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亡霊の家編
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エイムたちは、のどかな道を歩いていた。見通しの良い平原に、ぽつぽつと木が立ち並んでいる。空も快晴で、エイムたちのすぐ上をピーちゃんが気持ちよさそうに飛んでいた。
なんてすがすがしい日だろう。
1人の表情を除いては。
「なあエイム、あとどれくらいなんだ…?
ずっと歩き詰めで、足が棒になっちまうよ…」
シラセが疲れた表情で、力なく問う。
「んー、あと歩いてひと月くらいかなぁ?」
エイムはあっけらかんとして答えた。
「ひ、ひと月!?嘘だろ…」
シラセの額は青ざめていた。
「大丈夫大丈夫!ちゃんと途中で村にも寄って、休憩するし!
…私もお腹いっぱい、ご飯食べたいしね~♪」
エイムたちは、守護英雄の村を出発し、魔法都市フィオルナを目指していた。魔法都市フィオルナは、魔法を使える者が珍しい存在となったこの時代においても、いまだ魔法が強く息づいている都市だ。魔法を使える者が集い、その研究と鍛錬に励んでいるという。
先の一件には、魔法が強く関与していることは間違いなく、その手がかりをつかむため、エイムたちはこの都市を目指していたのだった。
「道中にもいくつか村があるみたいだから、休憩がてら例の件の痕跡がないか、調べていこう!」
エイムは張り切った様子で話す。
「とか言ってお前、どうせ新しい魔法植物の発見でも期待してんだろ?」
シラセはため息をついて言う。
というのもこの道中、エイムはことあるごとに道端の魔法植物を発見しては足を止めていたのだった。はじめはシラセも、嬉々として話すエイムの解説を興味深く聞いていたが、あまりにも何度も足が止まるので、今ではもうあきれ返っていたのだ。
「え、う…それもあるけど!もちろん事件の真相を突き止めないとってことも思ってるよ!」
エイムは慌てて答えるが、図星だったようで顔が少し赤らんでいる。
「…まあ、最初はこんな身近にも魔法植物があるんだなってことは驚いたけどさ…
ところでさ、エイムは魔法植物図鑑を完成させたいんだろ?」
「え?うん。」
「その図鑑、もうかなり分厚いけど、まだ完成じゃないのか?」
シラセは、エイムのリュックからはみ出している、深い緑色の表紙の図鑑を指さした。
「…うん、これはまだ未完成なの。
確かに、いろんな魔法植物のことが書かれているけど、その大半は言い伝えなんかをまとめたもので、実際に姿を観測できたわけじゃないんだ。」
「そうなのか。じゃあ、言い伝えの魔法植物を実際に見つけて、初めて発見したってことになるのか?」
「そういうこと。お父さんとお母さんは、いろんな言い伝えを収集しながら、実際の魔法植物を探してたんだ。
とりあえずは、大体の言い伝えは収集できたみたい。でも、実際の姿を見つけられた魔法植物はあまり多くないの。」
「そうなのか…」
「うん。だから私が、まだちゃんと発見できていない魔法植物を見つけて、この図鑑を完成させるの!
それが、お父さんとお母さんの夢だったから。」
「そうか…やっぱりエイムはすごいな…」
シラセは感慨深くつぶやき、思いつめる。直接は聞いていないが、エイムのこれまでの困難を想像するのは難くない。早くに両親を亡くして、ひどく寂しかっただろう。それにもかかわらず、両親の夢を引き継いで、一人で旅を続けてきた。
あのガルム戦を見るに、きっとたくさんの危険も乗り越えてきたのだろう。それに比べて、自分は恵まれた環境に気づきもしない上、勝手に夢を見た挙句、勝手に諦めかけて一人でしょげていた。そんな自分が、恥ずかしい。
でも俺は、エイムに出会えて少し変われた。
自分の信念に向かって真っすぐ突き進む姿に、勇気をもらった。
俺はまだまだこれからだ。
守護英雄様は、もう憧れじゃない。俺が到達すべき、目標だ。
シラセの眼は、真っ直ぐに前を見つめていた。
「だったら、早く進まないとな。愚痴って悪い。先に進もう!」
「うん!」
なんてすがすがしい日だろう。
1人の表情を除いては。
「なあエイム、あとどれくらいなんだ…?
ずっと歩き詰めで、足が棒になっちまうよ…」
シラセが疲れた表情で、力なく問う。
「んー、あと歩いてひと月くらいかなぁ?」
エイムはあっけらかんとして答えた。
「ひ、ひと月!?嘘だろ…」
シラセの額は青ざめていた。
「大丈夫大丈夫!ちゃんと途中で村にも寄って、休憩するし!
…私もお腹いっぱい、ご飯食べたいしね~♪」
エイムたちは、守護英雄の村を出発し、魔法都市フィオルナを目指していた。魔法都市フィオルナは、魔法を使える者が珍しい存在となったこの時代においても、いまだ魔法が強く息づいている都市だ。魔法を使える者が集い、その研究と鍛錬に励んでいるという。
先の一件には、魔法が強く関与していることは間違いなく、その手がかりをつかむため、エイムたちはこの都市を目指していたのだった。
「道中にもいくつか村があるみたいだから、休憩がてら例の件の痕跡がないか、調べていこう!」
エイムは張り切った様子で話す。
「とか言ってお前、どうせ新しい魔法植物の発見でも期待してんだろ?」
シラセはため息をついて言う。
というのもこの道中、エイムはことあるごとに道端の魔法植物を発見しては足を止めていたのだった。はじめはシラセも、嬉々として話すエイムの解説を興味深く聞いていたが、あまりにも何度も足が止まるので、今ではもうあきれ返っていたのだ。
「え、う…それもあるけど!もちろん事件の真相を突き止めないとってことも思ってるよ!」
エイムは慌てて答えるが、図星だったようで顔が少し赤らんでいる。
「…まあ、最初はこんな身近にも魔法植物があるんだなってことは驚いたけどさ…
ところでさ、エイムは魔法植物図鑑を完成させたいんだろ?」
「え?うん。」
「その図鑑、もうかなり分厚いけど、まだ完成じゃないのか?」
シラセは、エイムのリュックからはみ出している、深い緑色の表紙の図鑑を指さした。
「…うん、これはまだ未完成なの。
確かに、いろんな魔法植物のことが書かれているけど、その大半は言い伝えなんかをまとめたもので、実際に姿を観測できたわけじゃないんだ。」
「そうなのか。じゃあ、言い伝えの魔法植物を実際に見つけて、初めて発見したってことになるのか?」
「そういうこと。お父さんとお母さんは、いろんな言い伝えを収集しながら、実際の魔法植物を探してたんだ。
とりあえずは、大体の言い伝えは収集できたみたい。でも、実際の姿を見つけられた魔法植物はあまり多くないの。」
「そうなのか…」
「うん。だから私が、まだちゃんと発見できていない魔法植物を見つけて、この図鑑を完成させるの!
それが、お父さんとお母さんの夢だったから。」
「そうか…やっぱりエイムはすごいな…」
シラセは感慨深くつぶやき、思いつめる。直接は聞いていないが、エイムのこれまでの困難を想像するのは難くない。早くに両親を亡くして、ひどく寂しかっただろう。それにもかかわらず、両親の夢を引き継いで、一人で旅を続けてきた。
あのガルム戦を見るに、きっとたくさんの危険も乗り越えてきたのだろう。それに比べて、自分は恵まれた環境に気づきもしない上、勝手に夢を見た挙句、勝手に諦めかけて一人でしょげていた。そんな自分が、恥ずかしい。
でも俺は、エイムに出会えて少し変われた。
自分の信念に向かって真っすぐ突き進む姿に、勇気をもらった。
俺はまだまだこれからだ。
守護英雄様は、もう憧れじゃない。俺が到達すべき、目標だ。
シラセの眼は、真っ直ぐに前を見つめていた。
「だったら、早く進まないとな。愚痴って悪い。先に進もう!」
「うん!」
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