貧乏メイド、官能作家に“身体を資料として提供”することになりました~資料のために抱かれ続けた私、いつの間にか彼の最愛に~

蜜井蜂

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第一部

リズ・アムニチカ、無職

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「……どこかに好待遇の求人転がってないかなぁ。」
気づいたら口からそんな願望がこぼれていた。

私、リズ・アムニチカは今、完全に路頭に迷っている。
……誇張表現じゃなくて、本当に。

なぜそんなことになってしまったのか。
話は数週間前にさかのぼる。




「全員解雇……?」

執事長の口から発表があった瞬間、広間にいた使用人たちが一斉にざわついた。

私が勤めていたのは、領主家の“別邸”。
奥様が体調の関係でしばらくそこで暮らしていたんだけど、このたび本邸へお戻りになることに。
で、それに伴い「老朽化した別邸自体を解体する」って話になって――私たち別邸の使用人は全員まとめて解雇。

理屈はわかる。
わかるけど……突然すぎない?

その後はみんな必死だった。
料理長だったマルタさんは、知り合いの貴族家から「ぜひうちに」と即日ヘッドハンティング。
庭師のロムくんは町に戻って昔の仲間を頼りに造園の仕事に就いたって聞く。
下働きの女の子たちも実家に戻ったり、親戚のつてで新しい勤め先を見つけたりして――数週間も経たないうちに、ほとんどの人が次の生活を固めていった。



……で、残されたのが私。
結局今日まで次の仕事先が決まらず今に至った……そう、至ってしまった。

そして私は別邸にある寮に住み込みで働いていたから、仕事と一緒に住まいまで失うことに。
今日まさに追い出されてきたばかりで、今この瞬間から無職&無宿。

ちなみに私のお財布の中身はというと、雀の涙。
だって毎月、実家に仕送りしてるんだもの。

弟と妹の学費に、母さんの薬代。
父さんは早くに亡くなって、家計を支えるのはほぼ私の稼ぎ。
……だからこそ、寮つきの仕事は生活の命綱だったわけで。

その収入が途絶えたらどうなるか。
考えたくもないけど、現実は非情。
一か月もすれば宿代すら払えなくなって……野垂れ死にする未来しか見えない。

「ホントどうしよう……」

そういうわけで必死に次の職を探してる、というのが今の私の状況。



とはいえ、実際そこまで悲観してはいない。
何せ私にはメイドとしての経験がある。
掃除、料理、洗濯、接客……一通りこなせる。
胸を張るほどじゃないけど、“使えない子”ではないはずだ。

だから、どこかでまたすぐに雇ってもらえる。
そう信じて動くしかない。


うん、大丈夫。
絶対やり直せる――はず。


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