同期の御曹司様は浮気がお嫌い

秋葉なな

文字の大きさ
68 / 157
同居の御曹司は甘やかすのがお好き

68

しおりを挟む

優磨くんに甘えて贅沢させてもらっているけれど、やっぱり仕事したいなあ……。

正社員にこだわらず少しずつバイトでもしようかな。営業や事務だけじゃなくて接客もやってみたいかも。

「波瑠、電話だよ」

中から優磨くんが私のスマートフォンを持って顔を出した。

「え、電話?」

受け取った画面には『公衆電話』と表示されている。

「こんな時間に公衆電話?」

「出た方がいんじゃない?」

優磨くんはそう言うけれど、朝早く公衆電話から着信があるなんて不審で出るのを躊躇う。迷っているうちに着信は切れてしまった。

「急用だったかもしれないけど大丈夫?」

「うん……多分」

「実家からとか?」

「ううん、私の実家は固定電話あるし……」

「今時公衆電話からかけてくるのも珍しいから間違い電話かもしれないしね」

優磨くんはそれだけ言うと出勤の準備を始める。

もう一度電話がかかってくる様子はない。急用ならば留守番電話にメッセージを入れるだろうけどそれもない。
なんだか嫌な予感がした。
退職して会社関係との縁は切れたし、友人との交流も少ない私に連絡をしてきそうな人物は悲しいことに今では下田くんしか思いつかない。
電話もメッセージも無視するだけじゃなく、一切連絡してこないでと言うべきだろうか。もう下田くんの声すら聞きたくないのに。

衣類を干し終わって部屋の中に戻ると優磨くんは既にスーツに着替えて髪も整えていた。

「波瑠、夜は何で来るの? タクシー?」

今夜は延期になっていた退職のお祝いで外食する約束をしていた。

「タクシーなんてもったいないよ。電車で行くね」

「電車はダメだって。帰宅ラッシュで混むよ」

「でも電車の方が早いし、混む方向とは逆だよ?」

「それでも、波瑠には電車に乗ってほしくないの」

優磨くんは私の前に立って頬を両手で包む。

「波瑠が心配だからタクシーで来て。カード使っていいから」

優磨くんは妙に心配性なところがある。毎回呆れるのだけれど、優磨くんがそれで安心するならそうするべきなのだろう。

「わかったよ。タクシーで行くね」

「泉さんに迎えに来てもらおうか?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

消えた記憶

詩織
恋愛
交通事故で一部の記憶がなくなった彩芽。大事な旦那さんの記憶が全くない。

自信家CEOは花嫁を略奪する

朝陽ゆりね
恋愛
「あなたとは、一夜限りの関係です」 そのはずだったのに、 そう言ったはずなのに―― 私には婚約者がいて、あなたと交際することはできない。 それにあなたは特定の女とはつきあわないのでしょ? だったら、なぜ? お願いだからもうかまわないで―― 松坂和眞は特定の相手とは交際しないと宣言し、言い寄る女と一時を愉しむ男だ。 だが、経営者としての手腕は世間に広く知られている。 璃桜はそんな和眞に憧れて入社したが、親からもらった自由な時間は3年だった。 そしてその期間が来てしまった。 半年後、親が決めた相手と結婚する。 退職する前日、和眞を誘惑する決意をし、成功するが――

15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以
恋愛
 交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。  2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。  愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。 「その時計、気に入ってるのね」 「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」 『お揃いで』ね?  夫は知らない。  私が知っていることを。  結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?  私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?  今も私を好きですか?  後悔していませんか?  私は今もあなたが好きです。  だから、ずっと、後悔しているの……。  妻になり、強くなった。  母になり、逞しくなった。  だけど、傷つかないわけじゃない。

貴方の側にずっと

麻実
恋愛
夫の不倫をきっかけに、妻は自分の気持ちと向き合うことになる。 本当に好きな人に逢えた時・・・

愛のかたち

凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。 ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は…… 情けない男の不器用な愛。

ハメられ婚〜最低な元彼とでき婚しますか?〜

鳴宮鶉子
恋愛
久しぶりに会った元彼のアイツと一夜の過ちで赤ちゃんができてしまった。どうしよう……。

幼馴染の許嫁

山見月 あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

処理中です...