華の剣士

小夜時雨

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揺らぎ

街での変化 參

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 山の入り口に差し掛かるまで、ハヨンとムニルは言葉を交わさなかった。この状況を把握するために、ハヨンは必死にさきほどの店主の言葉を思い返す。

「…ついに来てしまった…」

 ハヨンは枯葉を踏みしめながら、声を震わせそう言った。ぐらぐらと地面が揺れているような感覚がして、不安が込み上げる。

「そんなにのんびりとしておけないのは解っていたけど、やっぱり動揺してしまったわ…。」

 ムニルはそうため息混じりに答える。確かにいつもの彼とは違って、表情から動揺や憂いが透けて見えた。いつもの彼は笑顔でいることが多く、感情が上手く読めないため珍しい。

「…とりあえず、リョンに早く伝えないと…。急ごう」 

 町中では少しでも怪しまれないように走ることはやめていたのだが、人の気配も感じない今なら大丈夫だろう。ハヨン達は急斜面を勢いよく駆けて行った。
 リョンヘ達が待っている場所へ辿り着くと、リョンヘとソリャが穏やかに言葉を交わしていた。いつもと変わらないリョンヘの様子を見ると少しだけ心が落ち着く。その一方で、戦のことを伝えれば、彼のこの平穏は失われるのだと思うと、気が重かった。ハヨンは走るのをやめ、数歩歩く。この数歩の間、己の足がやけに重たく感じた。
 リョンヘ達はハヨンとムニルの気配に気がついたらしく、会話を止める。

「ハヨン、ムニル、お帰り。何かあったのか?顔が真っ青だぞ。」

 ハヨンは彼の声を聞いて、ざわついた心が少し落ち着いた。そして一つ呼吸を置く。少しでも落ち着いてこのことを伝えたかったのだ。

「リョンヘ様、どうやら王城から徴兵令が出たようです。戦が始まります。」

 空気が凍りついたように感じた。馬の毛を梳いていた兵士も、手を止めている。腹の底に冷たいものが流れ込んで来たように感じた。ハヨンはリョンヘがどう返してくるかわからず、緊張していた。

「そうか…。ついにな。」

 思ったよりも静かな声で返事が返ってきた。彼の目を見ると、そこには強い光があり、絶望は感じ取れなかった。

「俺は父上やリョンヤン、親しくしていた貴族や将軍達がどうなっているのか解っていないことが不安だ…。なんとかこの戦を耐えて、皆の無事だけでも確認したい。」
「耐える、とは…?」

 ハヨンは何を問うべきか迷ったが、まずはそう言った。

「私にとってこの戦は勝つことを目的とはしていない。まずは仕掛けてきた者を退却させることだ。…まぁ、状況が詳しくわからないと何ともいえないが。とりあえず、一刻も早く城へ戻ろう。」

 そこでリョンへは戦の話を切り上げた。ハヨン達はそれに倣い、買ってきた弁当をすぐさま平らげ、その場を後にしたのだった。





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