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第四章 魔族と死霊術師
「姫」と謎の遺跡
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「ねえ、アーチャー。それはなに? この――ロアの土地の下に大きな黒いものがある。これは??」
「うん? ああ、それか。いや――分からないというか難しいな。それは俺の魔法を弾いた後だよ」
「魔法を弾いた‥‥‥?? どういう――こと??」
シェナはその地図の黒い部分を指でなぞっていく。
岩山が多いその土地のうえにくっきりと浮かび上がった長方形の巨大な何か。
そこには楕円形の輪と数字も描かれていた。
「俺の死霊術は普通の魔法とは違う。普通の魔法使いが使う魔法はせいぜい、この世界そのものの表面にある魔素を利用する。魔素はすべての原点だからな。俺の魔法は死につながる。死は世界のすべてを構成する闇の波ってのがあってな。それを利用するんだよ。でもそれすらも遮断するとなると、数は限られてくるんだ」
「全然わからないよ、アーチャー? それにこの楕円は何? 数字は何?」
「楕円は高さを表してるんだよ。つまり、これは深さも意味をするってことかなあ。地下深く、ダンジョンがあると聞いてもいるし、鉱山の開発よりも多くの財宝があったりしてな?」
「まさか‥‥‥メディウムの大迷宮??」
「かもしれない。俺はあの――」
アーチャーの示す先には地上世界から降りてくるあの尖塔があった。
地上側の入り口が見えないそれを見上げ、あの部分ではなかったことを再認識する。
本物は地下のさらに地下にあったのだと。
「尖塔の見えない先にある地上と地下の天井部分。てっきり、その合間にあるものがメディウムの大迷宮だと思ってたんだが‥‥‥。お前は何か知らないか?」
「うーん。そんな話聞いたことがない。シェナが知らないだけかもしれないけど」
「そうか。やっぱり知る人間に会うしかないな‥‥‥」
「それより、これどうやって作ったの?? 魔法を弾いたとか、光を使ったとか。まるで理解出来ない」
「まあ、そうだろうな。魔法を弾く要因は幾つかるけど、その多くは俺よりも強い力がそこにある場合が多い。そんなレベルのものになると、創造できる神格を持つ存在になる。何かを生み出す能力は神にはある。魔王にも多分ある。世界そのものを創造する能力は、はるかな古代の神にしかない。そのレベルの魔王や神が地下世界にいるってのはあり得るが、これだけ大きな反応を見せるとなると。ほら、上にあるだろ??」
上?
シェナはアーチャーの指の先に視線をやる。
天空に見えるそれは太陽に天蓋の地上世界の底となる大地に‥‥‥このタイレス辺境国を瘴気から保護しているあるものがある。
「え? あれって、魔人様の結界」
「あんなデカイ結界、地上世界にもな魔人様が産まれた時代の存在か、彼に並ぶ力の持ち主か、あるいはなにかの結界か。案外、遺跡ってのも間違っていないかもしれないな?」
「でも誰が作ったの、そんな物。意味がない‥‥‥」
「俺が天空大陸にいた時に調べた限りじゃ、暗黒神ゲフェトが作ったとか、そうじゃないとか。まあ、この魔界は元々、北の天空に存在した大陸が落ちて来たもんらしいからな。カイネ・チェネブ神が存在する前からあったのは確実だ」
「嘘、それは伝説のはず」
「本当だ。信じられないかもしれないが、灰狼の生き残りも地下世界にはいたぞ」
「‥‥‥あり得ない。灰狼は死滅したはずなのに。黒狼もそう。聞いたことがない」
だよな。俺もそう思っていた。
あの双子に会うまでは。
しかし、いたんだよなあ。
どんな偶然なんだか‥‥‥
「会ったんだ。この地下世界で助けられなかった双子の灰狼の少女たちに。今はラーズと共に地上にいる」
「本当に?? そんなことがあるなんて‥‥‥あなた大丈夫??」
「大丈夫?? どういう意味だ? ‥‥‥怪しいってことか?」
シェナは重苦しい表情でうなづいていた。
アーチャーが地下世界にやってきた時にそんなに都合よく、絶滅したとされる種族と出会うことがあるものなのか。
そう言いたいらしい。
しかし、それを言うならシェナとの出会いもまた偶然に等しいのだ。
まるで誰かが作為的におぜん立てしたかのような、そんな出会いなのだから。
「ま、いいじゃないか。いつかは分かるはずだ。これが良い出会いなのか、悪い出会いなのか。神じゃない人間は流されていくしかない。分からないなら、やっぱりシェナの父親に会わなきゃ無理と俺は思うぞ?」
「会うのはいいけど。でもその地図はアーチャーが渡さないと無理。父上様はシェナを大事にしない。戻って死ぬのは嫌。どこかに売られるのも嫌」
「俺が‥‥‥? なら、お前はどうするんだ。俺に救われ、解放されたとしてもいまはまだ、俺の管理下だ。一族を救う英雄にもなれない、ロアの地位だって上げることができないぞ? それでもいいのか??」
やっぱり理解していない。
シェナはそろそろ移動したいとあくびをする。
どうして彼はこんなにも頭が固いのだろう。
ついて来い、ただそれだけでいいのにその一言が言えない。
悪い人。
蒼き狼の姫はそう、あきれてぼやいていた。
「ふん‥‥‥」
「なんだよ?」
「別に。ただ、シェナもアーチャーが考えているその危険に巻き込もうとしてるのが嫌い。最低」
「なんで巻き込む前提なんだ‥‥‥??」
「だって、最後まで一緒にシェナは行く。もう決めた」
「なんだそりゃ? 俺は認めていないぞ。俺の家族でもなんでもない。用事が終わればマスター・ラーズとイライアの元に転送する。それで安全だ」
「最後までついて来いって言わないの!?」
「言う理由がない。俺にはやるべきことがある。誰かを巻き添えにする気はないしなあ。俺に等しい能力が無きゃ、旅の仲間にはできないよ、シェナ」
「能力‥‥‥」
自分にはそんなものはない。
そうシェナは理解しているらしい。
魔族の習慣が役に立つとは皮肉だとアーチャーは思っていた。
大事な存在を一度は失い、次はその習慣が救うのかもしれないのだから。
「ま、そんなとこだ。地図は二つ、だが蒼狼族の王に贈るのは普通の方だ。シェナ、一族を救う気はないか?」
「一族は救いたいけど。それはアーチャーがすればいい。そうすれば新しい領主様としてタイレス城に行った時には蒼狼族はアーチャーの下にいる。そうじゃない?」
これは確かに宝物の地図かもしれない。
でもこれを作れるのはアーチャーだけ。
これを扱えるのはシェナじゃない。そんな才能はない。
ただ、彼を王族に迎えることは自分にも出来る。
シェナはある案を口にしようとしていた。
「うん? ああ、それか。いや――分からないというか難しいな。それは俺の魔法を弾いた後だよ」
「魔法を弾いた‥‥‥?? どういう――こと??」
シェナはその地図の黒い部分を指でなぞっていく。
岩山が多いその土地のうえにくっきりと浮かび上がった長方形の巨大な何か。
そこには楕円形の輪と数字も描かれていた。
「俺の死霊術は普通の魔法とは違う。普通の魔法使いが使う魔法はせいぜい、この世界そのものの表面にある魔素を利用する。魔素はすべての原点だからな。俺の魔法は死につながる。死は世界のすべてを構成する闇の波ってのがあってな。それを利用するんだよ。でもそれすらも遮断するとなると、数は限られてくるんだ」
「全然わからないよ、アーチャー? それにこの楕円は何? 数字は何?」
「楕円は高さを表してるんだよ。つまり、これは深さも意味をするってことかなあ。地下深く、ダンジョンがあると聞いてもいるし、鉱山の開発よりも多くの財宝があったりしてな?」
「まさか‥‥‥メディウムの大迷宮??」
「かもしれない。俺はあの――」
アーチャーの示す先には地上世界から降りてくるあの尖塔があった。
地上側の入り口が見えないそれを見上げ、あの部分ではなかったことを再認識する。
本物は地下のさらに地下にあったのだと。
「尖塔の見えない先にある地上と地下の天井部分。てっきり、その合間にあるものがメディウムの大迷宮だと思ってたんだが‥‥‥。お前は何か知らないか?」
「うーん。そんな話聞いたことがない。シェナが知らないだけかもしれないけど」
「そうか。やっぱり知る人間に会うしかないな‥‥‥」
「それより、これどうやって作ったの?? 魔法を弾いたとか、光を使ったとか。まるで理解出来ない」
「まあ、そうだろうな。魔法を弾く要因は幾つかるけど、その多くは俺よりも強い力がそこにある場合が多い。そんなレベルのものになると、創造できる神格を持つ存在になる。何かを生み出す能力は神にはある。魔王にも多分ある。世界そのものを創造する能力は、はるかな古代の神にしかない。そのレベルの魔王や神が地下世界にいるってのはあり得るが、これだけ大きな反応を見せるとなると。ほら、上にあるだろ??」
上?
シェナはアーチャーの指の先に視線をやる。
天空に見えるそれは太陽に天蓋の地上世界の底となる大地に‥‥‥このタイレス辺境国を瘴気から保護しているあるものがある。
「え? あれって、魔人様の結界」
「あんなデカイ結界、地上世界にもな魔人様が産まれた時代の存在か、彼に並ぶ力の持ち主か、あるいはなにかの結界か。案外、遺跡ってのも間違っていないかもしれないな?」
「でも誰が作ったの、そんな物。意味がない‥‥‥」
「俺が天空大陸にいた時に調べた限りじゃ、暗黒神ゲフェトが作ったとか、そうじゃないとか。まあ、この魔界は元々、北の天空に存在した大陸が落ちて来たもんらしいからな。カイネ・チェネブ神が存在する前からあったのは確実だ」
「嘘、それは伝説のはず」
「本当だ。信じられないかもしれないが、灰狼の生き残りも地下世界にはいたぞ」
「‥‥‥あり得ない。灰狼は死滅したはずなのに。黒狼もそう。聞いたことがない」
だよな。俺もそう思っていた。
あの双子に会うまでは。
しかし、いたんだよなあ。
どんな偶然なんだか‥‥‥
「会ったんだ。この地下世界で助けられなかった双子の灰狼の少女たちに。今はラーズと共に地上にいる」
「本当に?? そんなことがあるなんて‥‥‥あなた大丈夫??」
「大丈夫?? どういう意味だ? ‥‥‥怪しいってことか?」
シェナは重苦しい表情でうなづいていた。
アーチャーが地下世界にやってきた時にそんなに都合よく、絶滅したとされる種族と出会うことがあるものなのか。
そう言いたいらしい。
しかし、それを言うならシェナとの出会いもまた偶然に等しいのだ。
まるで誰かが作為的におぜん立てしたかのような、そんな出会いなのだから。
「ま、いいじゃないか。いつかは分かるはずだ。これが良い出会いなのか、悪い出会いなのか。神じゃない人間は流されていくしかない。分からないなら、やっぱりシェナの父親に会わなきゃ無理と俺は思うぞ?」
「会うのはいいけど。でもその地図はアーチャーが渡さないと無理。父上様はシェナを大事にしない。戻って死ぬのは嫌。どこかに売られるのも嫌」
「俺が‥‥‥? なら、お前はどうするんだ。俺に救われ、解放されたとしてもいまはまだ、俺の管理下だ。一族を救う英雄にもなれない、ロアの地位だって上げることができないぞ? それでもいいのか??」
やっぱり理解していない。
シェナはそろそろ移動したいとあくびをする。
どうして彼はこんなにも頭が固いのだろう。
ついて来い、ただそれだけでいいのにその一言が言えない。
悪い人。
蒼き狼の姫はそう、あきれてぼやいていた。
「ふん‥‥‥」
「なんだよ?」
「別に。ただ、シェナもアーチャーが考えているその危険に巻き込もうとしてるのが嫌い。最低」
「なんで巻き込む前提なんだ‥‥‥??」
「だって、最後まで一緒にシェナは行く。もう決めた」
「なんだそりゃ? 俺は認めていないぞ。俺の家族でもなんでもない。用事が終わればマスター・ラーズとイライアの元に転送する。それで安全だ」
「最後までついて来いって言わないの!?」
「言う理由がない。俺にはやるべきことがある。誰かを巻き添えにする気はないしなあ。俺に等しい能力が無きゃ、旅の仲間にはできないよ、シェナ」
「能力‥‥‥」
自分にはそんなものはない。
そうシェナは理解しているらしい。
魔族の習慣が役に立つとは皮肉だとアーチャーは思っていた。
大事な存在を一度は失い、次はその習慣が救うのかもしれないのだから。
「ま、そんなとこだ。地図は二つ、だが蒼狼族の王に贈るのは普通の方だ。シェナ、一族を救う気はないか?」
「一族は救いたいけど。それはアーチャーがすればいい。そうすれば新しい領主様としてタイレス城に行った時には蒼狼族はアーチャーの下にいる。そうじゃない?」
これは確かに宝物の地図かもしれない。
でもこれを作れるのはアーチャーだけ。
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