エイムの魔法植物学

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守護英雄の村編

旅する意味

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出発の朝がやってきた。エイムとシラセは、家の前でシラセの両親に見送られているところだ。

「二人とも、気を付けていってらっしゃいね」

シラセの母が心配そうに言う。

「母さん、大丈夫だよ!そんな遠くないし、俺だって何回か山のふもとまでは行ったことあるしさ!」

シラセは胸を張って答えた。

「私もついていきたいが、村がこの状態で村長の私が離れるわけにもいかない。
 二人にはすまないが、頼むよ。シラセ、男としてしっかりエイムさんを守れよ。」

シラセの父も、少し申し訳なさそうに言った。

「任せてください!絶対に原因を突き止めます!」

エイムは張り切って答える。そうして、エイムとシラセは、川の源流がある山へと向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

二人は山へ向かっている道中だ。山につくまでは穏やかな平原が続く。

「山まではどのくらいでつくの?」

「今日の夕方には山のふもとにつくぜ。
 そこで野宿して、朝になったら山に登ろう。山もそんなに高くないから、一日あれば頂上へ行ける。」

「そうなんだ、じゃあ明日には、原因がわかってるかもね!」

「ああ。異変が何か、早く突き止めないとな…
 ………ところでエイムは、何で旅をしてるんだ?」

シラセは少し顔を赤くしながら、エイムに尋ねる。どうやら女の子と話すのが慣れていない様子で、個人的なことを聞くのが少し恥ずかしいようだ。

「私は、魔法植物図鑑を完成させるために旅をしてるの。」

「魔法植物図鑑?」

「うん!私のお父さんとお母さんが作ってた図鑑で、まだ未完成なんだ。
 だから、私が絶対完成させるの!」

「そうなのか。お父さんとお母さんはどうしたんだ?」

「……うん。…流行り病でもう死んじゃったんだ。」

「え…そうだったのか………
 ……なんか、ごめん……」

シラセはばつが悪そうにつぶやいた。

「ううん、大丈夫だよ!
 もう受け入れてるし、それにお父さんとお母さんは、こんな素敵な宝物を遺してくれた。
 だから私は、お父さんとお母さんの分まで前向きに頑張るの!」

エイムは微笑みながら、決意のこもった表情でさわやかに言う。

「エイム…お前、強いな……」

シラセは心を打たれた様子でつぶやく。

「ありがと。それにね、私は私みたいに、大切な人が死んでしまって悲しむ人が、一人でも減ってほしいって願ってる。
だから、私は魔法植物をもっと研究して、病気なんかの理不尽な不幸から、みんなを少しでも遠ざけたいの!」

エイムの決意の炎は、自身の不幸な体験をほかの人には味わってほしくないという、強い原動力で燃えているようだ。

「……よし、俺も負けてられねえ!やっぱり絶対に守護英雄様のようになるぜ!!
 そんで俺も、危ない奴とか悪い奴らから、人々を守る存在になる!」

シラセも勢いづいて言った。

「すごい夢だね!シラセはなんでそんなに、守護英雄様にあこがれてるの?」

「ああ、実は秘密にしてたけどな…
 俺は守護英雄様と同じ魔法が使えるんだ!!」

「ええ!?それって本当にすごくない!?
 確か守護英雄様の魔法って、マナからいろんなものを作り出せるってものだよね?」

マナとはこの世界の、魔法の根源となるエネルギーだ。あらゆる生命が、常に微弱なマナを放っていると言われる。魔法を使える者は、この生命エネルギーともいえるマナを消費して、魔法を放つ。

「ああ、そうだ!正確には、マナの具現化・物質化ができるんだ!」

「すごいじゃん!なんでも作れるの!?」

「守護英雄様は、それはもう何でも作れたさ!
 ある話には、ひとつの街を覆うほどの大盾を作って、魔獣の攻撃を防いだってのもある!すげえだろ?
……でも、俺はそんなことできないけどな…はは…」

シラセは少し寂しそうな表情でつぶやいた。

「どういうこと?」

エイムは、少し気遣う様子で尋ねた。
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