漆黒の霊帝~魔王に家族を殺された死霊術師、魔界の統治者になる~

星ふくろう

文字の大きさ
25 / 76
第一章 棄てられた死霊術師

「始まり」の死霊術師

しおりを挟む
「なら――まあ、いいよ。来て悪かった。期待に応えれないまま、それらを壊したことも含めて謝罪は出来ないけどな。これは‥‥‥おいていくよ。シェニアに半分渡してくれないか?」
「どうして彼女にこだわるの? いま自分で待たせるって言ったばかりじゃないの。辛い未来を背負わせるつもりなの?」
「いや、違うよ。三年間の感謝には足りないけど、まあ、なんだろ? 一度は自分で道を決めて欲しいんだ、ギルドの依頼込みの俺との付き合いじゃなくてさ。俺は必ず戻ると思う、たぶん。魔王が見つかるかどうかが、最初の段階だけど‥‥‥」
「魔王、ね? こんな量の宝石、金貨数百枚になるわねー。で、あなたお金はないわよね、多分」
「ああ、恥ずかしながらないよ。無いから、静かに降りていくことにするさ。これも戻すよ、迷惑はかけれないからな」

 そう言い、アーチャーはギルドから与えられている証を返却しようとした。
 お互い、これ以上のつながりを持つのは――気分的にも宜しくなかったからだ。

「それ、意味が分かってしてるの? もう戻れないわよ、世界中のどのギルドにも‥‥‥」
「そんなことはないだろ? それに地下世界にはないのかよ、総合ギルドは?」
「ある‥‥‥けど。機能していないわ。獣人たちが所属してるけど、魔族の――」
「まさか、食糧‥‥‥とか??」
「なんで知って!?」
「いや‥‥‥たまたま、耳にすることがあってな。今回の人事移動も、青の魔人様の意向が裏にあるとかなんとか違うのか?」

 どうやって仕入れたのよ、その情報!
 イライアは驚きを隠せないでいた。
 アーチャー、そこの見えない子だわ、と。

「ああ、やっぱり。あの話、あながち間違いじゃなかったんだな‥‥‥」
「どの話よ?」
「教えるわけないだろ?俺を無能扱いして、追い出そうとして、更に責任まで取れなんていう、そんな元家族には」
「さいってー‥‥‥」
「お互い様だよ。それ、頼んだぞ。最後のわがままくらい、聞いてくれてもいいだろ? イライアの中では俺は死地に赴くって設定らしいからな。酷いもんだ」
「たかだか、黒の位階で何ができるってのよ。隠してるって言っても大した能力は感じないわ‥‥‥ライルより少しいい程度じゃないの」

 ふん?
 その程度にしか見えないか。
 なら、イライアも大したことないな。
 アーチャーは彼女の位階はよくて赤の手前程度かなと見積もってみる。
 それならまあ、クラレは赤の魔女なんて位階にいるけど実力は下から三段目。
 緑程度だから、このギルドの位階の決め方にも疑問を感じずにはいられない。
 それとも――ハグーンの位階の決め方が古すぎて現代にあっていないのか。
 
「そっかーまあ、いいだろ? 俺はもう無関係だし、これ以上の小言はいらない――なあ、一つ質問していいか?」
「何よ? そこまで言うならさっさと行きなさいよもう、で?」
「フィオナ」
「はあ?」
「俺が一月ほどまでから寝言で呼んでいるらしい。シェニアがえらく怒っててな。ハイエルフは嫌う言葉だと聞いたんだ。知らないか?」
「うーん‥‥‥呪われた名前だから。ミレイアとか、フィオナは‥‥‥だめなのよ」
「なんで? ミレイアは分かるぞ? フィオナはなんだ?」

 くちにすることもはばかられるような顔をして、言いづらそうなまま、イライアはため息交じりに教えてくれた。
 それは、カイネ・チェネブと戦い、滅ぼされた最後の‥‥‥魔王。
 全ての魔族を統べた女帝の名前だ、と。

「あっそ‥‥‥」
「何よー、その腑抜けた返事はー??」
「いや、古すぎてなんとなく、な。共感が沸かない。さすが、ババアだな‥‥‥?」
「盛大な嫌味ね。でも、そういう意味ではライルって名前も呪われたものよ?」
「え? そうなのか?」
「だって、二百年くらい前かしら? 鮮血の勇者なんて呼ばれたのも‥‥‥ライルだったわよ? あまりに敵味方見境なく殺しまくってねーで‥‥‥封印された」
「勇者は不老不死だからなー‥‥‥。
 因果なもんだ。うちのライルはそうでないことを祈るまでだな」

 あの女好きでそれでいて‥‥‥あいつが初めて見せたあの表情。
 ぞっとするほど、いやらしさを感じるあの顔は――好きじゃない。
 あれは自分が好きなことをとことんやる人間の見せるやつだ。
 欲望を満たすために、手段を択ばない人間のそんな顔。黒札の仲間にはよくいるひにくれた人間の放つそんなオーラも感じていたアーチャーは、一瞬、身震いする。
 ライルと聖女のあの笑顔が同種のものだと気づいて、つい悪寒を感じてしまったからだった。

「あなたにはそんな人間にはなって欲しくないけど。でも、同種のもの、感じるわよ?」
「え‥‥‥? 俺に?」
「復讐するって息巻いている時のあなたは、もろにそのまんまだわー。気づいてないの?」
「ああ‥‥‥そう、かもしれないな。ま、気を付けるよ。どうせ、地下世界ではいい目には会えそうにない」
「行く気なんだ‥‥‥?」
「もちろん。手掛かりはほしい。それが俺の生きる理由だ」

 ばかは死ぬまでばかねー。
 イライアは呆れてしまう。
 せめて最後にとか言えないの、と。
 ダンジョン攻略の案件なら、いくらでもあるのに。
 不器用なばか。
 死なせるには惜しいばか。
 裏切られても気づかないばか。
 
「持って行きなさい。私は見てないから」
「おいっ、いいのかよ‥‥‥?」
「報酬はないわよ。うちが貰うから。さっさと行きなさい、新しく始めるのよ」

 渡された書類一式。
 新人の死霊術師の名簿と黒札の紋章、そして――ダンジョン攻略、最下層付近の依頼が一件。
 ありがとう、アーチャーは言葉に出さず後ろ手を挙げてその場を去っていった。

「戻ってくるな、ばーか! シェニアがどうかなんて調べないんだ‥‥‥どうすんのよ、これ。私から渡すの? あなたからって? 自分でやれよ、ばかアーチャー‥‥‥」

 彼が消えてから、毒づくイライアはあることを忘れようと心に決める。
 シェニアが五年前にこのギルドに登録してからすぐに決めた相棒が誰かなんて。
 彼女の口からは、いまのアーチャーには言えなかったからだ。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

落ちこぼれ職人、万能スキルでギルド最強になります!

たまごころ
ファンタジー
ギルド最弱の鍛冶師レオンは、仲間に「役立たず」と笑われて追放された。 途方に暮れる彼の前に現れたのは、伝説の鍛冶書と、しゃべる鉄塊(?)。 鍛冶・錬金・料理・魔道具――あらゆるクラフトスキルを吸収する《創精鍛造》を極め、万能職人へと覚醒! 素材採取から戦闘まで、すべて自作で挑む“ものづくり異世界成り上がり譚”が今、始まる。 裏切った元仲間? 今さら後悔しても遅いぞ!

「お前は用済みだ」役立たずの【地図製作者】と追放されたので、覚醒したチートスキルで最高の仲間と伝説のパーティーを結成することにした

黒崎隼人
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――役立たずの【地図製作者(マッパー)】として所属パーティーから無一文で追放された青年、レイン。死を覚悟した未開の地で、彼のスキルは【絶対領域把握(ワールド・マッピング)】へと覚醒する。 地形、魔物、隠された宝、そのすべてを瞬時に地図化し好きな場所へ転移する。それは世界そのものを掌に収めるに等しいチートスキルだった。 魔力制御が苦手な銀髪のエルフ美少女、誇りを失った獣人の凄腕鍛冶師。才能を活かせずにいた仲間たちと出会った時、レインの地図は彼らの未来を照らし出す最強のコンパスとなる。 これは、役立たずと罵られた一人の青年が最高の仲間と共に自らの居場所を見つけ、やがて伝説へと成り上がっていく冒険譚。 「さて、どこへ行こうか。俺たちの地図は、まだ真っ白だ」

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【読切短編】転生したら辺境伯家の三男でした ~のんびり暮らしたいのに、なぜか領地が発展していく~

Lihito
ファンタジー
過労死したシステムエンジニアは、異世界の辺境伯家に転生した。 三男。継承権は遠い。期待もされない。 ——最高じゃないか。 「今度こそ、のんびり生きよう」 兄たちの継承争いに巻き込まれないよう、誰も欲しがらない荒れ地を引き受けた。 静かに暮らすつもりだった。 だが、彼には「構造把握」という能力があった。 物事の問題点が、図解のように見える力。 井戸が枯れた。見て見ぬふりができなかった。 作物が育たない。見て見ぬふりができなかった。 気づけば——領地が勝手に発展していた。 「俺ののんびりライフ、どこ行った……」 これは、静かに暮らしたかった男が、なぜか成り上がっていく物語。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました

東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。 王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。 だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。 行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。 冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。 無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――! 王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。 これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。

処理中です...