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序章 死霊術師、追放される
死霊術師は不遇を冷笑する。
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ようやく帰ったわね、あの鳥女‥‥‥
彼女を見送ったあと、不機嫌なままのシェニアを抱きしめてまた寝ようとした時だ。
新たな来訪者が、部屋のドアをドンドンっと無神経に叩いた。
「誰よっ!?
もう‥‥‥ッ」
追い返してやるんだから!
こんな夜中に誰よ? そう言い開いた扉の向こうには同じパーティー仲間の武装神官が立っていた。
「アレンっ!!
あなたね、いま何時だと思ってるの!?」
「あ、シェニア‥‥‥いたの、か。
いやーすまん。
昼間の戦いで俺の腕輪の宝珠が壊れているにさっき、気づいてな?
アーチャーに直してもらおうか、と」
「この時間に!?
遠慮して欲しいわ‥‥‥あなたには遠慮というものはないの?」
「いや、だってほら、シェニア。
相手はアーチャーだぜ?
魔道具を直すくらいしか、能が無いだろ?
まだ仕事があるだけ、マシってもんじゃないのか?」
部屋の奥に見えるまだ若いアーチャーを見て、武装神官はそうけなしていた。
まだ十八歳のアーチャーは、二十代半ばの彼からすれば、深夜に押しかけて何かを言いつけても気にならない存在なのだろう。
むしろ、パーティーの女性陣の中でも美しさが最上位の部類に入るシェニアが、どうして無能な小僧に愛を語るのか、アレンは不思議に思っていた。
彼の物言いに恋人をけなされて怒鳴りつけようとしたシェニアはしかし、アーチャーに止められてしまう。
「いいよ、アレン。
明日の朝、また渡すからさ。
それでいいか?」
「当たり前だろ、お前何様のつもりだ?
荷物運びにこういった魔道具の修繕、あとは適当な下働きと伝令しかできないくせに。
さっさとやっとけよ」
無遠慮に腕輪を放りつけると、アレンはシェニアに俺のとこに来ないか?
そう恥じ知らずな誘い文句をうたうが、あっさりと出て行ってと追い出されてしまう。
「あ、おいっ、シェニア!?
それはないだろ!??」
「うるさいっ、このハゲっ!
さっさと出て行け!!」
「っ!?
なんで、アーチャーにだけそんなにっ‥‥‥」
言い終わらないうちにアレンは扉の向こうに消えてしまった。
シェニアは朝まで誰も来ないようにと、魔法をかけて扉を封じてしまう。
「これでいいわ‥‥‥。
ちょっとアーチャーっ?
なんであんなのに言わせておくのよ!?」
「シェニア‥‥‥ハイエルフは常に冷静なものじゃないのか?
そんな大声、はしたないよ?」
「うるさいっ。
この部屋全体を隔離したから誰も来ないし、入れないし、声も届かないわよ。
いつまであんな無能な低級どもに言わせておくつもりなの!?
その腕輪が、魔道具がなきゃあいつら戦えないし、防御もできない。
全部、あなたの能力を飛ばして助けてやってるって言えばいいじゃないの!!」
「なあ、シェニア‥‥‥それは出来ない。
理由は、知っているだろ?
この魔道具の介在なしじゃ、魔法は使えない。
本当の意味での、もう失われた魔法を使えばあっという間に魔族に知れ渡る。
それは困るんだよ、な?」
「‥‥‥理解はしてるわよ、あなたが義理の父親を殺した魔王を探しているのは。
この地上にも地下世界にも魔王はいるんだものね‥‥‥警戒されたくない理由はわかるけど。
でも、悔しいじゃない。勇者ライルのパーティーに参加してもう三年よ?
あなたと私がいなければ、彼らはいつ死んでもおかしくないのに。
そんな事情すら気づいてない。気付けない愚か者ばかり」
「そう、そんな愚か者ばかりでも、神託は神託。
風の女神は俺とシェニアにこのパーティーを補佐しろと命じたんだから。
俺の事情に、お前を巻き込むのは――すまん‥‥‥」
恋人はベッドの中に潜り込むと、不機嫌なまま黙ってしまう。
自分の大事な存在がばかにされたまま見過ごすなんて、彼女には納得がいかないらしい。
「ハイエルフは百歳を超えても、心は子供なんだな?
ああ、身体もか‥‥‥」
「あそこ焼かれたいの?
見た目は人間の女と変わらないでしょ?」
「‥‥‥ぎりぎり、十代半ば。俺より数歳若いくらいにしか見えないよ。
さ、もう寝よう」
「魔道具は?」
あそこだ、とアーチャーが指差した先には、割れたはずの宝珠が元通りの朱い輝きをうっすらと放って、テーブルのうえに置かれていた。
「さすがね‥‥‥青の位階は伊達じゃないんだ?」
「そう、青の位階は伊達じゃない。
魔法使いの最高位の青。死霊術師も同じだ。だが、それを表に出す気にはなれない」
「お義父さんの仇討ちが済むまでは、でしょ?」
「まあ、そうだな。
それから先は考えてないけどな」
シェニアは心でぼやいていた。
きちんと青の位階を表に出してくれたなら、それを王国にも認めさせたなら‥‥‥故郷である大森林の中にある自分の国にも案内できるのに、と。
「損してばかり、ね。
エルフの里には赤の位階以上しか入れないのよ?
白、黒、緑、浅葱、赤、青‥‥‥そして、永遠に失われた真紅の位階の最上位にいるのに出せないなんて。
普通の人間には扉は開かない。それに、王国の認可書もいるのに‥‥‥」
「百年生きてきたんだろ?
あと数年くらい我慢しろよ、お姉さん」
「ばか‥‥‥。
どこにいってもさっきみたいな、あなたの能力を知り、勇者ライルたちができていなかった補助をしたことで結果的に救われた魔族や妖精なんかが挨拶に来るんじゃない。
こうして、夜に!!
もうっ‥‥‥知らない!」
父親に紹介したくても、彼がその身分を偽る限りは適わない。
この晩、シェニアは出会ってから一番不機嫌だった。
アーチャーはそれをなだめながら、ある伝説を思い返していた。
数年前、彼が学んだ師匠から聞いたそれは、この王国と地下世界の関係を語ったものだった。
彼女を見送ったあと、不機嫌なままのシェニアを抱きしめてまた寝ようとした時だ。
新たな来訪者が、部屋のドアをドンドンっと無神経に叩いた。
「誰よっ!?
もう‥‥‥ッ」
追い返してやるんだから!
こんな夜中に誰よ? そう言い開いた扉の向こうには同じパーティー仲間の武装神官が立っていた。
「アレンっ!!
あなたね、いま何時だと思ってるの!?」
「あ、シェニア‥‥‥いたの、か。
いやーすまん。
昼間の戦いで俺の腕輪の宝珠が壊れているにさっき、気づいてな?
アーチャーに直してもらおうか、と」
「この時間に!?
遠慮して欲しいわ‥‥‥あなたには遠慮というものはないの?」
「いや、だってほら、シェニア。
相手はアーチャーだぜ?
魔道具を直すくらいしか、能が無いだろ?
まだ仕事があるだけ、マシってもんじゃないのか?」
部屋の奥に見えるまだ若いアーチャーを見て、武装神官はそうけなしていた。
まだ十八歳のアーチャーは、二十代半ばの彼からすれば、深夜に押しかけて何かを言いつけても気にならない存在なのだろう。
むしろ、パーティーの女性陣の中でも美しさが最上位の部類に入るシェニアが、どうして無能な小僧に愛を語るのか、アレンは不思議に思っていた。
彼の物言いに恋人をけなされて怒鳴りつけようとしたシェニアはしかし、アーチャーに止められてしまう。
「いいよ、アレン。
明日の朝、また渡すからさ。
それでいいか?」
「当たり前だろ、お前何様のつもりだ?
荷物運びにこういった魔道具の修繕、あとは適当な下働きと伝令しかできないくせに。
さっさとやっとけよ」
無遠慮に腕輪を放りつけると、アレンはシェニアに俺のとこに来ないか?
そう恥じ知らずな誘い文句をうたうが、あっさりと出て行ってと追い出されてしまう。
「あ、おいっ、シェニア!?
それはないだろ!??」
「うるさいっ、このハゲっ!
さっさと出て行け!!」
「っ!?
なんで、アーチャーにだけそんなにっ‥‥‥」
言い終わらないうちにアレンは扉の向こうに消えてしまった。
シェニアは朝まで誰も来ないようにと、魔法をかけて扉を封じてしまう。
「これでいいわ‥‥‥。
ちょっとアーチャーっ?
なんであんなのに言わせておくのよ!?」
「シェニア‥‥‥ハイエルフは常に冷静なものじゃないのか?
そんな大声、はしたないよ?」
「うるさいっ。
この部屋全体を隔離したから誰も来ないし、入れないし、声も届かないわよ。
いつまであんな無能な低級どもに言わせておくつもりなの!?
その腕輪が、魔道具がなきゃあいつら戦えないし、防御もできない。
全部、あなたの能力を飛ばして助けてやってるって言えばいいじゃないの!!」
「なあ、シェニア‥‥‥それは出来ない。
理由は、知っているだろ?
この魔道具の介在なしじゃ、魔法は使えない。
本当の意味での、もう失われた魔法を使えばあっという間に魔族に知れ渡る。
それは困るんだよ、な?」
「‥‥‥理解はしてるわよ、あなたが義理の父親を殺した魔王を探しているのは。
この地上にも地下世界にも魔王はいるんだものね‥‥‥警戒されたくない理由はわかるけど。
でも、悔しいじゃない。勇者ライルのパーティーに参加してもう三年よ?
あなたと私がいなければ、彼らはいつ死んでもおかしくないのに。
そんな事情すら気づいてない。気付けない愚か者ばかり」
「そう、そんな愚か者ばかりでも、神託は神託。
風の女神は俺とシェニアにこのパーティーを補佐しろと命じたんだから。
俺の事情に、お前を巻き込むのは――すまん‥‥‥」
恋人はベッドの中に潜り込むと、不機嫌なまま黙ってしまう。
自分の大事な存在がばかにされたまま見過ごすなんて、彼女には納得がいかないらしい。
「ハイエルフは百歳を超えても、心は子供なんだな?
ああ、身体もか‥‥‥」
「あそこ焼かれたいの?
見た目は人間の女と変わらないでしょ?」
「‥‥‥ぎりぎり、十代半ば。俺より数歳若いくらいにしか見えないよ。
さ、もう寝よう」
「魔道具は?」
あそこだ、とアーチャーが指差した先には、割れたはずの宝珠が元通りの朱い輝きをうっすらと放って、テーブルのうえに置かれていた。
「さすがね‥‥‥青の位階は伊達じゃないんだ?」
「そう、青の位階は伊達じゃない。
魔法使いの最高位の青。死霊術師も同じだ。だが、それを表に出す気にはなれない」
「お義父さんの仇討ちが済むまでは、でしょ?」
「まあ、そうだな。
それから先は考えてないけどな」
シェニアは心でぼやいていた。
きちんと青の位階を表に出してくれたなら、それを王国にも認めさせたなら‥‥‥故郷である大森林の中にある自分の国にも案内できるのに、と。
「損してばかり、ね。
エルフの里には赤の位階以上しか入れないのよ?
白、黒、緑、浅葱、赤、青‥‥‥そして、永遠に失われた真紅の位階の最上位にいるのに出せないなんて。
普通の人間には扉は開かない。それに、王国の認可書もいるのに‥‥‥」
「百年生きてきたんだろ?
あと数年くらい我慢しろよ、お姉さん」
「ばか‥‥‥。
どこにいってもさっきみたいな、あなたの能力を知り、勇者ライルたちができていなかった補助をしたことで結果的に救われた魔族や妖精なんかが挨拶に来るんじゃない。
こうして、夜に!!
もうっ‥‥‥知らない!」
父親に紹介したくても、彼がその身分を偽る限りは適わない。
この晩、シェニアは出会ってから一番不機嫌だった。
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