放逐された間違われ聖女は世界平和に貢献する

星ふくろう

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聖女誕生

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 たまご男爵、もとい、バルド男爵はがっくりと膝を落としていまにも泣きそうな顔をしていた。
「‥‥‥めなのです」
 声がかぼそすぎて聞こえない。
「はい?」
 シェリルが近寄ってようよう聞くと、彼はぽつりぽつりと泣くように話始めた。
「だめなのです、なぜかわかりませんが。
 女神フィオナ様の神託が先月ありました。
 聖女の認定儀式に、これまで侍女の条件などありませんでした。
 しかし、いきなり。
 いきなりですよ?
 三週間前になったこの時に、爵位は侯爵家以上、しかも十八歳以下。
 そして、家柄の歴史が王家より古い。
 そんな令嬢、探しても十数人もいませんよ‥‥‥」
「それはまあーーむごい女神様もいたものですね‥‥‥」
 なんというか。
 同情を禁じ得ない。
 シェリルはそんな感じになってしまった。
 男爵のぼやきはまだ続く。
「しかも調べたら、王都近郊にはたったの六人。
 そのうちの二人までは良かったのです。
 最後の一人になってーー」
「なぜかみんな、断り出した、と?
 そういう事ですか、男爵様。
 でも、このシェリルはそのー‥‥‥。
 見ていただけば分かりますが、母上様。
 もう他界されましたけど。エルフですから。
 わたしもハーフエルフ。
 この緑の髪に赤い瞳。
 到底、聖女様には似つかわしくない侍女になりますよ?
 だって、あの女神様は…‥‥」
 男爵はうなづく。
 女神フィオナは月の女神。レギウス大公国はエルフの国だった。
 そして、エルフの信仰していた大地母神アミュエラと月の女神フィオナは犬猿の仲。
 バルド帝国とグレイシア王国にレギウス大公国が二分割された時。
 大地母神は異教として排除された歴史がある。
「その歴史をご存知で、その上で言われるならまあ‥‥‥。
 うちもフージャース伯爵にこの城を貸さなくて済むのですけど。
 貸したくないのです。真実を話しますと」
 そうシェリルはため息まじにに男爵に言う。
「それはなぜに?」
 貸せば金になるのでは?
 男爵は不思議そうな顔をする。
 もう、陽もくれたからそろそろですけど。
 そう言い、シェリルはほら、と廊下の突き当りを指差した。
「はああっ!!??」
 男爵は見てしまった。
 白い貴婦人の人影。
 いや、透明な宙をうく‥‥‥レイスを。
 死霊を。
「ああ、大丈夫ですわ。
 なぜか、家人といればいたずらも呪いも受けませんから。
 あ、そうですわね。
 全部話して頂けないのであればーー」
「い、いただけないのであれば???」
「このまま、置き去りにしていく。
 そういうのはいかがでしょうか、父上様?」
 シェリルは傍らに立つ父親に同意を求めてみる。
「うん、それはいい考えかもしれないな。
 では、男爵閣下。
 今宵は我が城の散策をお楽しみいただく、そういうことで?」
 男爵の顔は赤から真っ青へと変化していた。
「まままままって下さい!
 お願い、お願いですから。
 話します、すべてお話します。ですから見捨てないでーー!!!!!」
 親子はニヤリと意地悪く笑ったのだった。

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