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聖女誕生
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「つまり、要約するとこうですか?
さきほど、話されていた侍女の条件は本当だと。
しかし、それが見つからないと聖女の認定がなされず、しかも、その場には帝国の皇太子殿下もいる、と」
「そうなのです‥‥‥。
第二王女ミレイア様とバルド帝国のエミリオ皇太子殿下の間にはすでに仮の婚約がなされているのです」
「なされているのですって。
だってもう、婚約してるならどうでもいいじゃないですか。
聖女になろうがなるまいが?」
いや、違うよ、とシェリルの言葉に公爵が口を挟む。
「仮の婚約だ。
どうせ、聖女になれなければさっさと破棄をするつもりだろう。
東の央国イシュアあたりとでも、同じような仮婚約をしているのではないのかな?」
そうなの?
そうシェリルは男爵を見る。
男爵は申し訳なさそうに、
「恥ずかしながら。
大公国から分裂したあとの我が国の権勢は右肩下がり。
農業に適した土地と鉱山はあるものの、軍備までそれが行き届かず。
帝国に同盟を結び、軍隊を駐留させているしまつ」
「つまり、このままでは我が王国は遠くない未来に」
「帝国に吸収合併されてしまう。
そういう命運なのです」
なぜ先代の国王のときにもっと鉱山開発に力を入れなかったのか。
内政をつかさどるこの男爵は、ああ、情けない。
そういい、涙を流し始めた。
「ふうん、そういう事情ねえ。
でもそれこそ、大金貨二十枚も払う余裕、どこにあるの?」
シェリルの素朴な疑問に、男爵はびしっとかたまってしまう。
「へえ、男爵様。
このアンダーソン侯爵家をたばかろう、と?」
やはり、城内散策をして頂きましょうか?
そうシェリルは父親に提案した。
「ち、ちがうのです!!
あるのです、ちゃんと。
ただ‥‥‥」
ああ、そういうことですか。
アンダーソン侯爵が何かを理解したらしい。
「王女に対して、帝国側からの貢ぎ物がそれ以上の対価で手に入るから。
それから支払おう、と。
そういう魂胆ですな?」
脂汗をかく。
そういう比喩表現はこの男爵のためにあるんだろーなー。
そうシェリルは思っていた。
ああ、大金貨二十枚かあ。
それだけあれば、この城を改築して、さまよえるレイスたちをきちんとあの世に送り出して。
自分もどこかに小さな村でも購入して、そこの作物で生きていけるのになあ。
そんな夢がはかなく散っていく気がして、少しだけ寂しくなった。
あれ、でも待てよ?
そうシェリルは思いなおす。
見せ金用に、持ち歩いてたりしない?
このゆで卵。
一つ、脅してみるか。
「男爵様、しばし、席をはずさせていただきます」
「は?
あ、はい。
どうぞ‥‥‥」
小用かな?
まあ、受けてはくれなさそうだし、さてどうしたものか。
断られた令嬢たちを再度、当たるべきか。
そう男爵が、注がれた新しい紅茶を飲もうと口元へ運んだ時だ。
「ぶふぅっ???!!!」
彼は勢いよくそれをはきだした。
「お待たせいたしました。
当家によく出入りしております、妖魔のブラックドッグ。
名をアレク、と呼んでおります。
子犬のころからの仲ですの」
シェリルはにこやかに言うと、その子牛ほどもある妖魔を側に座らせる。
「ぶっ、ぶらっ‥‥‥!??!」
「伝承をご存知ありませんの?
古城によく降り立ち、声を交わした相手の魂を得る。
真実の瞳をもち、闇の炎を扱う。
そんな妖魔ですわ。
なぜか、数代前から棲みついておりまして。
家族ぐるみのつきあいをしております」
シェリルはにこやかに微笑んだ。
さきほど、話されていた侍女の条件は本当だと。
しかし、それが見つからないと聖女の認定がなされず、しかも、その場には帝国の皇太子殿下もいる、と」
「そうなのです‥‥‥。
第二王女ミレイア様とバルド帝国のエミリオ皇太子殿下の間にはすでに仮の婚約がなされているのです」
「なされているのですって。
だってもう、婚約してるならどうでもいいじゃないですか。
聖女になろうがなるまいが?」
いや、違うよ、とシェリルの言葉に公爵が口を挟む。
「仮の婚約だ。
どうせ、聖女になれなければさっさと破棄をするつもりだろう。
東の央国イシュアあたりとでも、同じような仮婚約をしているのではないのかな?」
そうなの?
そうシェリルは男爵を見る。
男爵は申し訳なさそうに、
「恥ずかしながら。
大公国から分裂したあとの我が国の権勢は右肩下がり。
農業に適した土地と鉱山はあるものの、軍備までそれが行き届かず。
帝国に同盟を結び、軍隊を駐留させているしまつ」
「つまり、このままでは我が王国は遠くない未来に」
「帝国に吸収合併されてしまう。
そういう命運なのです」
なぜ先代の国王のときにもっと鉱山開発に力を入れなかったのか。
内政をつかさどるこの男爵は、ああ、情けない。
そういい、涙を流し始めた。
「ふうん、そういう事情ねえ。
でもそれこそ、大金貨二十枚も払う余裕、どこにあるの?」
シェリルの素朴な疑問に、男爵はびしっとかたまってしまう。
「へえ、男爵様。
このアンダーソン侯爵家をたばかろう、と?」
やはり、城内散策をして頂きましょうか?
そうシェリルは父親に提案した。
「ち、ちがうのです!!
あるのです、ちゃんと。
ただ‥‥‥」
ああ、そういうことですか。
アンダーソン侯爵が何かを理解したらしい。
「王女に対して、帝国側からの貢ぎ物がそれ以上の対価で手に入るから。
それから支払おう、と。
そういう魂胆ですな?」
脂汗をかく。
そういう比喩表現はこの男爵のためにあるんだろーなー。
そうシェリルは思っていた。
ああ、大金貨二十枚かあ。
それだけあれば、この城を改築して、さまよえるレイスたちをきちんとあの世に送り出して。
自分もどこかに小さな村でも購入して、そこの作物で生きていけるのになあ。
そんな夢がはかなく散っていく気がして、少しだけ寂しくなった。
あれ、でも待てよ?
そうシェリルは思いなおす。
見せ金用に、持ち歩いてたりしない?
このゆで卵。
一つ、脅してみるか。
「男爵様、しばし、席をはずさせていただきます」
「は?
あ、はい。
どうぞ‥‥‥」
小用かな?
まあ、受けてはくれなさそうだし、さてどうしたものか。
断られた令嬢たちを再度、当たるべきか。
そう男爵が、注がれた新しい紅茶を飲もうと口元へ運んだ時だ。
「ぶふぅっ???!!!」
彼は勢いよくそれをはきだした。
「お待たせいたしました。
当家によく出入りしております、妖魔のブラックドッグ。
名をアレク、と呼んでおります。
子犬のころからの仲ですの」
シェリルはにこやかに言うと、その子牛ほどもある妖魔を側に座らせる。
「ぶっ、ぶらっ‥‥‥!??!」
「伝承をご存知ありませんの?
古城によく降り立ち、声を交わした相手の魂を得る。
真実の瞳をもち、闇の炎を扱う。
そんな妖魔ですわ。
なぜか、数代前から棲みついておりまして。
家族ぐるみのつきあいをしております」
シェリルはにこやかに微笑んだ。
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