そんな中‥‥‥。
どこをどうやったのか。
全身ボロボロになり、片腕と左眼を失ったイオリの放つ閃光が、ハーミアたちを襲おうとする敵を消失させていた。
「まったく‥‥‥どうなってるのよ、この魔王軍は。
ここまで強いなんて聞いてないわ!!
ちょっと!! エレーナ!!!
光の精霊様の力であなたを少しばかり、過去に戻すわよ。
どうか、このことを過去のわたしたちにーっ‥‥‥!?」
そこで、彼女の声は途切れた。
どこからか飛んできた、巨大な槍がその全身を深々と貫いていたからだ。
エレーナはその持ち主を知っている。
彼は、行方不明になっていた竜騎士ヨアヒムだった。
その細い身体から放てたものとは思えない。
やはり‥‥‥あの二頭の魔獣の手によるものだろう。
そう予測がついた。
「あなたもー‥‥‥やはりあの地獄を、あの惨劇を、あの悪夢を。
わたしに見せるためにいるのね‥‥‥」
竜騎士は楽しそうに笑い、部下の黒い髪の竜女は槍を引き抜いた。
「当たり前だろう、お前は単なる駒。
我が主が、他の神々と楽しまれるゲーム盤をにぎわすための、一つの華に過ぎん。
いま、その光の精霊の力で過去に戻られては色々と不都合が出るのでな。
さて、戻ろうか出発の地へ。
お前が魔王を殺した勇者を‥‥‥殺したんだ。
そういう筋書きなんだよ、エレーナ。
その命を、竜神様に捧げるといい。
仲間殺しの汚名を背負って断頭台に立つんだ。
なんという尊い犠牲。
俺はお前と仲間であったことを生涯誇りに思えるぞ?
まあ、世間にはお前は大逆の聖女、いや魔女としか映らんがな???」
竜騎士は面白そうに高笑いをする。
まるで、この茶番をすべてその筋書きを書いて動かしたのは自分だといわんばかりに、その場を楽しんでいた。
「そんな、そんな!!
ここまで戦わせておいて、最後はまた同じ事の繰り返し!?
わたしには神なんて要らない!!
竜神なんてもう必要ない!!」
エレーナはその場に座り込み、魂から叫びを上げていた。
誰か助けてください。
世界におられる神でも魔でもいい。
この狂った人生を、非道なる神々に罰を与える力を‥‥‥どうか与えて下さい、と。
「そうか、しかし、誰も助けには来ないな?」
ヨアヒムが竜騎士という名に酔い、そう油断の声を上げた時だった。
両脇を固めていた、ルーシェとヘザーの悲鳴が走る。
「なっ!?
お前‥‥‥アミスティア。
なぜ‥‥‥??」
赤い豹人が、エレノアと共に脇役を葬り去っていた。
そして、それは困るなあ、と。
不敵な声が響く。
「おいおい、ヨアヒム。
竜騎士なんてそんな大層な称号、お前には重いだけだろう?」
レビンが神槍デュランダルを構えて不敵に立っていた。
しかし、見るからにエレノアも、アミスティアも、レビンもまた、満身創痍だった。
「聞いたぜ、ヨアヒム?
エルグランデ王国に放逐されたあと、神獣にかけていたお前の魔眼の縛りを解いたらしいな?
おかげさまで、我が魔王シェイブ様がどれほど苦労なされたか‥‥‥。
おまけになんだ?
神聖アーハンルド王国での手腕を買われて戻ってくれと。
母国からそんな話まであったそうじゃないか?
なのに‥‥‥お前が選んだ道は、それか!?
この卑怯者め――」
そのレビンの嘲笑うような発言を聞き、ハーミアもまた不満の声をヨアヒムにぶつけていた。
「あなた、なによその話!?
それじゃまるで‥‥‥恩知らずじゃないの。
自分が酷い目にあわされたからって、故郷に同じことをするの?
その上、王国からの帰還命令まで無視するなんて――」
レビンとハーミアの非難の声が辺りにこだまする。
「ええい、黙れ黙れ黙れ――っ!!!
俺は、俺が、俺だけがあの魔獣や神獣を使役できたんだ。
それをあの王太子め‥‥‥。そんな俺を拾ってくれたのは、魔王レガイア様だけだった。
それに尽くして何が悪い!!?」
まるで死人同然だったルーシェとヘザーが立ち上がり、蒼狼と黒龍へと身を変じていく。
「おまえたち、最後に俺の役に立て!!!」
その一声に押されるように蒼狼はアミスティアの首を噛み裂き、エレノアの四肢を押し倒した。
レビンが黒龍が吐く炎に気を取られた一瞬、持てるはずのない竜騎士の槍がレビンの脇腹に太く突き刺さる。
それは、レビンを行動不能にするには十分すぎる一撃だった。
つまり、魔族の大勝利?
いやそんなことはない。
魔族も魔王を失ったのだ。
だけど、神が勇者を封印した。
と、いうことは‥‥‥?
エレーナの視線にハーミアとリザは悲し気に首を振った。
「生き残りはわたしたちだけかもしれないわ。
それと‥‥‥言いたくないけど。奴隷となるか、食糧となるか。
魔王は滅んでも魔族はまだ生き残っているし、援軍は入ってこれない。
エレーナ、もうどうしようもないわ。
でも、わたしはリザを助けたい」
「ちょっと、ハーミア!
勝手に人を裏切り者にしないでよ!!
虚空には入れない。転移魔法は使えない、か。
どうするかな‥‥‥」
彼女は魔族だから情けをかけて貰えるかもしれない。
そう思っていたことを甘い認識だったと、ハーミアは改めることになる。
リザは最後まで勇者一行の仲間だった。
わたしは仲間を裏切るような真似はしない!!
そう叫ぶと、女魔法使いは最後の手段に打って出た。
少しでも仲間を生還させるために‥‥‥。
「いい、ハーミア?
あなたは、きちんと生きなさい。
そして、帰るの。元の世界にね‥‥‥」
「リザっ!?」
まだ魔王軍の生き残りは多い、連中は彼女たちを見つけては集中的に攻撃を仕掛けてきた。
その数度目かの特効を受けた時‥‥‥リザはその命をかけて敵を道連れに爆散して果てた。
残るは二人。
できることはただ一つだけだった。
ハーミアは自身の命をかけた魔法なんて使えない。
可能なら、エレーナを生かすことが彼女にできる、唯一の方法だった。
そして、そんな中‥‥‥。
どこをどうやったのか。
全身ボロボロになり、片腕と左眼を失ったイオリの放つ閃光が、ハーミアたちを襲おうとする敵を消失させていた。
「まったく‥‥‥どうなってるのよ、この魔王軍は。
ここまで強いなんて聞いてないわ!!
ちょっと!! エレーナ!!!
光の精霊様の力であなたを少しばかり、過去に戻すわよ。
どうか、このことを過去のわたしたちにーっ‥‥‥!?」
そこで、彼女の声は途切れた。
どこからか飛んできた、巨大な槍がその全身を深々と貫いていたからだ。
エレーナはその持ち主を知っている。
彼は、行方不明になっていた竜騎士ヨアヒムだった。
その細い身体から放てたものとは思えない。
やはり‥‥‥あの二頭の魔獣の手によるものだろう。
そう予測がついた。
「あなたもー‥‥‥やはりあの地獄を、あの惨劇を、あの悪夢を。
わたしに見せるためにいるのね‥‥‥」
竜騎士は楽しそうに笑い、部下の黒い髪の竜女は槍を引き抜いた。
「当たり前だろう、お前は単なる駒。
我が主が、他の神々と楽しまれるゲーム盤をにぎわすための、一つの華に過ぎん。
いま、その光の精霊の力で過去に戻られては色々と不都合が出るのでな。
さて、戻ろうか出発の地へ。
お前が魔王を殺した勇者を‥‥‥殺したんだ。
そういう筋書きなんだよ、エレーナ。
その命を、竜神様に捧げるといい。
仲間殺しの汚名を背負って断頭台に立つんだ。
なんという尊い犠牲。
俺はお前と仲間であったことを生涯誇りに思えるぞ?
まあ、世間にはお前は大逆の聖女、いや魔女としか映らんがな???」
竜騎士は面白そうに高笑いをする。
まるで、この茶番をすべてその筋書きを書いて動かしたのは自分だといわんばかりに、その場を楽しんでいた。
「そんな、そんな!!
ここまで戦わせておいて、最後はまた同じ事の繰り返し!?
わたしには神なんて要らない!!
竜神なんてもう必要ない!!」
エレーナはその場に座り込み、魂から叫びを上げていた。
誰か助けてください。
世界におられる神でも魔でもいい。
この狂った人生を、非道なる神々に罰を与える力を‥‥‥どうか与えて下さい、と。
「そうか、しかし、誰も助けには来ないな?」
ヨアヒムが竜騎士という名に酔い、そう油断の声を上げた時だった。
両脇を固めていた、ルーシェとヘザーの悲鳴が走る。
「なっ!?
お前‥‥‥アミスティア。
なぜ‥‥‥??」
赤い豹人が、エレノアと共に脇役を葬り去っていた。
そして、それは困るなあ、と。
不敵な声が響く。
「おいおい、ヨアヒム。
竜騎士なんてそんな大層な称号、お前には重いだけだろう?」
レビンが神槍デュランダルを構えて不敵に立っていた。
しかし、見るからにエレノアも、アミスティアも、レビンもまた、満身創痍だった。
「聞いたぜ、ヨアヒム?
エルグランデ王国に放逐されたあと、神獣にかけていたお前の魔眼の縛りを解いたらしいな?
おかげさまで、我が魔王シェイブ様がどれほど苦労なされたか‥‥‥。
おまけになんだ?
神聖アーハンルド王国での手腕を買われて戻ってくれと。
母国からそんな話まであったそうじゃないか?
なのに‥‥‥お前が選んだ道は、それか!?
この卑怯者め――」
そのレビンの嘲笑うような発言を聞き、ハーミアもまた不満の声をヨアヒムにぶつけていた。
「あなた、なによその話!?
それじゃまるで‥‥‥恩知らずじゃないの。
自分が酷い目にあわされたからって、故郷に同じことをするの?
その上、王国からの帰還命令まで無視するなんて――」
レビンとハーミアの非難の声が辺りにこだまする。
「ええい、黙れ黙れ黙れ――っ!!!
俺は、俺が、俺だけがあの魔獣や神獣を使役できたんだ。
それをあの王太子め‥‥‥。そんな俺を拾ってくれたのは、魔王レガイア様だけだった。
それに尽くして何が悪い!!?」
まるで死人同然だったルーシェとヘザーが立ち上がり、蒼狼と黒龍へと身を変じていく。
「おまえたち、最後に俺の役に立て!!!」
その一声に押されるように蒼狼はアミスティアの首を噛み裂き、エレノアの四肢を押し倒した。
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