漆黒の霊帝~魔王に家族を殺された死霊術師、魔界の統治者になる~

星ふくろう

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第一章 棄てられた死霊術師

死霊術師、地下へ

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「こんな嫌がらせに似たやり方、賢くないわよ? 巻き添えはごめんだわ」
「いいだろ、別に。ライルは何も出来ないよ。例え自分の財産をぜんぶ奪われたとしても動かない」
「‥‥‥? どうしてそう言えるの?」
「いまはあいつにとって好機だからさ。侯爵様になった上に最強戦力の聖女様まで手に入れた。おまけに騒がしかった足元はこれで鎮火する。金はこれからいくらでも入ってくるさ。なにせ勇者様だ。活躍すればするほどに民衆の熱は湧き上がる。そして、最後は‥‥‥分かるだろ?」
「国王になるってこと? そう簡単には行かないでしょ?」
「狙うさ。その上で地下世界の覇権すら握るつもりだ。そういう男だがそれでも――魔王には勝てない。そして封印される。そこまでほっときゃいいのさ。魔王側から接触してきたんだから、あいつにはまたとない好機だ」

 得るものが彼の妄想では巨大な訳ね。
 イライアがなるほどとうなづくと、アーチャーは確認する。
 義妹の安全を確保できるかどうか。
 そこがいまは一番、大きな問題だった。

「そうねーまあ。悪くないのをつけておくわよ。それであなたはどうするの?」
「俺か? 俺はこのまま地下に潜るよ。この依頼をこなさないとな。若い死霊術師様には俺の代理人として地下に降りてもらう。ついでに、教会とギルドの選んだ精鋭も交えて送り込んでくれ」
「地下世界の悪癖を正すってこと? でもこの人数じゃ足りないかもしれないわね。大きな反感を買わなきゃいいけど」
「俺はここで政治をするつもりはないよ。一時しのぎになればいい。あとは下は下でこれまで通りになんとかするだろ?」

 ならこの、永住はどうするの? 
 イライアは書類を持ちあげてみせた。

「植民地には新しい住民も必要だよ。ギルドの勢力拡大にももってこいだろ? あとはそっちで上手く操ってくれよ。道は作るからさ」
「誰が政治をしないんだが‥‥‥ねえ、足りないわ」
「はあ? これ出せっていうのか?」
「巻き込むなら教会も巻き込んだ方がやりやすいでしょ? いざとなったら世界中から人手が集まるわよ?」
「‥‥‥呆れたもんだな。もう、あんたがギルマスになれよ?」

 差し出してきた手に戻された以上の大金貨を追加しなきゃならないなんて。
 どこまであこぎなんだか、このハイエルフは‥‥‥この総合ギルドを動かしている闇の女帝だろ、イライア。
 
「はい、毎度」
「守銭奴のハイエルフなんて聞いたことが無いよ。シェニアだってもっとおおらかだった」
「あれは南の子。私は東の大陸の子。一緒にしないでくれない?」
「見た目も違うハイエルフも珍しいけどな。さて、それじゃ行くよ。ブルングト王国の総合ギルドの裏の支配者イライア様のお手並み拝見だ。任せたぞ」
「シェニアは‥‥‥?」
「あいつに来る気があるなら、いつか来る。自分から去ったのを追うのもな‥‥‥」
「二度と手に入らないかもねー。まあ、好きにしなさい。三回目に来ても相手にしないから」
「次はそうだな‥‥‥。魔王に負けた男か、それとも――だろ?」
「めんどくさいから送還してあげる。さっさと行きなさい」
「あっ、おい、待て――!?」

 さすがはハイエルフ。
 小言だけいう年増じゃなかったか‥‥‥アーチャーの知らない術式、知らない紋様の転送魔導。
 さっさとギルドの敷地外に放り出された彼は、大したもんだ。
 そう呟くと、いきなり現れた少年をいぶかしむ通行人に紛れるようにして地上世界から姿を消した。
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