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第一章 逆行した公爵令嬢
やはり龍か、いつ出発する?
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そういえば即位式で龍が現れたとき、1人だけおかしな行動をした魔術師がいた。
空を泳ぐ、赤黒い龍。
龍は怒り狂った様子で私の隣、皇帝ラウルスへと何度も襲いかかった。
龍はこの世界でも、最強を誇る生き物だ。
私は、そんな龍が恐ろしくて宮廷魔術師たちが総出で保護魔術をかけていると知っていてもなお、声も出せず震えることしか出来なかった。
反対に皇帝ラウルスは勇敢にも玉座から立ち上がり、腰の剣へ手をかけていた。
恐らくは龍が保護魔術を突破しようものなら自らの超攻撃的魔術で迎え打とうとしていたのだろう。
宮廷魔術師は帝国で最も優れた魔術師の一団だ。その彼らの魔術でさえ龍の本気の怒りには時間稼ぎにしかならなかった。
保護魔術は破られ、私は迫る龍への恐怖へ身を縮こませた。
しかし、結果としてそんなことは起こらなかった。
保護魔術が破れた直後、そんな龍の前へ杖を投げ捨て飛び出した黒いローブを纏う金髪の後ろ姿を思い出す。
龍へ必死に声を張り上げた彼へ、龍は動きを止めたからだ。
黒いローブは宮廷魔術師の正装で、ならば彼は宮廷魔術師だったのだろう。
龍は動きを止め、魔術師は奇跡の生還を果たしたかのように思えた。
しかし、どこからか飛んできた魔弾が彼の胸を貫いて、龍は皇帝と帝国に呪いを残して姿を消した。
逃亡のための計画が一先ず終わり、父への言い訳のために書庫の本を適当に読んでいた。
ちょうど龍の出てくる亡国の歴史書が目に入り、ついつい回想をしてしまった。
あの金髪の魔術師の名をラウルスが零していた気がする。
なんていう名前だったかな。確かバジ、バル……?
少し気になる。
龍へ必死になって語りかけていた姿は、どう考えても無関係ではなさそうだった。
龍を即位式に招き寄せた犯人……?
けれどあの必死に止めていた様子は、とてもそうは見えなかった。
結局死んでしまっているわけだし……、うーん……あとで改めて考えてみよう。
両親や妹に、皇帝ラウルスにだって愛はなくとも情がないわけではない。
私が逃げるのは確定だけど、それまでに龍が現れないようにするくらいはしてもいいはず。
いやいや逃げ出したあと、後腐れなく後悔しないためにもするべきだ。
言い訳終わり。
龍をどうにかする。
どうにか出来なかったら、その時はその時で。
やろうとした、けど力及ばず出来なかった。そういう言い訳が必要な時もある。
「ジョゼフィナ。気に入った本はあったかな
」
「はいお父様。この国の歴史書が気に入りましたわ。挿絵の龍が美しくって」
「ジウロンか……龍の血を引くという一族が住む国だね」
「ほぁ」
「ジョゼフィナ?」
「ジウロン国は確か数年前に滅んでいるのですよね。ジウロンの民が龍の血を引く、とは歴史書のどこにも記されておりませんけれど……」
思いもしない父の言葉に喉からおかしな音が出た。
龍の血を引く一族……?
本を胸に抱いたまま父の様子を観察する。
父は困ったように笑いながら頬を掻き、口を開いた。
「ジョゼフィナ、このことは誰にも言ってはいけないよ? なんせ皇太子殿下の母上、皇妃ソユシン様はジウロンの出だからね。ジウロンの民については、とくに龍の血を引くということは我が国の最高機密なんだ」
「お父様! ならば何故、わたくしへ口を滑らせたのです!」
本当に何故なのだ!
何も聞かなかったことにさせてくれよ!
憤慨し、思わず糾弾すれば父は苦笑するばかりだ。
「だからこそ、というものさ。ジョゼフィナ、君は皇太子殿下の婚約者なのだから。それに秘密へ対して、喜びより先に私を咎められるのなら安心だ」
父の手が頭を撫でた。
嵌められた!?
いやに満足げな父へ私は頬を膨らませる。そういえば父は昔から試すようなことばかりする人だった。
とくに幼い頃は、ちょうど今くらいの時期は見定めるとでもいうように何度も、こんな試験が突発的にあった。
もちろん皇后になってからは、顔を合わすこと自体なくなっていたのだけど。
「わたくし、そのように試されるのは嫌いですわ!」
「あぁ、ごめんよ。ジョゼフィナ、そうむくれないでおくれ。お詫びにジウロン国について最も詳しい人を紹介するよ」
「ジウロン国に興味があるんだろう。歴史書を読むだけでは物足りない筈だ。とくにその歴史書は穴だらけだからね」と父は私の頭を撫でながら穏やかに微笑んだ。
父の言葉にしばらく頬を膨らませ拗ねたふりを続けていたけど、結局頷いてしまう。
だって、だって気になっちゃうんだもん!
龍の血を引く一族だよ!?
かっこよくない!?
穴だらけの歴史書を誇り高いロベリン家の書庫に置いておかないでよ!
空を泳ぐ、赤黒い龍。
龍は怒り狂った様子で私の隣、皇帝ラウルスへと何度も襲いかかった。
龍はこの世界でも、最強を誇る生き物だ。
私は、そんな龍が恐ろしくて宮廷魔術師たちが総出で保護魔術をかけていると知っていてもなお、声も出せず震えることしか出来なかった。
反対に皇帝ラウルスは勇敢にも玉座から立ち上がり、腰の剣へ手をかけていた。
恐らくは龍が保護魔術を突破しようものなら自らの超攻撃的魔術で迎え打とうとしていたのだろう。
宮廷魔術師は帝国で最も優れた魔術師の一団だ。その彼らの魔術でさえ龍の本気の怒りには時間稼ぎにしかならなかった。
保護魔術は破られ、私は迫る龍への恐怖へ身を縮こませた。
しかし、結果としてそんなことは起こらなかった。
保護魔術が破れた直後、そんな龍の前へ杖を投げ捨て飛び出した黒いローブを纏う金髪の後ろ姿を思い出す。
龍へ必死に声を張り上げた彼へ、龍は動きを止めたからだ。
黒いローブは宮廷魔術師の正装で、ならば彼は宮廷魔術師だったのだろう。
龍は動きを止め、魔術師は奇跡の生還を果たしたかのように思えた。
しかし、どこからか飛んできた魔弾が彼の胸を貫いて、龍は皇帝と帝国に呪いを残して姿を消した。
逃亡のための計画が一先ず終わり、父への言い訳のために書庫の本を適当に読んでいた。
ちょうど龍の出てくる亡国の歴史書が目に入り、ついつい回想をしてしまった。
あの金髪の魔術師の名をラウルスが零していた気がする。
なんていう名前だったかな。確かバジ、バル……?
少し気になる。
龍へ必死になって語りかけていた姿は、どう考えても無関係ではなさそうだった。
龍を即位式に招き寄せた犯人……?
けれどあの必死に止めていた様子は、とてもそうは見えなかった。
結局死んでしまっているわけだし……、うーん……あとで改めて考えてみよう。
両親や妹に、皇帝ラウルスにだって愛はなくとも情がないわけではない。
私が逃げるのは確定だけど、それまでに龍が現れないようにするくらいはしてもいいはず。
いやいや逃げ出したあと、後腐れなく後悔しないためにもするべきだ。
言い訳終わり。
龍をどうにかする。
どうにか出来なかったら、その時はその時で。
やろうとした、けど力及ばず出来なかった。そういう言い訳が必要な時もある。
「ジョゼフィナ。気に入った本はあったかな
」
「はいお父様。この国の歴史書が気に入りましたわ。挿絵の龍が美しくって」
「ジウロンか……龍の血を引くという一族が住む国だね」
「ほぁ」
「ジョゼフィナ?」
「ジウロン国は確か数年前に滅んでいるのですよね。ジウロンの民が龍の血を引く、とは歴史書のどこにも記されておりませんけれど……」
思いもしない父の言葉に喉からおかしな音が出た。
龍の血を引く一族……?
本を胸に抱いたまま父の様子を観察する。
父は困ったように笑いながら頬を掻き、口を開いた。
「ジョゼフィナ、このことは誰にも言ってはいけないよ? なんせ皇太子殿下の母上、皇妃ソユシン様はジウロンの出だからね。ジウロンの民については、とくに龍の血を引くということは我が国の最高機密なんだ」
「お父様! ならば何故、わたくしへ口を滑らせたのです!」
本当に何故なのだ!
何も聞かなかったことにさせてくれよ!
憤慨し、思わず糾弾すれば父は苦笑するばかりだ。
「だからこそ、というものさ。ジョゼフィナ、君は皇太子殿下の婚約者なのだから。それに秘密へ対して、喜びより先に私を咎められるのなら安心だ」
父の手が頭を撫でた。
嵌められた!?
いやに満足げな父へ私は頬を膨らませる。そういえば父は昔から試すようなことばかりする人だった。
とくに幼い頃は、ちょうど今くらいの時期は見定めるとでもいうように何度も、こんな試験が突発的にあった。
もちろん皇后になってからは、顔を合わすこと自体なくなっていたのだけど。
「わたくし、そのように試されるのは嫌いですわ!」
「あぁ、ごめんよ。ジョゼフィナ、そうむくれないでおくれ。お詫びにジウロン国について最も詳しい人を紹介するよ」
「ジウロン国に興味があるんだろう。歴史書を読むだけでは物足りない筈だ。とくにその歴史書は穴だらけだからね」と父は私の頭を撫でながら穏やかに微笑んだ。
父の言葉にしばらく頬を膨らませ拗ねたふりを続けていたけど、結局頷いてしまう。
だって、だって気になっちゃうんだもん!
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