正しい魔眼の使い方

星ふくろう

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第一章 愛の奇跡

翼の欠けたラハミーム 1

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 塩飽 弓羽しわく ゆう、十五歳。

 産まれて物心ついた時には、両親は離婚していた。

 母親は蒸発し、片親となった父親は不器用にも十年近く弓羽を育ててきた。

 しかしここ数年、彼の命の光はその輝きを失いかけつつある。

 それを知るのは、本人とその主治医だけだったが薄々と弓羽にも感じ取れた。

 残り少ない二人だけの時間を得る為に弓羽は力が欲しかった。

 その為に魔法科がある常盤高校を受験した。

 魔法科に通える生徒はフレイムスだけではない。

 妖精と契約できないラハミームも、妖精と契約したフレイムスの社会的業務の補佐や、機械を通して妖精と交流・親交を深めることもある程度はできる。

 
 フレイムスのサポーターとなるラハミームの育成。

 それもまた、魔法科に課せられた大事な課題の一つだった。

 その冬の朝、弓羽は友人の雫を待っていつものバス停にいた。

「来ない……」

 基本的な日常として雫の遅刻は想定事項として理解しておかねばならない。

 妖精エンバーがあまりにも気まぐれで日々いろいろな場所をかけまわる

 気分によって友人をあちらこちらへと連れ回すからだ。

 アーケード街の天幕の上を這わせることもあるし。

 ビル街の隙間をクライマーのようによじ登らせることもある。

 この一年で雫は男子顔負けの体力をつけたように思う。

 元々、中学ときは陸上の競技選手だったと言っていたから運動神経は悪くない筈だ。

 それに輪をかけて体育の授業の時などに更衣室で見る彼女の肉体。

 腹筋は割れ、身体中にすり傷や裂傷がない日がない。

 まあ、それの多くはエンバーの加護で治癒されているように弓羽は思っていたけど。

 思い出すと、エンバーの雫に対する扱いは、かなりひどかった。

 ひどいというレベルではないかもしれない。

 他の精霊や妖精はまずしないようなことを、エンバーは雫に求めている。

 まるで悪魔がその魂を狙っているのか。

 それとも、雫をきまぐれを装って鍛えたいのか。

 昨年夏のビルの屋上から屋上へ飛び移りながらエンバーを追いかけて起こした事故は悲惨だった。

 地上十数階のビルからビルへと雫は飛び移ろうとしてーー

 数メートルの狭間を飛び越えれなかった。

 そのまま地上まで落下したはずの友人はでも生きていたのだ。

 あまりにも不可思議な現象だった。

 そう、大怪我を負うはずだったのに。

 路上にあったワゴン車に背中から落ちて生きていた。

 片足を骨折したと言っていたが一週間ほどで跡形もなく回復していた。

 あれは、やはり妖精の加護なのだろうか?

 教師たちは呆れてしまってエンバーの行為に注意もしない。

 多分、早く16歳を迎えて雫にしんでくれ、と思っているだろう。

 もしそうなればーー

「わたしも、死ぬのにね。
 この魔眼の契約をしたからーー」

 そう、弓羽は雫の相棒のラハミームだった。
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