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第三章 海を渡る公爵令嬢
契約内容をご確認の上、ご利用ください。
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多少乱暴な解決法だったかもしれない。
でもそのくらいしか私にはやりようがなかったのも事実。
その働きにタリクはとりあえずは満足したようだった。
「じゃ~、報酬の話ね~。ここ、俺ん店だからさ、好きなの持っていってくれていいよ」
「お~……なんでもあるんだ」
「タリク商会は幅広くが信条なんで」
天井までずらりと商品らしい雑貨が吊るされていた。
パッと見ただけでも陶器の食器類に人形などの置物、さらにはカラフルなガラス細工や刺繍の艶やかな布地まで何でも詰め込まれて独特な雰囲気がある。
「あっ、エル・デルスターの魔術具もある」
「すごいだろ」
品揃えに関心していると、タリクが胸を張った。
店内をぐるっと回るが、欲しくなる物がない。あっても使い道に困ってしまいそうなものばかりだった。
「ない?」
「ないねぇ」
「マジかぁ。じゃあちょっと倉庫の方も見てくるわ」
タリクが店の奥へ姿を消した。
クルクルクルクル、風車のような壁飾りが回り始める。
それにしても本当にたくさんあるものだ。
「魔術師殿」
「うわっ!!」
「失礼。少しよろしいでしょうか」
突然声をかけられ咄嗟に大きな声が出てしまう。
声をかけてきたのはタリクの所有する奴隷であるアランだった。
手入れのされてない髪と髭にタリク云はく風呂嫌い……。
思わず店内を見渡した。
窓は閉め切られ店内に空気の循環はない。……風呂嫌いと密閉空間って、わけね?
死?
「魔術師殿は主人と魔物をどうにかしたら、主人の持ち物を何でも譲られる、という契約をされてらっしゃると聞きました」
「はぁ、そうですけど……」
「差し出がましい要求なのは百も承知ですが、その持ち物として、私を選んで欲しいのです」
ある意味で当然なのかもしれない申し出に内心で頭を抱えた。
「お願いします。魔術師殿、私は役に立てます」
「うーん……いくつか聞きたいんですが、貴方は魔物の言葉が分かるのですか?」
「魔物のではありません。動物の言葉なら何となく理解できます」
一瞬とはいえ奴隷になりかけた私にも奴隷という身分から解放されたい気持ちは理解できた。
とはいえ旅をしながらオズを目指す身だ。
すぐに船──しかも海賊船──に乗って去ってしまう立場で余計なことに首を突っ込みたくないのも本音である。
「貴方はジウロン国の出身ですか?」
「ジウ……? いえ、私は極東のキ皇国出身です」
「極東!? 島国ですか!?」
「っ!? い、いえ、島国では……国土の一部に島もいくつかありますが」
極東!?
つまりこの世界での日本!!???
島国ではないが、国土に島がいくつか。
しかしアランの黒い髪は天元山脈以東のアジア──この世界では多分違う呼び方だろうが──出身である証明でもある。
世界違いとはいえ同郷者らしき存在にテンションがめちゃくちゃ上がってしまう。
カツラギに会えたら自慢してやるのに!
「え~~!! 行きたい! キ皇国、行きた~い!!!」
「お、ぉう……そうですか。私ならば皇国の案内も出来ます。魔術師殿、私を選んでいただけますか」
「いいよ~!」
戸惑った様子のアランへ親指を立てる。
完全にノリだ。
なんかもうずっと、このくらい軽いノリで旅をしたい。
しばらくしてタリクが戻ってきた。倉庫にもとくに欲しがりそうなものはなかったと頭を掻いている。
「ねえタリク、アランがいい」
「え、???」
「奴隷も所有物、なんだよね? こう言う言い方は良くないんだろうけど、私にちょうだい」
「え~~……、まあそういう契約だし構わねえけど……マジかぁ……。まさか帝国人が奴隷を欲しがるとは……」
タリクも困惑を隠せないらしい。
流れに従っただけとはいえ私も自分がまさか奴隷を欲しがるとは……。帝国で奴隷の売買が禁止されているのは言うまでもない。
「ん。じゃあまあ、はい。ここに血を垂らしてね」
「血?」
「そそ、そうやって奴隷と隷従の契約を交わすワケ」
タリクがつけていた金色のピアスを外して私へ差し出した。
素直にピアスの針の部分に触れれば、チクリと小さな痛み。
指の腹に鮮やかな赤の玉が膨らんでいき金色のピアスに血の雫が一滴。
落ちたかと思えば何事もなかったかのように吸い込まれて見えなくなった。
「なにこれ」
「何って、奴隷の所有証だよ。奴隷の方には対応する首輪がついてんのな。これで契約したら持ってるだけで奴隷を従わせられるワケよ」
「へ、へえ……、でも困ったな。私、ピアスの穴なんて空いてないよ」
「へーきへーき。元々エル・デルスターの魔術具職人が作ってた奴だからさ。とにかく手ェ出してよ」
言われるままタリクに手を差し出す。
金色のピアスが手のひらに置かれた。
瞬間。
ぐにょん、とピアスが粘土のように形を変えて、気がつけば手首に金色のブレスレットが嵌め込まれていた。
「これで譲渡完了。じゃ、魔物の件ありがとね。またこの国に来ることがあったらさ、俺の店に何か買いに来てよ」
「うん、わかった」
「お前も元気でなぁ~。新しい主人だからって初めみたいにナメた態度とんなよな」
「うっせえボケカス死ね」
別れの挨拶をしたタリクにアランが中指を立てる。
ひぇえ……?
どういうことなの……。
タリクは慣れているのか苦笑を浮かべている。
「コイツさぁ。こういう主人に態度するクソ根性奴隷バカだから、ナメた態度とられたらちゃんと躾けなきゃかダメだかんな? ホントに大丈夫?」
「うっせーーー!!! あばよ! ボケカス元主人!!!」
だ、だめかもしれない……。
「すこし、早まったかも……」
「……一応、奴隷のマニュアルも渡しとくな?」
舌を出したり、タリクへ勢いよく煽り始めるアランの様子に戸惑うしか出来ない。
さっきまでの従順な態度は演技だった……?
あんまりな変わりように不安そうにしていると、タリクが分厚い紙束をくれた。
奴隷の扱いに関するマニュアルらしい。そんなのあるんだ……。
いやまあ、すぐに解放しちゃえばお別れできるし……。
マニュアルを捲って、開放について説明されたページを探す。
「ちなみに奴隷解放とかできないタイプの奴隷だからね、ソイツ。売られてきたんじゃなくて元犯罪者だから」
はい。おしまい。
ジョー・ジックの次回作にご期待ください。
でもそのくらいしか私にはやりようがなかったのも事実。
その働きにタリクはとりあえずは満足したようだった。
「じゃ~、報酬の話ね~。ここ、俺ん店だからさ、好きなの持っていってくれていいよ」
「お~……なんでもあるんだ」
「タリク商会は幅広くが信条なんで」
天井までずらりと商品らしい雑貨が吊るされていた。
パッと見ただけでも陶器の食器類に人形などの置物、さらにはカラフルなガラス細工や刺繍の艶やかな布地まで何でも詰め込まれて独特な雰囲気がある。
「あっ、エル・デルスターの魔術具もある」
「すごいだろ」
品揃えに関心していると、タリクが胸を張った。
店内をぐるっと回るが、欲しくなる物がない。あっても使い道に困ってしまいそうなものばかりだった。
「ない?」
「ないねぇ」
「マジかぁ。じゃあちょっと倉庫の方も見てくるわ」
タリクが店の奥へ姿を消した。
クルクルクルクル、風車のような壁飾りが回り始める。
それにしても本当にたくさんあるものだ。
「魔術師殿」
「うわっ!!」
「失礼。少しよろしいでしょうか」
突然声をかけられ咄嗟に大きな声が出てしまう。
声をかけてきたのはタリクの所有する奴隷であるアランだった。
手入れのされてない髪と髭にタリク云はく風呂嫌い……。
思わず店内を見渡した。
窓は閉め切られ店内に空気の循環はない。……風呂嫌いと密閉空間って、わけね?
死?
「魔術師殿は主人と魔物をどうにかしたら、主人の持ち物を何でも譲られる、という契約をされてらっしゃると聞きました」
「はぁ、そうですけど……」
「差し出がましい要求なのは百も承知ですが、その持ち物として、私を選んで欲しいのです」
ある意味で当然なのかもしれない申し出に内心で頭を抱えた。
「お願いします。魔術師殿、私は役に立てます」
「うーん……いくつか聞きたいんですが、貴方は魔物の言葉が分かるのですか?」
「魔物のではありません。動物の言葉なら何となく理解できます」
一瞬とはいえ奴隷になりかけた私にも奴隷という身分から解放されたい気持ちは理解できた。
とはいえ旅をしながらオズを目指す身だ。
すぐに船──しかも海賊船──に乗って去ってしまう立場で余計なことに首を突っ込みたくないのも本音である。
「貴方はジウロン国の出身ですか?」
「ジウ……? いえ、私は極東のキ皇国出身です」
「極東!? 島国ですか!?」
「っ!? い、いえ、島国では……国土の一部に島もいくつかありますが」
極東!?
つまりこの世界での日本!!???
島国ではないが、国土に島がいくつか。
しかしアランの黒い髪は天元山脈以東のアジア──この世界では多分違う呼び方だろうが──出身である証明でもある。
世界違いとはいえ同郷者らしき存在にテンションがめちゃくちゃ上がってしまう。
カツラギに会えたら自慢してやるのに!
「え~~!! 行きたい! キ皇国、行きた~い!!!」
「お、ぉう……そうですか。私ならば皇国の案内も出来ます。魔術師殿、私を選んでいただけますか」
「いいよ~!」
戸惑った様子のアランへ親指を立てる。
完全にノリだ。
なんかもうずっと、このくらい軽いノリで旅をしたい。
しばらくしてタリクが戻ってきた。倉庫にもとくに欲しがりそうなものはなかったと頭を掻いている。
「ねえタリク、アランがいい」
「え、???」
「奴隷も所有物、なんだよね? こう言う言い方は良くないんだろうけど、私にちょうだい」
「え~~……、まあそういう契約だし構わねえけど……マジかぁ……。まさか帝国人が奴隷を欲しがるとは……」
タリクも困惑を隠せないらしい。
流れに従っただけとはいえ私も自分がまさか奴隷を欲しがるとは……。帝国で奴隷の売買が禁止されているのは言うまでもない。
「ん。じゃあまあ、はい。ここに血を垂らしてね」
「血?」
「そそ、そうやって奴隷と隷従の契約を交わすワケ」
タリクがつけていた金色のピアスを外して私へ差し出した。
素直にピアスの針の部分に触れれば、チクリと小さな痛み。
指の腹に鮮やかな赤の玉が膨らんでいき金色のピアスに血の雫が一滴。
落ちたかと思えば何事もなかったかのように吸い込まれて見えなくなった。
「なにこれ」
「何って、奴隷の所有証だよ。奴隷の方には対応する首輪がついてんのな。これで契約したら持ってるだけで奴隷を従わせられるワケよ」
「へ、へえ……、でも困ったな。私、ピアスの穴なんて空いてないよ」
「へーきへーき。元々エル・デルスターの魔術具職人が作ってた奴だからさ。とにかく手ェ出してよ」
言われるままタリクに手を差し出す。
金色のピアスが手のひらに置かれた。
瞬間。
ぐにょん、とピアスが粘土のように形を変えて、気がつけば手首に金色のブレスレットが嵌め込まれていた。
「これで譲渡完了。じゃ、魔物の件ありがとね。またこの国に来ることがあったらさ、俺の店に何か買いに来てよ」
「うん、わかった」
「お前も元気でなぁ~。新しい主人だからって初めみたいにナメた態度とんなよな」
「うっせえボケカス死ね」
別れの挨拶をしたタリクにアランが中指を立てる。
ひぇえ……?
どういうことなの……。
タリクは慣れているのか苦笑を浮かべている。
「コイツさぁ。こういう主人に態度するクソ根性奴隷バカだから、ナメた態度とられたらちゃんと躾けなきゃかダメだかんな? ホントに大丈夫?」
「うっせーーー!!! あばよ! ボケカス元主人!!!」
だ、だめかもしれない……。
「すこし、早まったかも……」
「……一応、奴隷のマニュアルも渡しとくな?」
舌を出したり、タリクへ勢いよく煽り始めるアランの様子に戸惑うしか出来ない。
さっきまでの従順な態度は演技だった……?
あんまりな変わりように不安そうにしていると、タリクが分厚い紙束をくれた。
奴隷の扱いに関するマニュアルらしい。そんなのあるんだ……。
いやまあ、すぐに解放しちゃえばお別れできるし……。
マニュアルを捲って、開放について説明されたページを探す。
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