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第一章 棄てられた死霊術師
「公人」の責任
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「まぬけとはよく言ったもんだ。だが、それを含めても俺はもうお役御免。今更ギルドからどうこう言われる筋合いはない」
「なら――」
そこまで言うなら、とイライアは部屋の扉を指差した。
出て行け、もう仲間じゃないと言うのなら。
そういう、意思表示だった。
「出てって。そんな薄情な人間、仲間にすら欲しくないわ。なにが補助してきた、よ」
「嘘だって言うのか? さっき、自分で王都の半分どうこう言いだしたくせにか? ハイエルフなら視えてるだろ‥‥‥俺の本質くらい」
「ハイエルフなら、じゃないわよ。私だけじゃない。勇者にも視えているとは考えなかったの‥‥‥?」
ああ、それはない。
アーチャーは断言する。
イライアは首を傾げた。
勇者には神眼が与えられているはずだからだ。
真実を見ることのできる能力が。
「視えてないよ。あれは、ライルはまだ能力が低い。せいぜい、自分と同程度の存在しか認識できない。だからシェニアや俺、あなたのような存在はぼんやりとしているか、少しだけ能力がある。そう視えているよ」
「なんでそう断言できるの? まるで、彼の中に入って常に確認していたような言い方するじゃない?」
「その為の、魔道具だろ? 能力の把握はしていたよ、その効果もね。あいにくと‥‥‥盗聴や見たものを転送するようにはしていなかったのが裏目にでたけどな」
「呆れた人‥‥‥。じゃあ、彼の能力はやっぱり低いのね――昨日、見た時は抑えているのかと勘違いしたわ‥‥‥」
昨日?
あの会議の場に彼女はいなかったはず――??
「ああ、来たのよ。あなたが抜けたというのと、いえ、なんでもないわ。関係ないことだから」
「そうか。別に聞きたくもない。で、俺にどうしろと? あの場というか、昨夜のパーティを出て行けと言われた時、どうすれば満足だったんだ?」
「まだ――理解していないの? 本当に??」
「はあ‥‥‥公人として、引き継ぎができるようにしろってか? 追放じゃなく、勇退だときちんと後につながるようにしてて、綺麗に引退するべきだった。そう言いたいのか?」
「それがあなたの責任であり、仕事でしょう? どうして勝手にあの場を去ったりしたの?」
「陛下の許可は頂いた。私的な意思じゃない。ついでに、代打は王女――聖女様に初めから決まっていた。あれは計画的な人事だ。俺にはどうしようもない。もう一つ言うと、補助だって理解して入れたなら期待するな。黒札の憧れとか言われても、それをきちんと俺に伝えたか、イライアは? そんな合間の事柄を抜かれて、いきなりああだこうだ、と言われてももう遅いだろ‥‥‥?」
完全実力主義社会が総合ギルドの風潮じゃなかったのか?
嫌味を込めてアーチャーは年増のハイエルフを煽ってやる。
しかし、彼女はこんなことでは揺るがなかった。
「国王陛下はあなたの政治力を高く評価なされていたわ。例えあなたが本当に補助程度の実力しかなかったとしても‥‥‥この人事では陛下の評価は変わらなかったはずよ。あの場で魔道具がどうとか、私的見解を述べなければね」
「さも、俺が愚か者のように言うんだな? 事実を伝えただけだ。俺には非はない。文句を言うなら、あいつらに言えばいい」
「あなたねえ、何度も言わせないで? 年齢は坊やでも、役職は公人なの! 個人的な意見や怒りで動いてどうするのよ? もっと賢くやりなさいよ――シェニアが可哀想だわ‥‥‥」
今度はシェニアを持ちだすのかよ。
周りのことばかりを出してきて、俺のことは全部、悪者扱いだな。
それが年の功ってやつか?
俺なら、もっと別のようにやるけどな‥‥‥
「賢くやるなら、ライルに全部背負わせればいい。その報告書だのなんだの、全ては侯爵だったあいつに責任がある。ついでに契約書の控えがあるだろ? 洗いなおせばいいじゃないか。三年間、ずっと見習い扱い。つまり、俺にここに書かれているような損害を出し続けるほどの、戦闘の機会が常にあったかどうか。あったなら、俺の報告はすべて偽りの報告になるぞ?」
「どういうこと? あなた、前線にいたんじゃないの? ここにはそう書かれていたわよ?」
「きちんと把握してないんだな? どうせ、金額の面だけ追っかけてたろ‥‥‥?」
うるさいわよ、それが仕事なの。
そうぼやくとイライアは神経質そうなその目を細めて書類の束をパラパラとめくっていく。
ものの数秒でその作業を終えた彼女はうなづいた。
「確かに、あなたとシェニアは前線ではなく、退路の確保や待機要員として戦場の外にいた。そういうのが多いわね、九割はそう書かれているわ」
「まさか? もう‥‥‥読んだのかよ?! 年の功だな、ハイエルフ‥‥‥」
「うるさいっ、このっ! 能力の低い人間の癖にっ!」
「差別発言はだめだろ? 年増」
「血祭りに挙げられたいっ!? ハイエルフだからって温厚な女だとは限らないわよ!?」
「喧嘩をしに来たんじゃないよ。まあ‥‥‥なんだ。魔道具の件は間抜けだったかもな。でも、あの場でどんな文言を挙げても、勇退はさせてもらえなかったよ。あの王女様の前じゃな」
知ってるわよ‥‥‥
イライアは悔しそうにそう言った。
どうやら、一部始終をギルマスから聞いているらしい。
「なら――」
そこまで言うなら、とイライアは部屋の扉を指差した。
出て行け、もう仲間じゃないと言うのなら。
そういう、意思表示だった。
「出てって。そんな薄情な人間、仲間にすら欲しくないわ。なにが補助してきた、よ」
「嘘だって言うのか? さっき、自分で王都の半分どうこう言いだしたくせにか? ハイエルフなら視えてるだろ‥‥‥俺の本質くらい」
「ハイエルフなら、じゃないわよ。私だけじゃない。勇者にも視えているとは考えなかったの‥‥‥?」
ああ、それはない。
アーチャーは断言する。
イライアは首を傾げた。
勇者には神眼が与えられているはずだからだ。
真実を見ることのできる能力が。
「視えてないよ。あれは、ライルはまだ能力が低い。せいぜい、自分と同程度の存在しか認識できない。だからシェニアや俺、あなたのような存在はぼんやりとしているか、少しだけ能力がある。そう視えているよ」
「なんでそう断言できるの? まるで、彼の中に入って常に確認していたような言い方するじゃない?」
「その為の、魔道具だろ? 能力の把握はしていたよ、その効果もね。あいにくと‥‥‥盗聴や見たものを転送するようにはしていなかったのが裏目にでたけどな」
「呆れた人‥‥‥。じゃあ、彼の能力はやっぱり低いのね――昨日、見た時は抑えているのかと勘違いしたわ‥‥‥」
昨日?
あの会議の場に彼女はいなかったはず――??
「ああ、来たのよ。あなたが抜けたというのと、いえ、なんでもないわ。関係ないことだから」
「そうか。別に聞きたくもない。で、俺にどうしろと? あの場というか、昨夜のパーティを出て行けと言われた時、どうすれば満足だったんだ?」
「まだ――理解していないの? 本当に??」
「はあ‥‥‥公人として、引き継ぎができるようにしろってか? 追放じゃなく、勇退だときちんと後につながるようにしてて、綺麗に引退するべきだった。そう言いたいのか?」
「それがあなたの責任であり、仕事でしょう? どうして勝手にあの場を去ったりしたの?」
「陛下の許可は頂いた。私的な意思じゃない。ついでに、代打は王女――聖女様に初めから決まっていた。あれは計画的な人事だ。俺にはどうしようもない。もう一つ言うと、補助だって理解して入れたなら期待するな。黒札の憧れとか言われても、それをきちんと俺に伝えたか、イライアは? そんな合間の事柄を抜かれて、いきなりああだこうだ、と言われてももう遅いだろ‥‥‥?」
完全実力主義社会が総合ギルドの風潮じゃなかったのか?
嫌味を込めてアーチャーは年増のハイエルフを煽ってやる。
しかし、彼女はこんなことでは揺るがなかった。
「国王陛下はあなたの政治力を高く評価なされていたわ。例えあなたが本当に補助程度の実力しかなかったとしても‥‥‥この人事では陛下の評価は変わらなかったはずよ。あの場で魔道具がどうとか、私的見解を述べなければね」
「さも、俺が愚か者のように言うんだな? 事実を伝えただけだ。俺には非はない。文句を言うなら、あいつらに言えばいい」
「あなたねえ、何度も言わせないで? 年齢は坊やでも、役職は公人なの! 個人的な意見や怒りで動いてどうするのよ? もっと賢くやりなさいよ――シェニアが可哀想だわ‥‥‥」
今度はシェニアを持ちだすのかよ。
周りのことばかりを出してきて、俺のことは全部、悪者扱いだな。
それが年の功ってやつか?
俺なら、もっと別のようにやるけどな‥‥‥
「賢くやるなら、ライルに全部背負わせればいい。その報告書だのなんだの、全ては侯爵だったあいつに責任がある。ついでに契約書の控えがあるだろ? 洗いなおせばいいじゃないか。三年間、ずっと見習い扱い。つまり、俺にここに書かれているような損害を出し続けるほどの、戦闘の機会が常にあったかどうか。あったなら、俺の報告はすべて偽りの報告になるぞ?」
「どういうこと? あなた、前線にいたんじゃないの? ここにはそう書かれていたわよ?」
「きちんと把握してないんだな? どうせ、金額の面だけ追っかけてたろ‥‥‥?」
うるさいわよ、それが仕事なの。
そうぼやくとイライアは神経質そうなその目を細めて書類の束をパラパラとめくっていく。
ものの数秒でその作業を終えた彼女はうなづいた。
「確かに、あなたとシェニアは前線ではなく、退路の確保や待機要員として戦場の外にいた。そういうのが多いわね、九割はそう書かれているわ」
「まさか? もう‥‥‥読んだのかよ?! 年の功だな、ハイエルフ‥‥‥」
「うるさいっ、このっ! 能力の低い人間の癖にっ!」
「差別発言はだめだろ? 年増」
「血祭りに挙げられたいっ!? ハイエルフだからって温厚な女だとは限らないわよ!?」
「喧嘩をしに来たんじゃないよ。まあ‥‥‥なんだ。魔道具の件は間抜けだったかもな。でも、あの場でどんな文言を挙げても、勇退はさせてもらえなかったよ。あの王女様の前じゃな」
知ってるわよ‥‥‥
イライアは悔しそうにそう言った。
どうやら、一部始終をギルマスから聞いているらしい。
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