エイムの魔法植物学

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守護英雄の村編

凝縮された悪意

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エイムたちは、引き続き上流を目指して進んでいた。山の中腹くらいまで来ただろうか。木々が生い茂っていた山道だったが、森にぽっかり穴が開いたように木々がないところに出た。地面も比較的平らになっており、昨日歩いた平原を彷彿とさせる。それほど広くはないが、そこには太陽の光が降り注ぐため、様々な植物が自分を誇るように色とりどりの花を咲かせていた。

「うわあ、綺麗なところだね!」

「ああ、なんかここだけ生き生きしてるみたいだな」

開けた地面の中央あたりを、さらさらと小川が流れており、エイムたちは川沿いを歩いていく。すると、エイムは怪訝そうな声で言った。

「え…何だろうあれ…」

エイムが指さす先。そこには、川沿いに群生して咲いている花があった。ただ、その花の色は真っ赤な血のようであり、茎や葉は漆黒に染まっている。その異様な色合いは、怪しい美しさを醸しながらも、それをかき消すほどの禍々しさを纏っていた。

「エイム、あれって…」

シラセが警戒した様子で言う。

「うん、あの異様な感じ。間違いなく魔法植物だ…
 慎重に近づいて観察しよう。」

エイムも、声を潜めるように言った。二人は恐る恐る近づいて、その異様な植物を観察した。近くで見ると、その異様さは際立っていた。
というのも、ところどころにわずかだが緑色が残っており、赤や漆黒は、血管が走るかのように全体に広がっていたのだ。まるで、誰かが人為的にその色を注入したかのように。

「…ものすごく嫌な感じがする…」

エイムは額に汗を浮かべながら続ける。

「魔法植物には、普通の植物にはない違和感があるって言ったでしょ。
 でも、これはそんなレベルじゃない。
 自然に発生した魔法植物とは…到底思えない…」

エイムは、忌むべき何かを目にしたかのように顔をゆがめた。

「…もしかして、誰かが作り出した魔法植物…てことか…?」

「…その可能性は、否定できない…
 とにかく、この植物が病気の原因で間違いないと思う。
 シラセ、私に何かあったら…頼むね。」

エイムは決意を固めたようにそう言い、その禍々しい何かに、手を伸ばす。

「おい、エイム!大丈夫なのか!?」

シラセは慌てて制止しようとするが、すでにエイムはそれに触れていた。

「…うん。何ともないみたい。
 とにかく、この植物を駆除して、村の人々の経過を見よう。」

エイムがそう言い終えたときだった。

「ピィィィイイイイイ!!!!!!」

ピーちゃんがけたたましく鳴いた。視線はまっすぐ、奥の森の中を見つめている。

「なんだ!?」

シラセとエイムも、慌ててそちらを向いた。

――――少し離れた森の中。

鬱蒼としている森は、日が当たるところから見ると、昼間でも不気味な闇が横たわっているように見えた。

そして。

その闇の中に、二つの大きな眼が鋭い眼光でこちらを睨んでいた。明らかに、危険なもの。
二人の背筋は一瞬で凍り、全身から汗が噴き出してくる。

「なん…だ…あれ…」

シラセは、まるで足元から大地に吸い込まれるような感覚に囚われていた。
恐怖が全身を硬直させ、緊張が体を石に変えたかのようだった。

それが、口を開いた。
その口からは、悪意が満ちたような漆黒の炎が漏れ出している。そして、その黒い炎が口の前で一点に凝縮するような動きを見せた。

――瞬間。

「ガァァアアアアアアァァアアアアア!!!!!」

大地を震わせるような咆哮が響き渡り、空気を裂く黒い閃光が、シラセへと一直線に放たれた。

「危ない!!」

エイムはとっさに、シラセの方へ駆け出していた。
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