貧乏メイド、官能作家に身体を資料として提供することになりました~資料のために抱かれ続けた私、いつの間にか彼の最愛に~

蜜井蜂

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第一部

救世主

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職なし宿なし生活が始まって少し経った頃。
救世主みたいに声をかけてくれたのは王室出版局勤めの友人だった。


「作家さんのお屋敷で住み込みのお手伝いさんを探してるんだけど、興味ある?」
「――あるある!興味しかない!」

出版局近くのカフェでお茶を飲みながら、私は食い気味に答える。

仕事と寝床が同時に手に入るとか、今の私からしたら願ったりかなったりだ。
これはもう、飛び込むしかない。




そうして紹介された屋敷に来てみたわけだけど――
「ここがお屋敷……」

……「屋敷」と聞いて想像していたものより、だいぶこぢんまりしていた。
古びているけど、雰囲気は悪くない。

玄関の扉をノックすると、静かな足音のあとに扉が開いてひとりの青年が現れた。
整った黒髪に、淡いブルーグレーの瞳。
すらりと背が高くて、見上げながら思わず「ほぁ」なんて間抜けな声を出してしまったのは内緒。

「……ようこそ。リズさん、ですね?」
低めの声は、落ち着いていてよく通る。

「あ、はい!編集局のエイルさんのご紹介で来ました、リズ・アムニチカと申します」
自分でも驚くほど背筋が伸びた。

「どうぞ。立ち話もなんですし、中へ」



案内された居間には、本が積み上げられたままのテーブルに、脱ぎっぱなしの上着。
お世辞にも片付いているとは言い難い。

……そりゃあ、お手伝いを呼びたくなるわけだ。

彼はソファに腰を下ろし、姿勢を正してこちらを見た。
「改めまして。フェイ・ランバートといいます。小説を書いている者です」

「リズと申します。これまで屋敷勤めの経験がありますので、家事や雑務には慣れております」

「……屋敷勤め。なるほど、心強いですね」

一拍置いてから、フェイさんは少し言いづらそうに言葉を続けた。
「すでに聞いておられるかもしれませんが――執筆に集中するため、生活のことを丸ごと任せられる方を探していまして」

「つまり、掃除、洗濯、料理など一通り、ということですね?」

「はい。条件としては、住み込み。食費はこちらで持ちますし、給金も……これくらいですがお支払いします」

「……!?」
フェイさんから差し出された紙に書かれた金額に思わず目を見張る。
別邸で働いていた時のお給金の倍近く。
これまで働いてきたところとは比べ物にならないくらいの好待遇だ。

「ど、どうかされましたか……?」
「いえ!その……あまりにも好待遇だったもので驚いてしまって」

フェイさんは、それだけのことをしていただくのですから、と控えめに微笑んだ。
そして、「それに――」と言葉を続ける。

「……原稿の締め切りに追われているときは生活リズムがかなり乱れますし、ご迷惑をかける場面は多々あるかと思われますので」


私は小さくうなずき、笑みを添えた。
「大丈夫です。むしろ、そういうときこそ私の出番ですから」

「……そう言っていただけると助かります」
フェイさんはわずかに目を見開き、そしてふっと安堵のような笑みを浮かべた。

「それで、その……引き受けていただけますか?」
フェイさんが真剣な眼差しでこちらを見る。

条件も待遇も文句なし。
正直断る理由がない。

「はい!もちろん、よろしくお願いします!」


こうして私は、あっさり住み込みメイドとして働くことが決まったのだった。


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