ファンタジーに見える世界にステータスは必要ですか? 

星ふくろう

文字の大きさ
3 / 9

2 ツリーロードと針の山

しおりを挟む
「あ、眩しいー‥‥‥」
 え?
 わたしは例の木の枝の上でうつらうつらしてたみたい。
 あーよかった。
 ベルトと胸のとこに、その辺に絡まってたツタ引きはがして括り付けといて。
 まあ、無い胸なんで‥‥‥もう、いいや。
 どうせ、冬場なんてニット帽に髪詰めてジーンズの上下とブーツで歩いてたら男子に間違われるような。
 そんな体型ですから‥‥‥。
「眩しいよお、ななせ、もう眠たいのに。
 いまはー‥‥‥朝の8時。
 ということは? 前に見た時が11時だったから。
 この世界に来てからえっとー‥‥‥」
 待ってよ?
 あのクジラに飲みこまれたのが確か23時過ぎで。
 その次に確認したのがさっき言った11時過ぎ。
 で、いまは8時過ぎ。
 間違ってなければ、地球時間で32時間経過してからの陽光が‥‥‥あれ?
 なんで前方が明るいの?
 んんんんん!?
 だっていま密林にいて、岩山は後ろでーー
 前は草原、のはず。
 腕時計で方角みても後ろがほぼ東。
 で、太陽は南?
 うん?
「あれ?
 なんで西から?
 おかしいなあ。
 普通、東からのはず‥‥‥てか、めっちゃ暑いんですけどー‥‥‥」
 いま何度?
 腕時計には温度計もついてる。
 え!?
 これで26度???
 湿度は低いのに??
「なんで?
 意味わかんないーーーあ、まさかの‥‥‥楕円形の頂点付近ですか、ここ?」
 ということは太陽と月の間に挟まれててすっごいうっすい状態ってこと?
 あまりにも意味がわからないので、ノートに星図みたいなものを描いて見る。
 月は4つ。
 赤、青、オレンジ、紫。
 それが、
 赤、青、紫、オレンジに変化した。
 で、わたしはここで立てた仮説が、紫の月が大きすぎるから、オレンジが移動した。
 つまり、赤、青、紫、オレンジの配置でいい。
 そう考えてた。
 で、岩山と密林、草原をそこに描いてみる。
「あーあつい‥‥‥でも我慢しよ」
 あとは太陽だ。
 太陽も普通の地球のじゃあない。
 白い。白色矮星ってやつだ。
 目が悪くならないかなー??
「あ、そうだ、ななせ思い出したよ!!!
 サングラスあるじゃん!」
 女子必須アイテム!!!
 二種類あるんだけど。そのうちの1つ。もう1つはアー‥‥‥パパがくれたRay-banです‥‥‥。
 いまかけたのはあれね。
 化粧とかしてない時用の、縁が目の周りより大きいやつ。
 これ、お泊りと化した時に誤魔化せるんだよね、お泊りーー
「あー、やっぱり悲しい。
 お父さーん、ななせ寂しいよーーー」
 ああ、もういいから。
 わかったから。病むからやめよ、ね、ななせ?
 今は太陽のこと考えなきゃ。
 あれ、おかしいなあ。
 どんなに考えても太陽が西から登るって理解できない。
 1時間経過。
 あ、もしかして自転が違う?
 ってことは、月もあれ?
 紫、オレンジ、青、赤じゃなくて。
 単純にオレンジの公転軌道が紫より内側になっただけ??
 確かに、金星は自転が地球とは逆だから太陽は西から登る‥‥‥。
「なんで!?
 ずるいよ!! ななせの1時間帰してよ――!!!」
 うん、よく言ったわたし。
 でもあれだなあ、これじゃここがこの太陽系の第何番目の惑星なのかすらわかんない。
 楕円形なのか、丸なのか、もしかしたら、中世ヨーロッパ風に真ん中からぶった切られてたりして‥‥‥。
「そんなわけないよね。
 でも、そうなると太陽が1つって可能性もないかもしれない。
 だって、ここの木。
 全部、北側にコケがないもんね。
 なんで?
 樹木って北側に湿った湿気とか好むやつが生えるんじゃなかった?
 と思うけど。なら西から東だと、南側?
 ん?
 うーん‥‥‥なんか南側の方の枝が太い。
 それにーー」
 下に降りて確認しないとわかんないけど。
 どうも花とかも西だけじゃなくて、南側にも向いてるやつ多数ーー
「これ、めっちゃ嫌な予感。
 まさかの二重連星太陽とかーー」
 あったら、ここ灼熱地獄なるんじゃない?
 でも、密林にはサングラス外してみてるけど。
 焼け焦げた後とか、まあ半径5メートル範囲だけど感じない。
 っていうかこれって表現としてはあれかな?
 わたし、視えるんです!!
 的な心霊現象じゃないけど。そんな感覚。
「うーん、どうしよ。
 この太陽、もしかしたら西から上がって南の方へ落ちるのかも。
 その時の距離が近くなるなら、やっぱり楕円形」
 わたしは適当なイメージ図を描いてみる。
「ななせが思うに!
 この惑星は楕円形。
 で、自転周期はわかんない、と。
 公転周期もわかんない。数週間かかるかなあ?
 北と東に行ったら、これどっちかはずっと闇なんじゃないかな?
 少しだけ南の方角が太陽に近いんだね。だから、木も花もそっち重視なんだ。
 ということはーーーななせは、北に逃げないとバーベキュー???」
 それ美味しくなさそうだなあ、とわたしは思った。
「それより、太陽さん。本当に1つですかーーー???
 白色矮星ーーなんだったけ?
 ななせ、オバカだもんねえ‥‥‥。
 あれ、なんのSFの小説だったかなあ? 太陽の2倍以上になったら重力崩壊とか書いてた記憶」
 わたしは頭の中のSF小説の引き出しを必死に開けては締め開けては締め‥‥‥。
「あー!!!
 思い出した。うん、思い出したよ、ななせ。
 1.4倍以上でなんかになるんだ。でもなんだっけ?
 もういいや。
 それより、どうしよ。
 こんなに暑いと、集めたあの木の実もチョコも溶けちゃうし。
 どっかに逃げる場所‥‥‥」
 おりるしかない、んん??!
 この時わたしは気が付いた。
 というか、レーダー?の範囲内。
 ようは半径5メートル圏内に、なんで昆虫みたいなやつの反応しかないの? って。
 昨夜はそれでも、小鳥とか、あんまり思い出したくないけど。 
 蛇みたいなのとか。
 地上だけじゃなくて、この樹上でも遭遇してた。
 それがいまは気配すらない。
「こういう場合は、えーと‥‥‥
 1.なんかめっちゃ強い捕食動物がいる。
 2.なんかめっちゃあぶないことがある。
 3.なんかめっちゃヤバいやつが寝てたりするからみんな逃げた。
 さて、どれでしょーーー???」
 わたしが思うに、こういう時の映画とかだと‥‥‥上、に???
 エイリアンとか、あれ?
 いない。よじ登ってみてもいない。
 それよりもなんだこれ。
 木の程度高いやつ同士が、無数のツルやツタで繋がってて。
 ツリーハウスならぬ、ツリーロードみたいになってる。
「これ、気を付けたら歩けそう?
 ななせ、死んだりしない???」
 わたしはめっちゃビビりなのでーー
 そろーっと足を乗せて弾力確かめて、両足乗せつつ、両手で上の木の枝掴んで‥‥‥。
「歩けそう、ななせ、いけるかな?」
 そろーっとそろーっと歩き出してみた。
「うん、いけるね。
 45キロ、洗濯板万歳! あー、ななせ、悲しい‥‥‥」
 わたしも悲しい。
 特に洗濯板はやめようよ、わたし。
 無いのは、否定しないからさ。ね?
 そんなことを思いながら、とりあえず北側へと避難することにした。
 あのバカクジラめ‥‥‥。
 捕鯨船とか売ってないかなー?
 でも、あれって鱗だったよね。
 鱗のあるクジラなんている?
 地球外生命体、かなあ?
 まあ、いいや。このツリーロード何気に楽しいよ。
 それに、上の広葉樹の枝がいい感じに日差しを抑えてくれる。
 あ、そうだ。
 帽子だけ被っておこう。
 髪もまとめて入れちゃおう。
 もっとショートにしとけば良かったなあ。そんな事を思いながら、タートルの販促キャップに髪を詰め込んで。
 これでよし。
 そんなこんなで、時間は11時。
 34時間経過。
 で、この密林はやっぱり北側になると木々の生い茂りも少なくなっていくし、そうなの。
 わたしのレーダー(もうこう呼ぶことにした!!!)の範囲にあれだけ反応なかったいろんなもの。
 まあ、地球の動物じゃないけど、それに似た存在が少しずつ映りは消え映りは消え‥‥‥。
「なんか、ななせが避けられてるような気がするの、気のせいかな???」
 15時くらいになると、もうツリーロードは無くなってた。
 そして、岩山と少しばかりのあれだ、えっとなんだっけ。
 あのーーーあ、そうそう。
 西部劇なんかで見るようなサボテンっぽいやつとか。
 枯れ枝みたいだけど、一応、生きてるやつとか。
 そんなのばっかりになって来て。
「こうなってくると、毒ヘビとか出そうだけど。
 なんで、ななせが近付いていくと逃げてくのかなーーー???」
 そう、そうなんだよね。
 わたしがあ、なんかいる!
 とか思って、そーって近付いていくと。
 ちゃんと風上から近付いてるのに逃げてく。
 ウサギっぽいのも、ネズミ、は苦手だけど。
 そんなのもいたのに、消えてくんだよね。
 巣穴とか岩の割れ目とかに。
「これはあれかなー。さっき3つ上げたなかの、めっちゃヤバいやつがななせ。
 だったりするパターン?
 えーーーーーそれはないよお。
 ななせだってこんなとこ来たくなかったのに。
 はあ……」
 わたしは意気消沈。
 でも変な感触もあった。
 そう、空腹にならないの。
 ここに来たときはあったあの感触がない。
 それに疲れない。
 眠たくならない。
 あと‥‥‥。
「せーのっ!!!」
 ボコッ。
「うん。穴空いたね。
 昨日の夜はななせの拳が痛かったのにーー。
 これはズルい」
 いや、わたし!
 ズルいとかじゃないから!!
 これ、身体が順応して来たってこと、もしかして!???
「服、劣化とかして破れないよ、ね??」
 さっきと同じ力加減で引っ張ってみる。
 もちろん、ジーンズとかじゃないよ?
 タオルの端を、ね。
「うん、これは大丈夫、だね。
 ということは、やっぱり異世界転移? かな?
 した時に地球の物質そのものがこの世界に適合?
 それとも変異? 進化? 
 よくわかんないけど。したってことだよね。
 ではーー飛んでみよう!」
 その言葉通り。はい‥‥‥バスケのダンク決める時の感覚で飛んでみた。
 でー‥‥‥ドえらいことになりました‥‥‥。
「はっ!?
 はああああああーーーー???!!!」
 わたし、めっちゃ飛んでました。
 うん、本当に。
「すっご!
 ヤッバ!!
 なにこれ、何メートル飛んでるの!!???」
 目の前には、岩山がありーー
「あれ、飛んだってことは?
 ななせ、おち、るーーーーー!?」
 わたし、すっごい間抜けな声だしてたと思う。
 でも、着地のショックは普通。
「うっわーー。
 あそこだよね、あの岩肌の少し色違うとこ。
 何メートル飛んだかな?」
 わたしはそう思い、昨日と同じ方法で計測。
 あれー‥‥‥。
 10メートルは軽く飛んでる。
 つまり、感覚も知覚も、筋肉も‥‥‥5倍、です、か。
「超人ななせ、かあ。
 うーん、ネーミングセンスないな、没!」
 まあ、それは良いからね、わたし。
 これだと、2500メートルも250回飛べばいいことになる。
 まあ、その前にあの太陽から逃げる方法探さなきゃ。
 どうしようかなーー。
 場所変えて数回飛んで検知するか。
 それとも?
「あ、そうか。
 ななせ、了解。
 大きな断崖のとこで過ごせばいいんだ」
 いろいろ考えすぎて、簡単なことを見過ごしてた。
 目の前にある岩山。
 これ、エアーズロックじゃないもんね。
 1枚岩じゃないなら、上から大きくへこんでるというか。
 自然に削れたとこを探してそこまで走ればいいんだよ。
 人間の走る平均時速どれくらいだっけ?
 確か体育の授業で、初心者は1キロ5分とか習った気がする。
「だとすると、いまのななせは1キロ1分。
 ヤッバ‥‥‥でも息切れしないの不思議」
 本当。
 どれだけ速度を上げても息が苦しくない。
 むしろ、爽快って感じ。
 なにがどう変化したんだろ、わたしの身体。
「一番怖いのは、もし、地球に戻れた時。
 一気に老化とか‥‥‥ななせ、おばあちゃんなるね。
 まあ、それでもいっか。お父さんと同じくらいに死ねるなら、それでもいいや。
 あ、この辺り?
 でも、なにこれ、すごい‥‥‥」
 そう、わたしが目指した岩山の切れ目。
 そこには一面のーー
「落ちたら串刺しだね、これ。
 ななせ、死んじゃうよ?」
 地上からほぼ、岩山の上まで。
 なだらかな斜面には。
 一面の自然に出来たんだろう。
 えぐいくらいに鋭い、岩が無数にその部分を覆っていた。まさしく針の山状態。
 異世界生活3日目。
 正確にはまだ48時間来てないけど。
 寝て起きたのを換算してそう数えるとしたらーー
 どうも、最初のイベント開始のようだった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃった件

楠富 つかさ
恋愛
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃうし、なんなら恋人にもなるし、果てには彼女のために職場まで変える。まぁ、愛の力って偉大だよね。 ※この物語はフィクションであり実在の地名は登場しますが、人物・団体とは関係ありません。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...