漆黒の霊帝~魔王に家族を殺された死霊術師、魔界の統治者になる~

星ふくろう

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第二章 ダンジョンの死霊術師

死霊術師、画策する

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 仲間の死骸を売り捌こうなんて連中だったか。
 王国の法律は奴隷ですらもその死をもって生きていた時代の制度から解放すると定めているのに。
 ここは王国領土で、彼らはその中で生きる限りは法に従わなければならない。
 領主としてその蛮行は見過ごせなかったし何より、奴隷売買はまだ良しとしても食肉なんて認めるつもりはなかった。
 しかし、亜人や魔族にまでその法律が適用されるかは不明だ。
 正しいと思っていざ裁いてみたら、まったく逆効果では話にならない。

「こういう時にあのバカ勇者か聖女様がいらしたらなあ。問答無用で断じてやれるんだが」

 まあいないものを望んでも仕方がない。
 しかし、あの三人をこのまま無事にパルド市内に戻す気も、アーチャーにはさらさらなかった。
 幸いにも……ここにはまだあれが残っている。
 かわいそうだが連中にはその相手をしてもらおう。
 そう決めると、アーチャーは渓谷の朱色の残党が歩いてくる道へと降り立った。


「アーレン、誰か来る……」
「なんだと!?」

 リーファの報告にアーレンはその方向――自分たちの進行方向に鋭い視線を送っていた。
 自分の目にはまだうっすらとしか見えないそれを、魔導士であるリーファは遠見か何かの魔導で捉えたのだろう。
 
「どんな奴だ?」
「赤髪ね。それに――敵ではないみたい」
「なんでわかる?」
「黒札をつけてるからよ、レズロ。例の死霊術師だと思うわ。先にあなたの足を治すべきかしら」
「いや、俺のはいい。とりあえずは応急処置だが回復ポーションが効いている。骨折は完治してるからな」
「どうする? 遺体を運搬するのも面倒だ。一度こいつらを再生させるか?」
「それで反逆されなければいいけどね。その首輪の効果、もう切れてるわよ? 魂までは束縛できないもの。保証はしかねるわ」

 不便なものだな、そうぼやくとアーレンは持っていた獣人の尾を話した。レズロもそれに倣い、遺体は二体折り重なってその場に積まれた。

「あっちの魔石も回収しなきゃならんもんなあ。どうするアーレン、リーファ? あいつに魂を戻させずに遺体だけ移動させるように依頼したら? その間に、俺とアーレンで魔石を回収する。リーファが肉屋の場所に一番詳しいだろう? 換金してからギルドで合流ってのは??」
「悪くないな。その方が効率的だが、魔石に変換するにはリーファの方が適任だろう? それならレズロ、お前とリーファで魔石を回収してこいよ。俺もパッとはしないが貧民街には縁がある。肉屋があこぎでなきゃ‥‥‥金は手に入るはずだ」
「そう――ね、魔石はレズロと二人でも問題ないわ。でも先に、この二体と彼をどうにかしなきゃ。いま別れるのは賢くない」

 万が一、魔石だけ奪われるなんてことはないと思うけど、とリーファは言い含めるように二人の剣士に目配する。まるで盗賊のように鋭いその視線に彼らは第三の選択肢を選ぶ必要もあると思ったようだ。
 どこまでも腹黒い連中だなあ‥‥‥
 三人のやり取りが聞こえてないとでも思っているんだろうか?
 アーチャーはまだ距離の離れている朱色のパーティに苦笑せざるを得ない。
 誰がそんなに都合よく動くかよ、どれだけ抜けてるんだあいつら?
 茶番に少しだけ付き合ってやるかと思いつつ、近づいていくのだった。



「‥‥‥で? 集合予定時間、こんなに早かったのか?」
「あー‥‥‥いや早めに見つけたんでなこっちはこっちで五人が揃ってたからな。まあ、着を悪くしないでくれ?」
「気は悪くしてないが――なんだよ、その遺体は? 依頼は達成したのかい? えーと‥‥‥朱色の四刃さんたち?」
「俺はアーレン。リーダーをしている。魔女のリーファ、浅葱の位階だ。それと、剣士のレズロ。残り二人は‥‥‥いろいろとあってな依頼は遂行したがその間で死んでしまった」

 死んでしまった、じゃなくて、使い捨てだったんだろ? 
 そう突っ込んでも良かったが、そこは我慢することにした。
 彼ら三人が望むのはなにか、断ればどう出るのか。
 そこを見極めたかったからだ。

「それは残念だったな。しかし、遺体は埋葬したらどうだ? それとも待つ家族がいるなら、荷馬車でも用意して来ようか? 遠目にだが――引きずってなかったか、あんたら?」
「あん? よく見えるな? あんなに距離があったのに」
「距離があったのにって‥‥‥俺はしてなかったかと問うただけなんだが? まるでやってましたって言い方だな、レザロ? レズロか?」
「レズロだっ!! 新人のくせに舐めた口叩くんじゃねえ!!」

 まだ折れて回復させたのものの、痛みまでは取れていないらしい。
 レズロは足を引きずりながら、苛立ち紛れに叫んでいた。
 しかし、それはアーレンによって止められてしまう。
 彼は最初の予定通り、ことを運ぶ気のようだった。

「おい、レズロやめろなあ、あんた。死霊術師なんだろ?」
「だから?」
「あの遺体を再生してくれないか? まだ死んでから一時間経過してないんだ。どうだ、出来るか?」
「一時間? それだけ焼け焦げていて、治療もしなかったのか? 冷たい仲間だな、あんたら‥‥‥?」
「即死だったのよ。治療のしようがなかったわでも、あなたなら出来るんじゃないの? 再生に反魂、蘇生もあなたの専門分野でしょ?」

 さて、どうしたものかな。
 少なくとも、この女魔導士というか、魔女というか。
 彼女は――死霊術に正しい理解を持っている。
 まだ伸びる器なんだがなあ。
 ここで散らせていいものか、惜しくないものか。
 アーチャーはその才能を活かすべきかどうか悩んでいた。

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