正しい魔眼の使い方

星ふくろう

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第一章 愛の奇跡

落ちこぼれのフレイムス 1

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 春遠からじ、冬の空。

 私、溶目 雫うてめ しずくは欲望に魂を売った、一匹の獣だった。

 白き雪はふわふわと空から舞い降りてくる。

 大地に触れると同時にその存在を失ったかのように水の結晶へと変化していく。

 手のひらで受け止めると体温で溶ける寸前に見せるその最後の力。

 振り絞って輝かそうとする何かの様で、受け止めた方は幾分かの申し訳なさを感じてしまいそう。

 そんな事を考えながら天を見上げると、雪は視界のすべてを覆いつくしていく。

 私は異世界にいるような感覚に包まれる。

 どんな時でも、どんな天気でも空を見上げると私はここではないどこかを旅する、旅人になるのだ。

 その時はこの世にあるすべてのしがらみを捨てて、誰でもない私になれる気がする。

 空を見て、風に誘われ、大気の中に漂う匂いを喉の奥で噛みしめてこれからの行き先を決める。

 そんなことが気楽にできるのならば、と願いながら。

 現実の私は現実の道を、日常という名の異常な日々を繰り返すのだ。

 なんて、文学的な表現を頭のなかで書き上げながら、私は今日も彼を追いかけている。

 駆け抜ける、駆け抜ける、いやというほどに彼は駆け抜ける。

 いや、逃げ回るというべきなのかな。

 はらはらと落ちてくるぼたん雪のカーテンをかきわけ、まるで重力なんて存在しない。

 そんな感じに彼は宙を飛び駆け回る。

「も―お、ちょっと待ってよ―!!!!」

 私は日常となってしまったこの追いかけっこをまた始めてしまった。

 今日こそは彼を追いかける側から、取り抑えてしまう側に回るはずだったのに。

 人生はなんて思い通りにならないんだろう。

 そんなことをぼやいても仕方ないから、とにかく追いかける。

 彼は風になり、炎になり、水になり、風になって私の目を欺く。

 どうしてそんなところから出てくるの? 

 と言いたくなる場所から、街角から、部屋の天井から、教室においていた学生カバンの中から。

 どこからでも出てきて私を驚かせるのだ。

 昨日は二時限目の数学の授業が始まり、起立と礼の号令のあと。

 教科書を用意して今日は何ページからだという、教師の指示の通りのページを探して本を開いた。

 そうしたら、いきなりその顔をにょきっと突き出してきた。

「ばっ、ばか……」

 思わずこんなとこから顔を出すなんて何考えてるのよ!

 と叱責したくなるのを抑えて小さく怒りを絞り出すと。

「へへへっ」

 っと悪気のない顔をしてにんまりと意地悪そうな笑みを浮かべるのだ。

「どうした溶目うてめ、なにかいたのか?」

 数学教師の声が飛ぶ。

「あっ、すいません……。

 彼が、教科書から顔を出してきて……」

 隠しても仕方ない。

 私が授業を中段させたことに申し訳なさを感じている中で、彼はその全身を教科書から抜け出していた。

 クラスメイト全員が見ている中で、私は彼の身勝手さに怒りを感じた。

 教師とその他面々はあーあ、またか、という顔をする。
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