エイムの魔法植物学

izumo_3D

文字の大きさ
11 / 32
守護英雄の村編

ピーちゃんの秘密とフラッシュバインド

しおりを挟む
エイムたちは、流れる川に沿って、山の道なき道を進んでいた。には木々が生い茂り、時々動物たちの気配も感じられる。岩がごつごつしていたり、植物が生い茂ったりと、険しい道のりのためか、二人とも言葉は少なかった。

ピーちゃんはというと、エイムの少し上をひらひらと飛んで周囲をきょろきょろと見渡している。危険がないか、警戒している様子だ。

「…なあエイム、ピー助って明らかに金属でできてるよな?
 こんな体で、羽も小さい。これで到底飛べるとは思えないんだが、これもエイムの魔法なのか?」

確かにピーちゃんの体は、深いブロンズ色の金属でできていた。左右の眼の色は青と黄色で、オッドアイになっている。フォルムは丸っこく可愛い作りで、羽は体の半分の大きさもない小さなものだ。物理的に、到底飛べるとは思えない作りだった。

「シラセ、良く気付いたね!
 実は、ピーちゃんの体は特殊な金属でできてるの!そのおかげで飛べるんだよ。」

エイムは少し誇るように答える。

「特殊な金属?」

「うん!色々なエネルギーを吸収して、放出する魔法植物があってね。
 その植物の粉末を混ぜ合わせた金属で、ピーちゃんは作られてるの!
 今、ピーちゃんは『吸収した風の力』を使って空を飛んでるんだよ!」

「ええ、そんなことができるのか!すごいなピー助!
 でも、そんなものどうやって作ったんだ?」

「私のおじいちゃんが、いろんなものを作れる職人でね。
 お父さんお母さんが取ってきた珍しい魔法植物を使って、色々便利なものを作ったりしてたんだ。
 で、私の魔法が発現してから、ぴったりの人形だって言ってピーちゃんを作ってくれたの!」

「そうだったのか…」

「ピーちゃんは色々できて、とても頼りになるんだよ!」

「ピー!」

ピーちゃんは胸を張ったように、高く鳴く。

「はは、それは頼もしいな。よろしくなピー助!」

2人と1匹は、汗をかきながらもさわやかな表情で、山を登っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


しばらく行ったところで、エイムが声を張り上げた。

「シラセ!そこ、危ない!止まって!」

「え!?お、おう!」

シラセは慌てて歩みを止める。

「どうしたんだ?」

「そこの蔦つた、魔法植物だよ…それも危険なもの。」

「ええ!そうなのか!」

シラセは驚いた様子で、すぐ前に群生していた植物を見つめた。見た感じは一般的な蔦つたに見える。

「うん。この植物は『フラッシュ・バインド』(和名:瞬またたき絡からみ)っていう魔法植物なの。
 この植物の種は、空気に触れると一瞬で爆発的に成長して、周囲のものを一気に蔦で絡めとる。
 旅人が蔦を揺らしたせいで莢さやから種が飛び出して、蔦にからめとられて身動きが取れず、そのまま死んでしまう事故が起きてるんだ…」

エイムは少し緊張した様子で話す。

「ええ!そんな危険なものだったのか!じゃあここは避けて通ろう…」

「うん。でも、この種は色々便利なことにも使えるから、ここで少し採取していこうかな!」

そういうとエイムは、コルクの付いた小瓶と水を取り出した。そして、小瓶に水をなみなみ注いでいく。


「それ、どうするんだ?」

シラセは不思議そうに聞く。

「さっき、種が空気に触れたらって言ったでしょ?
 だから、空気に触れないよう、水に浸して採取すれば大丈夫なの!」

そういってエイムは、フラッシュ・バインドの莢を、水で満たされた小瓶にそっと入れる。そして、水の中で慎重に、指で莢から種を取り出していった。種は水中にふわふわ漂っており、エイムは空気が入らないよう慎重にコルクで栓をした。

「よし、採取完了!」

「すげえな!こうやってやるのか!
 でも、どうやってフラッシュバインドだって見分けがついたんだ?
 俺にはさっぱりだったよ。」

「うん、フラッシュバインドは一瞬で成長するって言ったでしょ?
 そのせいで、植物全体が均一な色合いになるの。
 普通植物はだんだん成長するから、色合いは少しづつ違ってくる。
 だから、フラッシュバインドの違和感に気づいたの。」

「なるほどなあ!さすが魔法植物の第一人者様だぜ!」

シラセは少し茶化すように言う。

「あはは、まだそんなんじゃないよ。
 でも、普通の植物と比べて違和感のあるものがあれば、それは魔法植物の可能性が高いから、これから気を付けるといいかも!」

「おう、覚えておくよ!」

こうして二人は、さらに上流を目指して進んでいった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ“使えないスキル”を大量に入手できる世界

小林一咲
ファンタジー
戦う気なし。出世欲なし。 あるのは「まぁいっか」とゴミスキルだけ。 過労死した社畜ゲーマー・晴日 條(はるひ しょう)は、異世界でとんでもないユニークスキルを授かる。 ――使えないスキルしか出ないガチャ。 誰も欲しがらない。 単体では意味不明。 説明文を読んだだけで溜め息が出る。 だが、條は集める。 強くなりたいからじゃない。 ゴミを眺めるのが、ちょっと楽しいから。 逃げ回るうちに勘違いされ、過剰に評価され、なぜか世界は救われていく。 これは―― 「役に立たなかった人生」を否定しない物語。 ゴミスキル万歳。 俺は今日も、何もしない。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依
ファンタジー
 氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。  死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。  大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」  ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

処理中です...