炎上で捨てられた俺と拾ってくれたAIで、もう一度バズることにした

前田 真

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第15話 烈と雫の決着

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 雫から連絡が来たのは、配信の翌日だった。

 SNSのDMだった。短い文面だった。

『直接話せますか。場所はどこでも』

 蓮はしばらくそのメッセージを見ていた。

 断る理由はなかった。でも、すぐに返す気にもなれなかった。配信を見てから、胸の中に何かが引っかかったまま、まだ整理できていなかった。

 一時間ほど置いてから、返信した。

『いいですよ。場所決めてください』

 待ち合わせは、都内の静かな喫茶店だった。

 雫が先に来ていた。窓際の席に座って、コーヒーカップを両手で持っていた。蓮が入ってくると、立ち上がろうとした。蓮は手で制して、向かいに座った。

「わざわざありがとうございます」雫が言った。

「別に」

 注文を済ませて、少し沈黙があった。

 雫が口を開こうとするたびに、何かが邪魔をするみたいに止まった。蓮は待った。急かさなかった。

「……配信、見ましたか」

「見ました」

 雫の目が、少し揺れた。

「あの……昨日言ったこと、全部本当です。事務所から口止めされていて、ずっと言えなくて」

「……そうか」

 雫が、目を伏せた。

 また沈黙があった。

 外では人が行き交っていた。喫茶店の中は静かだった。BGMだけが低く流れていた。

「烈くんに、直接言いたくて」雫が顔を上げた。「言えなくてごめん」

 蓮は雫を見た。

 怒鳴りたい気持ちがないわけじゃなかった。半年間、どれだけしんどかったか。一言あれば違った、と思うことが何度もあった。

 でも今、目の前にいる雫を見て、その言葉が出てこなかった。

 配信の声が、まだ耳に残っていた。怖かった、と言っていた。全部失うのが怖かった、と。

 蓮は少し俯いた。テーブルの木目を見た。

 長い沈黙だった。

「……そういう状況だったんだな」

 それだけ言った。

 怒りでも許しでもなかった。ただ、やっと腑に落ちた。そういう顔で、そう言った。

 雫の目から、涙がこぼれた。声は出なかった。ただ、こぼれた。

 蓮はそれを見て、目を逸らした。泣かれると困る、という顔で、窓の外を見た。

「俺もしんどかったけど」蓮は窓の外を見たまま言った。「お前も、しんどかったんだろうな」

 雫は何も言わなかった。

 コーヒーを一口飲んだ。

 雫が、小さく「うん」と言った。

 それ以上、大きな話にはならなかった。しばらくして、二人は店を出た。駅の改札の前で別れた。特別な言葉はなかった。「またね」と「うん」だけだった。

 電車に乗って、蓮は窓の外を見た。

 半年間、引っかかっていたものが、少しだけ軽くなった気がした。解決したわけじゃない。全部水に流したわけでもない。でも、腑に落ちた。

 それで十分だった。
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