121 / 221
まだ見ぬ先へとすすむため
風変わりな人
しおりを挟む
ハヨンが孟の城で生活を始めて、三日経った。相変わらず人手は足りないが、毎日の仕事にも誰がどこを担当するかがおおむね決まってきているので、秩序のある生活を送れるようになった。
客人扱いである老婆や青龍は、時折孟の町へと出かけて行くなどして、気ままに過ごしているようにも見えるが、大抵はどこにいるのかわからないので、謎に満ちたままだ。そのため、ハヨンは老婆と青龍の両方と、しっかりと話したことがない。ハヨンは何とかして青龍や老婆と、話すきっかけができないかと悩んでいた。
そんな中、ハヨンはリョンヘから召集がかかった。いつも午後から任されていた城の裏門の警備を、他の兵士に頼んで交代してもらい、約束のリョンヘの執務室に向かう。
その途中、鮮やかな碧色の衣を纏う、長身の男の後ろ姿を見つけた。束ねられた髪が振り子のように左右に揺れている。あの出立から見るに、どうやら青龍のムニルだ。彼は長身長髪で、人目を惹くような色の衣を着ているので、一目見て判別がつく。
(あの人は悪い人じゃないけれど、どう接したらいいかわからないな…)
ハヨンの周囲では、あの様に抱き締めたりする人物は母ぐらいしかいなかった。そのため、初めて人の姿で彼と会ったときに、とても戸惑った。さらに、彼、と心の中では呼んでいるものの、女性であるハヨンよりも、女の色気を纏っているような気がする。ハヨンは彼はどの様な人柄なのかを、詳しく知っているわけではないが、彼は今までに出会ったことのない様な人物だとハヨンは感じていた。
青龍の彼に話しかけようかとハヨンが躊躇っていると、ハヨンの気配に気づいたのか、彼が振り向く。
「あら、ハヨンさんじゃないの。」
「ムニルさん、こんにちは。」
彼の柔らかな笑みは、人を惹き付ける不思議な力があるのだろうか。ハヨンもつられて笑みを浮かべる。
ハヨンはムニルが佇む方へ近づいていく。その時、ムニルは何も言わなかったし、お互いに微笑んだままの状態だったが、不思議と慣れない人との気まずい空気は流れず、穏やかな静けさだった。
ムニルの隣に立ったハヨンが、何か話しかけようとする前に、ムニルが口を開く。
「もしかしてハヨンさんも王子からの招集?」
「そうなんです。もしかしてムニルさんもですか?」
そうハヨンがたずねると、ムニルは少し唇を尖らせて不満げな様子を見せる。彼のこういった仕草は本当に無邪気に見えて、嫌味がない。ハヨンは思わず、どうすれば、こうして自然と可愛らしい仕草ができるのだろう、と思わず考えてしまっていた。
「そうなのよ。せっかく孟の市場にいるおばあちゃんとお茶する約束してたのに。まぁ、大事な話なんだろうし、仕方ないけどね。」
本当に、声と体格のことさえなければ、女性そのものに思える。しかし、よくよく考えてみると、女らしい、男らしいというのは他人が勝手に決めるものであって、ムニルの独特な雰囲気は、ムニルだからこそのものなのだ。そうハヨンが勝手に解釈していると、一緒に行きましょう。とムニルからの誘われた。向かう先も同じで、断る理由もないため、二人で再び歩き始める。
「それにしても、もう茶飲み友達ができたなんて、ムニルさんすごいですね。」
「あら、ありがとう。昔から女の人に囲まれて暮らしてきたからかしらねぇ。女の人の方が友達は多いくらいなのよ。」
「お姉さんや妹さんですか?」
ハヨンは何度か姉妹が欲しいと思ったことがある。時折見かける兄弟で遊ぶ姿などを見てそれはそれは羨ましかったものだ。
するとムニルはふふふふっと意味ありげに笑う。
「さぁ、どうでしょうね。」
そうやって、うまくかわしてゆくからか、ハヨンはムニルの情報をあまり知らない。
(謎の多い人だな…)
ハヨンは先程の彼の返答をの言葉を思い返しながら首を捻るのだった。
客人扱いである老婆や青龍は、時折孟の町へと出かけて行くなどして、気ままに過ごしているようにも見えるが、大抵はどこにいるのかわからないので、謎に満ちたままだ。そのため、ハヨンは老婆と青龍の両方と、しっかりと話したことがない。ハヨンは何とかして青龍や老婆と、話すきっかけができないかと悩んでいた。
そんな中、ハヨンはリョンヘから召集がかかった。いつも午後から任されていた城の裏門の警備を、他の兵士に頼んで交代してもらい、約束のリョンヘの執務室に向かう。
その途中、鮮やかな碧色の衣を纏う、長身の男の後ろ姿を見つけた。束ねられた髪が振り子のように左右に揺れている。あの出立から見るに、どうやら青龍のムニルだ。彼は長身長髪で、人目を惹くような色の衣を着ているので、一目見て判別がつく。
(あの人は悪い人じゃないけれど、どう接したらいいかわからないな…)
ハヨンの周囲では、あの様に抱き締めたりする人物は母ぐらいしかいなかった。そのため、初めて人の姿で彼と会ったときに、とても戸惑った。さらに、彼、と心の中では呼んでいるものの、女性であるハヨンよりも、女の色気を纏っているような気がする。ハヨンは彼はどの様な人柄なのかを、詳しく知っているわけではないが、彼は今までに出会ったことのない様な人物だとハヨンは感じていた。
青龍の彼に話しかけようかとハヨンが躊躇っていると、ハヨンの気配に気づいたのか、彼が振り向く。
「あら、ハヨンさんじゃないの。」
「ムニルさん、こんにちは。」
彼の柔らかな笑みは、人を惹き付ける不思議な力があるのだろうか。ハヨンもつられて笑みを浮かべる。
ハヨンはムニルが佇む方へ近づいていく。その時、ムニルは何も言わなかったし、お互いに微笑んだままの状態だったが、不思議と慣れない人との気まずい空気は流れず、穏やかな静けさだった。
ムニルの隣に立ったハヨンが、何か話しかけようとする前に、ムニルが口を開く。
「もしかしてハヨンさんも王子からの招集?」
「そうなんです。もしかしてムニルさんもですか?」
そうハヨンがたずねると、ムニルは少し唇を尖らせて不満げな様子を見せる。彼のこういった仕草は本当に無邪気に見えて、嫌味がない。ハヨンは思わず、どうすれば、こうして自然と可愛らしい仕草ができるのだろう、と思わず考えてしまっていた。
「そうなのよ。せっかく孟の市場にいるおばあちゃんとお茶する約束してたのに。まぁ、大事な話なんだろうし、仕方ないけどね。」
本当に、声と体格のことさえなければ、女性そのものに思える。しかし、よくよく考えてみると、女らしい、男らしいというのは他人が勝手に決めるものであって、ムニルの独特な雰囲気は、ムニルだからこそのものなのだ。そうハヨンが勝手に解釈していると、一緒に行きましょう。とムニルからの誘われた。向かう先も同じで、断る理由もないため、二人で再び歩き始める。
「それにしても、もう茶飲み友達ができたなんて、ムニルさんすごいですね。」
「あら、ありがとう。昔から女の人に囲まれて暮らしてきたからかしらねぇ。女の人の方が友達は多いくらいなのよ。」
「お姉さんや妹さんですか?」
ハヨンは何度か姉妹が欲しいと思ったことがある。時折見かける兄弟で遊ぶ姿などを見てそれはそれは羨ましかったものだ。
するとムニルはふふふふっと意味ありげに笑う。
「さぁ、どうでしょうね。」
そうやって、うまくかわしてゆくからか、ハヨンはムニルの情報をあまり知らない。
(謎の多い人だな…)
ハヨンは先程の彼の返答をの言葉を思い返しながら首を捻るのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」
歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。
「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは
泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析
能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り
続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。
婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」
ひめさまはおうちにかえりたい
あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編)
王冠を手に入れたあとは、魔王退治!? 因縁の女神を殴るための策とは。(聖女と魔王と魔女編)
平和な女王様生活にやってきた手紙。いまさら、迎えに来たといわれても……。お帰りはあちらです、では済まないので撃退します(幼馴染襲来編)
弁えすぎた令嬢
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。
発端は彼女の父親が行方不明となり、叔父である父の弟が公爵邸に乗り込んで来たこと。
何故か叔父一家が公爵家の資産に手を付け散財するが、祖父に相談してもコロネに任せると言って、手を貸してくれないのだ。
そもそも父の行方不明の原因は、出奔中の母を探す為だった。その母には出奔の理由があって…………。
残された次期後継者のコロネは、借金返済の為に事業を始めるのだ。
小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる