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序章 死霊術師、追放される
アリス・ターナーの伝説
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それは古い古い神代の時代の話だ。
はるかな昔。
まだ世界が神々の遊戯と呼ばれ、人や魔族を駒のようにして扱うゲームが行われていた時代。
今回は魔族が勝ったぞ、わしの勝ちだ。
次回こそはわたしが勝ちますわ、次はなんの種族にしましょうかね?
どの種族は滅んでも‥‥‥この遊戯盤があれば。
幾千、幾万回も世界は巻き戻される、わたしたち以外。
この、天空の楽園にいればその影響は受けませんから。
そう、ゲームを楽しんでいた神々がいた。
ある時、一人の聖女が疑問を抱いた。
彼女の役割はこうだ。
貧しき身分から天使に導かれ聖剣を手にし、聖女になる。
王国の王都に行き、王太子殿下と婚約をして、各国をまとめ上げる。
その理由は『聖戦』。
魔族を滅ぼすことだ。
そして百万に近い軍勢を集めた聖女は、北の大地に向かい魔王を討ち取る。
見事に聖戦を征した聖女を待っていたのは、部下との不貞だ。
神託によりその偽りの事実がつきつけられ、彼女は魔女となる。
魔女は首を跳ねられ、聖女の人生は終わる。
そして、あの世とこの世の境目で彼女は再び天使に導かれ聖女になる。
ある死神がいた。
聖女をはその運命をすでに数百回、繰り返していた。
彼女を哀れと思った死神は、幾度かだけ、彼女を別の異世界で。
幸せな人生を終える道を与えた。
しかし、遊戯盤の支配から聖女は逃れられない。
だから、聖女は考えた。
この不当なゲームを終わらそう、と。
次に死んだ時、彼女はとある、ずるをして、天使を騙し武器を手に入れた。
すべての神を滅ぼせる武器。
それを手にした彼女は、神々に宣言した。
「いまから、神殺しを行います。これは、神々の横暴に不満を持つ、全種族の自由をかけた聖戦です」
一年にも満たない戦争で神々は死滅し、聖女は新たなる神となり、この世界を去ってしまう。
この時、聖女であった頃に彼女に従った聖騎士団がいた。
彼らも数百回、転生を繰り返していた。
主の役に立とうと、神殺しとなった聖女に追いついた時。
彼女は冷たいくこう言いはなった。
「なぜ来たの? あなたたちをいまのわたしの力では、神々の攻撃から守りきれません。なぜ、安らかに転生ではなく、死を受け入れなかったのですか? あなたたたちでは‥‥‥力不足です」
その言葉に怒りを感じる聖騎士は誰もいなかった。
力不足。
現実を理解して、それでも共にいたい。
そう願ったことは自分たちのわがままだと、理解していたからだ。
聖女は彼らの魂を送り出す。
安らかなる、慈愛に満ちたはるかな死出の旅へと。
あの世へと向かう彼らは約二十万ほどいた。
ある聖騎士が死神に質問する。
「もし、我等の力の片鱗だけでも誰かひとりに与えることができればどうなりますか?」
死神は答えた。
「それは、神にも匹敵する力になるだろう」
……と。
彼らは死神が許すだけの魂の一部を、ある男に託した。
彼は武と炎を司る神へと転身し、死神に願い出る。
「どうか、我が主の元へ。神々との聖戦に、参戦させて頂きたい」
死神が呆れたように答えた。
「それは構わない。でも保証はできないよ? もう終わっているかもしれない。その時はどうするつもりだい?」
死神はその男の忠義は認めるが、何もかもが遅すぎるかもしれないよ、と。
そんな可能性を指し示した。
彼は返答に窮した。
そのことまで、頭が回っていなかったからだ。
死神はある提案を出した。
「あの世界の魔族の神は、魔族を見捨てた裏切り者だ。魔族が多く住まう北の大地は間もなく地下深くへと沈み、天空は大地で覆われるだろう。
仮初の太陽と二つの月をその世界に与えよう。
だけど、遠い未来。
地上世界からは、はるかな地上から塔が降りてくるだろう。その塔は新たな争いを招き入れる‥‥‥。
神を失った魔族は、その塔からの影響で己を失い凶暴化して多くの災厄を起こすはずだ。
しかし、地下世界には人もいれば亜人も、竜も存在する。君は彼らを守る存在になりなさい」
彼はいくつかの疑問を呈した。
「しかし、死神様。地上世界にも地下世界にも神がいないのでは、誰がその種を守るのですか?」
死神は優しく答える。
「神などいらないんだよ。それが君の主だった、あの、神殺しの出した答えじゃないか。誰もが生きる道を自分で選び、そして理想を実現するために努力し、それを実現できる自由を持てる世界。君の主は、それを残していったはずだよ」
「しかし‥‥‥私には主のあの御方のような知恵も勇気もありません。多くの種を守れ、そう言われても、何より‥‥‥」
いまのわたしが、既に‥‥‥神になってしまっているではありませんか。
彼は悲し気にそう言った。
死神はだいじょうぶだ、と彼を促す。
「神であっても、守護をすることはないのだよ。そして、新たな神はまた産まれてくる。そうだね‥‥‥君は地下世界で出会うだろう。数百年先かもしれないが、地上世界から最果ての大地にまで降りてくる。そんな偉大な勇者たちの一人は君の戦友、かつての魔王の生まれ変わりだ。彼女は魔王としての力をもち、勇者としての力ももって降りてくる。二人で、最果ての地に大きな結界を作るといい。災厄と化した魔族に襲われない、大きな、多くの種族の住める世界をね」
彼は質問する。
「その者の名は‥‥‥?」
「アリス。アリス・ターナー」
死神はそう答えた。
はるかな昔。
まだ世界が神々の遊戯と呼ばれ、人や魔族を駒のようにして扱うゲームが行われていた時代。
今回は魔族が勝ったぞ、わしの勝ちだ。
次回こそはわたしが勝ちますわ、次はなんの種族にしましょうかね?
どの種族は滅んでも‥‥‥この遊戯盤があれば。
幾千、幾万回も世界は巻き戻される、わたしたち以外。
この、天空の楽園にいればその影響は受けませんから。
そう、ゲームを楽しんでいた神々がいた。
ある時、一人の聖女が疑問を抱いた。
彼女の役割はこうだ。
貧しき身分から天使に導かれ聖剣を手にし、聖女になる。
王国の王都に行き、王太子殿下と婚約をして、各国をまとめ上げる。
その理由は『聖戦』。
魔族を滅ぼすことだ。
そして百万に近い軍勢を集めた聖女は、北の大地に向かい魔王を討ち取る。
見事に聖戦を征した聖女を待っていたのは、部下との不貞だ。
神託によりその偽りの事実がつきつけられ、彼女は魔女となる。
魔女は首を跳ねられ、聖女の人生は終わる。
そして、あの世とこの世の境目で彼女は再び天使に導かれ聖女になる。
ある死神がいた。
聖女をはその運命をすでに数百回、繰り返していた。
彼女を哀れと思った死神は、幾度かだけ、彼女を別の異世界で。
幸せな人生を終える道を与えた。
しかし、遊戯盤の支配から聖女は逃れられない。
だから、聖女は考えた。
この不当なゲームを終わらそう、と。
次に死んだ時、彼女はとある、ずるをして、天使を騙し武器を手に入れた。
すべての神を滅ぼせる武器。
それを手にした彼女は、神々に宣言した。
「いまから、神殺しを行います。これは、神々の横暴に不満を持つ、全種族の自由をかけた聖戦です」
一年にも満たない戦争で神々は死滅し、聖女は新たなる神となり、この世界を去ってしまう。
この時、聖女であった頃に彼女に従った聖騎士団がいた。
彼らも数百回、転生を繰り返していた。
主の役に立とうと、神殺しとなった聖女に追いついた時。
彼女は冷たいくこう言いはなった。
「なぜ来たの? あなたたちをいまのわたしの力では、神々の攻撃から守りきれません。なぜ、安らかに転生ではなく、死を受け入れなかったのですか? あなたたたちでは‥‥‥力不足です」
その言葉に怒りを感じる聖騎士は誰もいなかった。
力不足。
現実を理解して、それでも共にいたい。
そう願ったことは自分たちのわがままだと、理解していたからだ。
聖女は彼らの魂を送り出す。
安らかなる、慈愛に満ちたはるかな死出の旅へと。
あの世へと向かう彼らは約二十万ほどいた。
ある聖騎士が死神に質問する。
「もし、我等の力の片鱗だけでも誰かひとりに与えることができればどうなりますか?」
死神は答えた。
「それは、神にも匹敵する力になるだろう」
……と。
彼らは死神が許すだけの魂の一部を、ある男に託した。
彼は武と炎を司る神へと転身し、死神に願い出る。
「どうか、我が主の元へ。神々との聖戦に、参戦させて頂きたい」
死神が呆れたように答えた。
「それは構わない。でも保証はできないよ? もう終わっているかもしれない。その時はどうするつもりだい?」
死神はその男の忠義は認めるが、何もかもが遅すぎるかもしれないよ、と。
そんな可能性を指し示した。
彼は返答に窮した。
そのことまで、頭が回っていなかったからだ。
死神はある提案を出した。
「あの世界の魔族の神は、魔族を見捨てた裏切り者だ。魔族が多く住まう北の大地は間もなく地下深くへと沈み、天空は大地で覆われるだろう。
仮初の太陽と二つの月をその世界に与えよう。
だけど、遠い未来。
地上世界からは、はるかな地上から塔が降りてくるだろう。その塔は新たな争いを招き入れる‥‥‥。
神を失った魔族は、その塔からの影響で己を失い凶暴化して多くの災厄を起こすはずだ。
しかし、地下世界には人もいれば亜人も、竜も存在する。君は彼らを守る存在になりなさい」
彼はいくつかの疑問を呈した。
「しかし、死神様。地上世界にも地下世界にも神がいないのでは、誰がその種を守るのですか?」
死神は優しく答える。
「神などいらないんだよ。それが君の主だった、あの、神殺しの出した答えじゃないか。誰もが生きる道を自分で選び、そして理想を実現するために努力し、それを実現できる自由を持てる世界。君の主は、それを残していったはずだよ」
「しかし‥‥‥私には主のあの御方のような知恵も勇気もありません。多くの種を守れ、そう言われても、何より‥‥‥」
いまのわたしが、既に‥‥‥神になってしまっているではありませんか。
彼は悲し気にそう言った。
死神はだいじょうぶだ、と彼を促す。
「神であっても、守護をすることはないのだよ。そして、新たな神はまた産まれてくる。そうだね‥‥‥君は地下世界で出会うだろう。数百年先かもしれないが、地上世界から最果ての大地にまで降りてくる。そんな偉大な勇者たちの一人は君の戦友、かつての魔王の生まれ変わりだ。彼女は魔王としての力をもち、勇者としての力ももって降りてくる。二人で、最果ての地に大きな結界を作るといい。災厄と化した魔族に襲われない、大きな、多くの種族の住める世界をね」
彼は質問する。
「その者の名は‥‥‥?」
「アリス。アリス・ターナー」
死神はそう答えた。
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