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第二章 ダンジョンの死霊術師
「背徳」の冒険者たち
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☆
そこは地下世界の一角に位置する、とある城にいくつかある尖塔の一つ。
遠く地上世界とつながる塔を見つめながら、二人の人物がその場に立っていて面白そうにそれを見学していた。
吐く息が白いところを見ると、寒い地方だということが見て取れる。
しかし、その身を包む衣服はあくまで軽装で、王城の屋根や周囲の城壁、都市は白と黒色の建物に使われている建材がまだら模様を見せていた。
「懐かしい反応を感じた気がするな?」
「はるかな足元からの胎動がありましたな。行ったこともない場所ですが懐かしくも恐ろしい。そんなものを思い出します」
「あれはどれくらい昔だ? 最後に見た事があるのは‥‥‥??」
「さて? 私どもはつい最近、目覚めましたからな。地上世界においてはもうどれくらか――二千年近く前に眠りについた。それ以前には多々あったように思いますが‥‥‥この魔界ではいかがですか?」
「ここか? さてな‥‥‥瘴気の多くはあの魔人殿が一万年近く前に焼かれてしまわれた。彼の神炎と似たものを感じたが、いまさら魔人殿が動くことなどありえないだろう?」
薄紫色の豊かな髪を伸ばした女性――第五位の柱の魔王、夢魔の女王エミスティア。
眠そうな顔をしながら、彼女は最近たずねてきた懐かしい友人を隣にしてそう言った。
「さあ、どうですかな? 地下世界では魔王諸侯が治められて安寧の土地と化していますが、地上世界。その他の十二の世界はどうかまでは分かりかねますな」
「エル・オルビス、イルベル、オルン・ベルヌにハルフゲイン。どれも古くて偉大なる神や魔が多く住む。誰がどこに移動しても分かりやすく、また、見つけにくい。新たな火種にならなければいいがな‥‥‥」
彼女の側で、小脇に抱えた首が怪訝な顔をする。
デュラハンのリード卿は、この国、ラスクーナに身を寄せることに成功していた。
「どうしてそのような心配を?」
「決まっているだろう、リード。そなたが眠っている間にも多くの争いがあった。魔族はようやく平和を手にしたというのに、古き神々はいまだに対立しようとしている。王としては――国民の安全だけを望みたい」
「女王。それは神々の主となるべき誰かが消えたことを悲しんでおられるように聞こえますが‥‥‥?」
「そうさな。カイネ神が去ってから一万と数百年。まあ、ただの杞憂に終わって欲しいものだ。ハグーンなどが妙なことを考えなければいいが」
「賢者の都、ですか。光のハグーン、闇のジェニス。その双方を擁する天空大陸。女神などというのもいましたな、フォンテーヌ神もそう。それに、この王国と国境を境にするあの王国の飛び地もですな」
「最果ての地、アリス・ターナー。魔人殿がうまくいさめてくれよう……新たなる火種はもう、こりごりだ」
地下は地下だけで静かに生きればそれでいい。
その気になれば魔界の一大勢力になりうる実力者はそれでも、魔族は静かに生きるべきだと呟いていた。
「そういえば、隣国の領主が変わるという報告があったな。あれはどうなのだ?」
「どうなのだ、と言われても。私は来たばかりですから部下をやって調べますか?」
「頼む。私の国の者はいろいろと知られている。動ける者は少ない」
「では――誰かを行かせましょう。さて、誰にしたものか‥‥‥」
リード卿は思案を巡らせるのだった。
☆
「いる‥‥‥のか?」
「さあ、はっきりしないの。少なくとも、この付近には――反応はないわ」
「となると、遠隔操作?」
「いや、分からんぞレズロ。あのスケルドラゴンをどこかの魔王でも誰でもいい。操っていたとすれば、その最後に隠蔽するために仕掛けていたとも考えられる」
「なるほど‥‥‥リーファの魔法でも感知できないならそれもありえるだけどなあ、アーレン。どこからやってきたんだ、あのスケルドラゴンにせよ、モンスターどももそうだ。アリス・ターナーの塔の付近でこんなにハイレベルなモンスターなんて‥‥‥」
レズロはおかしなこともあったもんだ、とぼやいていた。
アーレンの気掛かりはそこではなく、獣人たちの遺体に向いているようにリーファには見えていた。
また金がかかる、それがアーレンの方から聞こえてきたからだ。
「もういいだろ、レズロ。いないなら、いないんだ多分な。それより、こいつらの服を剥ぐのを手伝えあとは皮と尾だな。それだけ剥いでも、投資した額に見合うかどうか‥‥‥無駄な出費だったよまったく」
「なら――売ったらどうだ?肉も買い取りするだろ、あの市場なら」
「肉‥‥‥? 売れるのか?」
アーレンは奴隷市場に詳しくない。
リーファにどうなんだと、たずねていた。
魔女は自分の攻撃魔導がスケルドラゴンによって破られたのではなく、エネルギーの中継拠点として使っていた獣人の肉体がもたなかったのだと知って安堵し、また悔しがっていた。
「まったく、こんな役立たずだなんて。あの程度の魔法で死ぬなんて信じられないわ。てっきり、自分のミスかと思ったじゃない」
「まあ、そう言うなよ。新しく奴隷を買えばまた――できるだろ?」
「それはそうだけど‥‥‥一匹金貨二枚はするのよ?
肉ねえ‥‥‥魔族が好んで食べるとは聞いたけど、それならパルドの市内にある肉屋で売買してるわよ?」
「そうなのか? どの辺りだ?」
「北側の‥‥‥貧民街よ。獣人の男が、生きたまま同族や他種族の若い女を縛り上げて店の軒先にこれ見よがしに吊るして販売してるわ。解体もその場でするっていうから、ある意味、それを見たいが為に訪れる魔族もいるとかいないとか‥‥‥悪趣味だけど。そこなら高く売れるんじゃない?
下手に皮とかはがないほうがいいと思うわよ?」
「北側? この重いのを運ぶには骨だな‥‥‥」
再び死体を蹴り上げ、仕方ないと尾を持って引きずりながら三人の冒険者たちは辺りを気にしつつ移動を開始しようとしていた。
それを見たアーチャーはどうやら、心を決めたようだった。
そこは地下世界の一角に位置する、とある城にいくつかある尖塔の一つ。
遠く地上世界とつながる塔を見つめながら、二人の人物がその場に立っていて面白そうにそれを見学していた。
吐く息が白いところを見ると、寒い地方だということが見て取れる。
しかし、その身を包む衣服はあくまで軽装で、王城の屋根や周囲の城壁、都市は白と黒色の建物に使われている建材がまだら模様を見せていた。
「懐かしい反応を感じた気がするな?」
「はるかな足元からの胎動がありましたな。行ったこともない場所ですが懐かしくも恐ろしい。そんなものを思い出します」
「あれはどれくらい昔だ? 最後に見た事があるのは‥‥‥??」
「さて? 私どもはつい最近、目覚めましたからな。地上世界においてはもうどれくらか――二千年近く前に眠りについた。それ以前には多々あったように思いますが‥‥‥この魔界ではいかがですか?」
「ここか? さてな‥‥‥瘴気の多くはあの魔人殿が一万年近く前に焼かれてしまわれた。彼の神炎と似たものを感じたが、いまさら魔人殿が動くことなどありえないだろう?」
薄紫色の豊かな髪を伸ばした女性――第五位の柱の魔王、夢魔の女王エミスティア。
眠そうな顔をしながら、彼女は最近たずねてきた懐かしい友人を隣にしてそう言った。
「さあ、どうですかな? 地下世界では魔王諸侯が治められて安寧の土地と化していますが、地上世界。その他の十二の世界はどうかまでは分かりかねますな」
「エル・オルビス、イルベル、オルン・ベルヌにハルフゲイン。どれも古くて偉大なる神や魔が多く住む。誰がどこに移動しても分かりやすく、また、見つけにくい。新たな火種にならなければいいがな‥‥‥」
彼女の側で、小脇に抱えた首が怪訝な顔をする。
デュラハンのリード卿は、この国、ラスクーナに身を寄せることに成功していた。
「どうしてそのような心配を?」
「決まっているだろう、リード。そなたが眠っている間にも多くの争いがあった。魔族はようやく平和を手にしたというのに、古き神々はいまだに対立しようとしている。王としては――国民の安全だけを望みたい」
「女王。それは神々の主となるべき誰かが消えたことを悲しんでおられるように聞こえますが‥‥‥?」
「そうさな。カイネ神が去ってから一万と数百年。まあ、ただの杞憂に終わって欲しいものだ。ハグーンなどが妙なことを考えなければいいが」
「賢者の都、ですか。光のハグーン、闇のジェニス。その双方を擁する天空大陸。女神などというのもいましたな、フォンテーヌ神もそう。それに、この王国と国境を境にするあの王国の飛び地もですな」
「最果ての地、アリス・ターナー。魔人殿がうまくいさめてくれよう……新たなる火種はもう、こりごりだ」
地下は地下だけで静かに生きればそれでいい。
その気になれば魔界の一大勢力になりうる実力者はそれでも、魔族は静かに生きるべきだと呟いていた。
「そういえば、隣国の領主が変わるという報告があったな。あれはどうなのだ?」
「どうなのだ、と言われても。私は来たばかりですから部下をやって調べますか?」
「頼む。私の国の者はいろいろと知られている。動ける者は少ない」
「では――誰かを行かせましょう。さて、誰にしたものか‥‥‥」
リード卿は思案を巡らせるのだった。
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「いる‥‥‥のか?」
「さあ、はっきりしないの。少なくとも、この付近には――反応はないわ」
「となると、遠隔操作?」
「いや、分からんぞレズロ。あのスケルドラゴンをどこかの魔王でも誰でもいい。操っていたとすれば、その最後に隠蔽するために仕掛けていたとも考えられる」
「なるほど‥‥‥リーファの魔法でも感知できないならそれもありえるだけどなあ、アーレン。どこからやってきたんだ、あのスケルドラゴンにせよ、モンスターどももそうだ。アリス・ターナーの塔の付近でこんなにハイレベルなモンスターなんて‥‥‥」
レズロはおかしなこともあったもんだ、とぼやいていた。
アーレンの気掛かりはそこではなく、獣人たちの遺体に向いているようにリーファには見えていた。
また金がかかる、それがアーレンの方から聞こえてきたからだ。
「もういいだろ、レズロ。いないなら、いないんだ多分な。それより、こいつらの服を剥ぐのを手伝えあとは皮と尾だな。それだけ剥いでも、投資した額に見合うかどうか‥‥‥無駄な出費だったよまったく」
「なら――売ったらどうだ?肉も買い取りするだろ、あの市場なら」
「肉‥‥‥? 売れるのか?」
アーレンは奴隷市場に詳しくない。
リーファにどうなんだと、たずねていた。
魔女は自分の攻撃魔導がスケルドラゴンによって破られたのではなく、エネルギーの中継拠点として使っていた獣人の肉体がもたなかったのだと知って安堵し、また悔しがっていた。
「まったく、こんな役立たずだなんて。あの程度の魔法で死ぬなんて信じられないわ。てっきり、自分のミスかと思ったじゃない」
「まあ、そう言うなよ。新しく奴隷を買えばまた――できるだろ?」
「それはそうだけど‥‥‥一匹金貨二枚はするのよ?
肉ねえ‥‥‥魔族が好んで食べるとは聞いたけど、それならパルドの市内にある肉屋で売買してるわよ?」
「そうなのか? どの辺りだ?」
「北側の‥‥‥貧民街よ。獣人の男が、生きたまま同族や他種族の若い女を縛り上げて店の軒先にこれ見よがしに吊るして販売してるわ。解体もその場でするっていうから、ある意味、それを見たいが為に訪れる魔族もいるとかいないとか‥‥‥悪趣味だけど。そこなら高く売れるんじゃない?
下手に皮とかはがないほうがいいと思うわよ?」
「北側? この重いのを運ぶには骨だな‥‥‥」
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