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第一章 棄てられた死霊術師
「私怨」と期待の値幅
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「悔しいじゃないのーうちから出した子たちは、神様に選ばれたのよ? 勇者はあの女神様の神殿から出てるけど――」
「神殿? 俺はこのギルドから全員出たものだとばかり‥‥‥まあ、いいか。で、ギルマスが走り回ってるってのも理解出来ないけど。何があった?」
「バクスター様は自分の子供たちを愚か者のように扱われて黙ってる人間じゃないわよ。それと、教会も動いてるって知らないの??」
「教会? さっき寄って来たけど。宣教師はもういい年齢の人だったぞ? 玄関先で挨拶程度の言葉を交わしただけだ」
「それすらも知らないのね‥‥‥いまの教会の宣教師は代替わりして、トップは三十代前の男よ」
「だが、どうして教会まで? ギルマスの好意はありがたいが‥‥‥意図がわからない」
この大馬鹿!
そう言い、イライアはアーチャーの頭を書類の束で二度、三度とはたいた。
それは重さからして打撃に近かったが‥‥‥
「あなたは公人。それも、教会で一時期を過ごした関係者でしょ? 教会だってある意味あなたに期待をしていたのよ。聖女もばかよね‥‥‥二大組織を敵に回すんだから」
「まるで俺とシェニアはその二大組織の後ろ盾でこれまでやってこれた。そんな言い草だな? 誰の助けも受けてないのにな」
「あなたが知らないだけよ。みんながどれだけ期待して憧れて、それが孤児たちや黒札や‥‥‥これで魔王討伐まで行けていればうちの対応も出来たのよ!」
「対応?」
そのあとに告げられた内容は、アーチャーには迷惑だったが‥‥‥それでも責任を少しばかり感じさせるものだった。
「そう、対応! あなたがこの国を救った英雄にでもなってくれれば、うちの子たち。黒札をつけてるあの子たちの待遇改善を要求するとことだって出来たのよ!その為にわざわざ‥‥‥経費の負担なんてしてきたのに。あなた自身が全部ぶち壊してくれるなんてね!!!」
「本当に都合がいいっていうか、あれだな。妥協で生きているようなもんだな、この総合ギルドは‥‥‥裏で駆け引きすることは否定しないけどな、イライア。せめて、教えておくべきじゃなかったか?」
「教えてたわよ! シェニアにはね‥‥‥きちんと導くように言い含めてたのに。あれだけ側で親密にしてて出来ないなんて‥‥‥あの、役立たずっ」
「はあ‥‥‥? おい、待てよ。ずいぶんな言い方だな? あいつが俺の側にいたのはその裏の事情を知っていたとしても無関係だと俺は信じてるんだがな? 恋人だったその気持ちまで、任務が関わってくる。そんな言い方じゃないか」
「かもしれないわね? 本人に聞いてみたら? 五年前にここに登録するまで、どこで何やってたか」
「イライア‥‥‥仲間だろ? 同じハイエルフじゃないのかよ? いきなりそう言いだすなんて、何考えてんだ? 常識疑うぞ??」
「うるさいわよっ! 人間同士だって、私たちよりもっとひどいじゃない。仲間なんて平気で裏切るくせに‥‥‥」
私怨でもあるのか?
付き合いきれん。
アーチャーはそろそろ本題に入らないか、と切り出した。
「済まないが、俺が次にどこに行くかは聞いてるんだろ?」
「え? まあ‥‥‥それが納得いかないからみんなが動いてる――」
「いや、いいんだ。それでいい」
「はあっ!? あなた、正気なの? 魔界よ? 魔族の聖地なのよ!?」
「なあ、イライア。人間は簡単に裏切るかもしれないな? あなたの時間の中ではそうだったかもしれない。でも、俺は家族の仇を討ちたいんだ。魔王の居場所を突き止めたい。これはいい機会だと思ってる。違うかい?」
「違わない‥‥‥わね。それは合理的な判断だけど、でも、間違ってるわ。あなたの実力じゃ、力不足……魔力が足りないわよ‥‥‥」
痛いところを突くなあ、このハイエルフ。
本当に毒舌だよ‥‥‥
そう冷や汗をかきながら、アーチャーはいいんだよ、と苦笑した。
「良くないでしょ!? わざわざ死地に行かせるなんて、そんなこと――」
「あのな、イライア。矛盾しすぎだ。俺はこの宝石を売って資金が欲しい。貴族様ってのはなんだかんだで金かかるみたいだからな‥‥‥」
「行く‥‥‥つもりなの、あなた?」
「ああ、その気だよ。でもあれだな、そうなるとシェニアにはもう少し待ってもらわないとダメだな。さすがにハイエルフは地下には来ないだろうし‥‥‥考えが甘かったか。飛空艇で南の大陸に行くにしても、俺は赤の位階以上じゃないしな‥‥‥資格がない」
「恋にぼけてる男って間抜けねー」
「ほっとけ。で、換金できるのか? その書類の補填にって取り上げだけは許して欲しいもんだが。それとも同額になる仕事を回して貰えないか??」
出来る訳ないでしょう‥‥‥イライアは困った顔になってしまった。
まあ、そうだろうな。
目論見を全部壊してくれた相手に今更頼まれても、応じる訳がない。
あなた、自尊心ってものはないの? そう言われてしまう始末だ。
アーチャーも苦笑するしかなかった。
そろそろ潮時だな‥‥‥もう、俺の居場所はここにはない。
それがアーチャーの結論だった。
「神殿? 俺はこのギルドから全員出たものだとばかり‥‥‥まあ、いいか。で、ギルマスが走り回ってるってのも理解出来ないけど。何があった?」
「バクスター様は自分の子供たちを愚か者のように扱われて黙ってる人間じゃないわよ。それと、教会も動いてるって知らないの??」
「教会? さっき寄って来たけど。宣教師はもういい年齢の人だったぞ? 玄関先で挨拶程度の言葉を交わしただけだ」
「それすらも知らないのね‥‥‥いまの教会の宣教師は代替わりして、トップは三十代前の男よ」
「だが、どうして教会まで? ギルマスの好意はありがたいが‥‥‥意図がわからない」
この大馬鹿!
そう言い、イライアはアーチャーの頭を書類の束で二度、三度とはたいた。
それは重さからして打撃に近かったが‥‥‥
「あなたは公人。それも、教会で一時期を過ごした関係者でしょ? 教会だってある意味あなたに期待をしていたのよ。聖女もばかよね‥‥‥二大組織を敵に回すんだから」
「まるで俺とシェニアはその二大組織の後ろ盾でこれまでやってこれた。そんな言い草だな? 誰の助けも受けてないのにな」
「あなたが知らないだけよ。みんながどれだけ期待して憧れて、それが孤児たちや黒札や‥‥‥これで魔王討伐まで行けていればうちの対応も出来たのよ!」
「対応?」
そのあとに告げられた内容は、アーチャーには迷惑だったが‥‥‥それでも責任を少しばかり感じさせるものだった。
「そう、対応! あなたがこの国を救った英雄にでもなってくれれば、うちの子たち。黒札をつけてるあの子たちの待遇改善を要求するとことだって出来たのよ!その為にわざわざ‥‥‥経費の負担なんてしてきたのに。あなた自身が全部ぶち壊してくれるなんてね!!!」
「本当に都合がいいっていうか、あれだな。妥協で生きているようなもんだな、この総合ギルドは‥‥‥裏で駆け引きすることは否定しないけどな、イライア。せめて、教えておくべきじゃなかったか?」
「教えてたわよ! シェニアにはね‥‥‥きちんと導くように言い含めてたのに。あれだけ側で親密にしてて出来ないなんて‥‥‥あの、役立たずっ」
「はあ‥‥‥? おい、待てよ。ずいぶんな言い方だな? あいつが俺の側にいたのはその裏の事情を知っていたとしても無関係だと俺は信じてるんだがな? 恋人だったその気持ちまで、任務が関わってくる。そんな言い方じゃないか」
「かもしれないわね? 本人に聞いてみたら? 五年前にここに登録するまで、どこで何やってたか」
「イライア‥‥‥仲間だろ? 同じハイエルフじゃないのかよ? いきなりそう言いだすなんて、何考えてんだ? 常識疑うぞ??」
「うるさいわよっ! 人間同士だって、私たちよりもっとひどいじゃない。仲間なんて平気で裏切るくせに‥‥‥」
私怨でもあるのか?
付き合いきれん。
アーチャーはそろそろ本題に入らないか、と切り出した。
「済まないが、俺が次にどこに行くかは聞いてるんだろ?」
「え? まあ‥‥‥それが納得いかないからみんなが動いてる――」
「いや、いいんだ。それでいい」
「はあっ!? あなた、正気なの? 魔界よ? 魔族の聖地なのよ!?」
「なあ、イライア。人間は簡単に裏切るかもしれないな? あなたの時間の中ではそうだったかもしれない。でも、俺は家族の仇を討ちたいんだ。魔王の居場所を突き止めたい。これはいい機会だと思ってる。違うかい?」
「違わない‥‥‥わね。それは合理的な判断だけど、でも、間違ってるわ。あなたの実力じゃ、力不足……魔力が足りないわよ‥‥‥」
痛いところを突くなあ、このハイエルフ。
本当に毒舌だよ‥‥‥
そう冷や汗をかきながら、アーチャーはいいんだよ、と苦笑した。
「良くないでしょ!? わざわざ死地に行かせるなんて、そんなこと――」
「あのな、イライア。矛盾しすぎだ。俺はこの宝石を売って資金が欲しい。貴族様ってのはなんだかんだで金かかるみたいだからな‥‥‥」
「行く‥‥‥つもりなの、あなた?」
「ああ、その気だよ。でもあれだな、そうなるとシェニアにはもう少し待ってもらわないとダメだな。さすがにハイエルフは地下には来ないだろうし‥‥‥考えが甘かったか。飛空艇で南の大陸に行くにしても、俺は赤の位階以上じゃないしな‥‥‥資格がない」
「恋にぼけてる男って間抜けねー」
「ほっとけ。で、換金できるのか? その書類の補填にって取り上げだけは許して欲しいもんだが。それとも同額になる仕事を回して貰えないか??」
出来る訳ないでしょう‥‥‥イライアは困った顔になってしまった。
まあ、そうだろうな。
目論見を全部壊してくれた相手に今更頼まれても、応じる訳がない。
あなた、自尊心ってものはないの? そう言われてしまう始末だ。
アーチャーも苦笑するしかなかった。
そろそろ潮時だな‥‥‥もう、俺の居場所はここにはない。
それがアーチャーの結論だった。
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