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第三章 たった一人の隣人
生と死の距離
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「とんでもない絵面だな、これは」
「そうでしょ? 同じ獣人として、もし自分がそうされたらって思ったら‥‥‥恐怖で死にたくなるわ」
そのチラシにあったもの。
臓腑を分かりやすく簡素に描き、その下に『蒼狼族の王女の解体ショー開催! その他の王族の出演あり』と書かれている。さらには追加で、その後に肉のバラ売り、もしくは単体での販売も可‥‥‥と。
「展覧会とは名ばかりの、解体ショーじゃねえか。魚かよ‥‥‥これをギルドは黙認しているのか??」
「だって仕方ないじゃない。領主様の意向なんだから。良いお金になるのよ。それに、その売り上げの多くは――」
「多くは?」
「うちや他の商会を通じて貧困街に住む住人の救済に充てられているわ」
「はあ? つまり何か?この肉屋ってのは自分がやったことのツケを帳消しにするために、金をばら撒いて黙らせてるってか??それで良いのかよ??」
ルカのきつい視線がロンに向けられた。
そんなこと言われなくても分かっている、そんな顔だった。
ただ、あまりの視線の鋭さに、ロンは少しばかり引いてしまいそうになるが。
「ねえ、そんな事言われたくないの理解してる? 上からやってきて、この下のことにいちいち、口出ししないでよ。あなたは彼女たちをただ黙って‥‥‥埋葬してやりなさいよ。それが一番静かで、賢明な方法だわ」
「助言、か。それがいいかもしれないな。だけどな‥‥‥俺が術を解けば死ぬ、なんて簡単なもんじゃないんだが?」
「えっ、じゃあ、彼女たちの認識ってまさかの――生き返ったけど、生きているって感覚なの?」
ロンは静かにうなづく。
だから、死霊術で蘇生というか。こんなことをしたくなかったんだ、とも静かに一言、付け加えて。
「呆れた‥‥‥。それって犯罪じゃないのーよく出来るわねー人の人生を扱うのよ?」
「だから、死霊術はおいそれと使えないんだよ。理解してくれ」
「肉屋と変わらないじゃない‥‥‥。死んだ人間を勝手に生き返らせておいて、それは本当の人生じゃない。お前は偽物だって言われても本人には意識があるんでしょ? それで死ねとか、生殺与奪の権利があるとか言われたら、あなたどんな気分になるのよ!?」
「いや、待てよ。俺はそんな話をしているんじゃない。あの子たちが本来過ごせたかもしれない人生を過ごさせてやりたいだけだ!!」
なら。
と、ルカは強い意思を持った瞳で言った。
「それなら、あなたが最後まで責任を持つべきだわ。妻にするなり、愛人にするなりどうでもいいけどちゃんと面倒見てあげて」
「それが出来れば苦労してない。それにまだ話があるんだ聞いてくれるか?」
「まだあるの? そういえば、残りの三人はどうしたのよ‥‥‥彼らは五人だったはず」
「ああ、だからその話だ。まだ生きてたとはな‥‥‥」
「生きていた――???」
ロンは、いや、アーチャーはパルド支部の総合ギルドの入り口をほら、と顎で示した。
そこにはどうやったのか、全身傷だらけで満身創痍のリーファたちがよろめきながら、助けを求めるようにして転がり込んで来たからだった。
「あ! あいつだ!! おい、お前っ!! よくも騙してくれたな!! おいっ、聞いているのか、そこの死霊術師!?」
アーレンが剣を引き抜いてホールの中にいる人々を押し退け、こちらにやって来ようとしていた。
いきなり引き抜かれた白刃に、周囲から悲鳴が上がり慌てて警備員がそれを取り囲むようにしている。
「なんだよ!? 放せって、俺らは被害者なんだ! あいつだよ、あの死霊術師がハメやがったんだ!!」
「そうだ!! 見ろよ、この傷を。可哀想にリーファのやつ、ああ‥‥‥リーファ? おい、大丈夫か? 誰か、助けてくれよ、なあ!! おい、そこの治療師!! 早くこの傷を治してやってくれ!! なあ!!!」
「え? あ、あーいやしかし‥‥‥俺、か?」
「そうだよ、お前だよ!! 早くしろよ、そこの神官の女、あんたでもいい!! 助けてくれよ、俺たちはあの死霊術師が張った罠に嵌められたんだ!!」
大した言いがかりだ。
まあ、生きていたのは予想外だった。
あのまま、大人しくスケルドラゴンのエサにでもなっておけば良かったのに。
アーチャーはそう心で呟くと、取り押さえれられたアーレンに軽く手を振ってやる。
「ねえ、何やらかしたの?」
「え? 俺は何もしてないよ。ただ、俺と合流する前にスケルドラゴンの一体を討伐しようとして、しくじり、あの二人は一度死んだんだ」
「え?? あなたたち、合流しなかったの? それって契約違反――」
「まあ、聞けよ? それだけなら別に問題はなかった。二人を俺が復活させる前の死体の時にだ。その――肉屋に売ろうって相談してたんだよ。あいつらは。だから、置き去りにしたのさ」
「嘘ッ!? 証拠はあるの‥‥‥?」
ロイの仮面をつけたまま、嘘だと思うなら聞いてみろよ、と二人を指差す。
「確認したいけど‥‥‥あなたが術で証言を変えているとも限らないわ」
「なら、魔力や術を遮断する結界の中で聞いたらどうだ? 俺が術を解けばどうこうって話はしたが、それは問題ない」
「なんで問題ないのよ? あの子たち、あなたの術の支配下にあるんじゃないの??」
「違う。俺がかけたのは、肉体の再生をつかさどるとこに、そのまま再生した状態を保てって命じているだけだ。もし俺が死んでもそれは解けないし、肉体の限界。つまり、元の寿命だとか死ぬほどの怪我をすれば死んでしまう。術を解くっていうのは――命じているそれを撤回するだけだ」
「‥‥‥そうなると、どうなるの?」
「そりゃあ、死ぬよな? 肉体の機能を停止するんだから」
はあ、もう頭が痛くなるわ。
ルカはそう言うと、二人を招き寄せた。
もっと端的にアーチャーのした証言が嘘かどうかを確認する方法がある。
そう言い、一枚の紙を取り出した時――後方では治癒術師だの神官だのに回復してもらったリーファが大声でアーチャーに向かい怒鳴り声を上げたのだった。
「そうでしょ? 同じ獣人として、もし自分がそうされたらって思ったら‥‥‥恐怖で死にたくなるわ」
そのチラシにあったもの。
臓腑を分かりやすく簡素に描き、その下に『蒼狼族の王女の解体ショー開催! その他の王族の出演あり』と書かれている。さらには追加で、その後に肉のバラ売り、もしくは単体での販売も可‥‥‥と。
「展覧会とは名ばかりの、解体ショーじゃねえか。魚かよ‥‥‥これをギルドは黙認しているのか??」
「だって仕方ないじゃない。領主様の意向なんだから。良いお金になるのよ。それに、その売り上げの多くは――」
「多くは?」
「うちや他の商会を通じて貧困街に住む住人の救済に充てられているわ」
「はあ? つまり何か?この肉屋ってのは自分がやったことのツケを帳消しにするために、金をばら撒いて黙らせてるってか??それで良いのかよ??」
ルカのきつい視線がロンに向けられた。
そんなこと言われなくても分かっている、そんな顔だった。
ただ、あまりの視線の鋭さに、ロンは少しばかり引いてしまいそうになるが。
「ねえ、そんな事言われたくないの理解してる? 上からやってきて、この下のことにいちいち、口出ししないでよ。あなたは彼女たちをただ黙って‥‥‥埋葬してやりなさいよ。それが一番静かで、賢明な方法だわ」
「助言、か。それがいいかもしれないな。だけどな‥‥‥俺が術を解けば死ぬ、なんて簡単なもんじゃないんだが?」
「えっ、じゃあ、彼女たちの認識ってまさかの――生き返ったけど、生きているって感覚なの?」
ロンは静かにうなづく。
だから、死霊術で蘇生というか。こんなことをしたくなかったんだ、とも静かに一言、付け加えて。
「呆れた‥‥‥。それって犯罪じゃないのーよく出来るわねー人の人生を扱うのよ?」
「だから、死霊術はおいそれと使えないんだよ。理解してくれ」
「肉屋と変わらないじゃない‥‥‥。死んだ人間を勝手に生き返らせておいて、それは本当の人生じゃない。お前は偽物だって言われても本人には意識があるんでしょ? それで死ねとか、生殺与奪の権利があるとか言われたら、あなたどんな気分になるのよ!?」
「いや、待てよ。俺はそんな話をしているんじゃない。あの子たちが本来過ごせたかもしれない人生を過ごさせてやりたいだけだ!!」
なら。
と、ルカは強い意思を持った瞳で言った。
「それなら、あなたが最後まで責任を持つべきだわ。妻にするなり、愛人にするなりどうでもいいけどちゃんと面倒見てあげて」
「それが出来れば苦労してない。それにまだ話があるんだ聞いてくれるか?」
「まだあるの? そういえば、残りの三人はどうしたのよ‥‥‥彼らは五人だったはず」
「ああ、だからその話だ。まだ生きてたとはな‥‥‥」
「生きていた――???」
ロンは、いや、アーチャーはパルド支部の総合ギルドの入り口をほら、と顎で示した。
そこにはどうやったのか、全身傷だらけで満身創痍のリーファたちがよろめきながら、助けを求めるようにして転がり込んで来たからだった。
「あ! あいつだ!! おい、お前っ!! よくも騙してくれたな!! おいっ、聞いているのか、そこの死霊術師!?」
アーレンが剣を引き抜いてホールの中にいる人々を押し退け、こちらにやって来ようとしていた。
いきなり引き抜かれた白刃に、周囲から悲鳴が上がり慌てて警備員がそれを取り囲むようにしている。
「なんだよ!? 放せって、俺らは被害者なんだ! あいつだよ、あの死霊術師がハメやがったんだ!!」
「そうだ!! 見ろよ、この傷を。可哀想にリーファのやつ、ああ‥‥‥リーファ? おい、大丈夫か? 誰か、助けてくれよ、なあ!! おい、そこの治療師!! 早くこの傷を治してやってくれ!! なあ!!!」
「え? あ、あーいやしかし‥‥‥俺、か?」
「そうだよ、お前だよ!! 早くしろよ、そこの神官の女、あんたでもいい!! 助けてくれよ、俺たちはあの死霊術師が張った罠に嵌められたんだ!!」
大した言いがかりだ。
まあ、生きていたのは予想外だった。
あのまま、大人しくスケルドラゴンのエサにでもなっておけば良かったのに。
アーチャーはそう心で呟くと、取り押さえれられたアーレンに軽く手を振ってやる。
「ねえ、何やらかしたの?」
「え? 俺は何もしてないよ。ただ、俺と合流する前にスケルドラゴンの一体を討伐しようとして、しくじり、あの二人は一度死んだんだ」
「え?? あなたたち、合流しなかったの? それって契約違反――」
「まあ、聞けよ? それだけなら別に問題はなかった。二人を俺が復活させる前の死体の時にだ。その――肉屋に売ろうって相談してたんだよ。あいつらは。だから、置き去りにしたのさ」
「嘘ッ!? 証拠はあるの‥‥‥?」
ロイの仮面をつけたまま、嘘だと思うなら聞いてみろよ、と二人を指差す。
「確認したいけど‥‥‥あなたが術で証言を変えているとも限らないわ」
「なら、魔力や術を遮断する結界の中で聞いたらどうだ? 俺が術を解けばどうこうって話はしたが、それは問題ない」
「なんで問題ないのよ? あの子たち、あなたの術の支配下にあるんじゃないの??」
「違う。俺がかけたのは、肉体の再生をつかさどるとこに、そのまま再生した状態を保てって命じているだけだ。もし俺が死んでもそれは解けないし、肉体の限界。つまり、元の寿命だとか死ぬほどの怪我をすれば死んでしまう。術を解くっていうのは――命じているそれを撤回するだけだ」
「‥‥‥そうなると、どうなるの?」
「そりゃあ、死ぬよな? 肉体の機能を停止するんだから」
はあ、もう頭が痛くなるわ。
ルカはそう言うと、二人を招き寄せた。
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