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同期の御曹司は不貞がお嫌い
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しおりを挟む「優磨くんは家この辺なの?」
財閥の御曹司がこんな庶民的なスーパーにいるなんて違和感がある。
「うん。すぐそこに住んでるんだ」
「そっか……ここでいつも買い物するの?」
「ほとんど毎日来るよ。今の会社じゃまだ新人だから忙しくて、俺もいつもここで夕飯買うの」
失敗した。まさか優磨くんの家の近くに来てしまうとは。
「じゃ、じゃあね!」
「安西さん……」
呼び止められた気がしたけれど、私は優磨くんから逃げるようにレジに移動した。
こんなところを優磨くんに見られたくない。上等なスーツを着ている人に、こんな惨めな私が同期で恥ずかしいと思われたくない。
大口の顧客担当から外され、飲み会に誘われなくなってしまった。職場での信頼を崩すのってこんなに簡単なんだと痛感する。
たまたま給湯室で数人の社員が私の話をしているところを聞いてしまった。
「私なら恥ずかしくて辞めるのに、図太いよねー」
事務の子がバカにするような声を出す。
近くにいることを気づかれないようにそっと離れる。
私だって毎日恥ずかしくて情けなくて辛い。でも私の何が悪いのだろう。下田くんが結婚していたことは本当に知らなかった。どうして私が責められなければいけないのだ……。
会社の近くに来ると吐き気がして手が震えるようになった。
精神的に参っているのは自覚していたけれど、どうしたらいいかもわからない。減給処分が明けるまであと3ヶ月以上ある。
月曜日を終えて駅から家まで歩いていた。
今週あと4日間会社に行かなければいけないと思った瞬間また吐き気に襲われた。電柱に寄り掛かって口を押える。胃がムカムカする。
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