62 / 71
第三章_星満
18.母校敗退
しおりを挟む
今年は受験生なので、弁当屋のアルバイトは自粛している。
姉もリリーフカーの運転手から、近所のディーラーの受付に転属となったので、横浜ボールパークとは縁が薄くなっている状態だ。
機会があったらお兄さんにお願いして、水野選手と会わせてもらいたいと思っているが、今のところ納豆とあさりの味噌汁の法則を見つけることが最優先なので、もう少し落ち着いたら考えてみようと思う。
あさりの産地まで意識したのだが、何も効果が出ないまま、五月の連休が過ぎてしまった。
愛知・北海道・福岡・静岡は全て試した。
仕入先が違う可能性も考慮して、スーパーも二ヶ所で購入したのだが、調査するも何もこの期間で覚醒することが無かったのだ。
この四ヶ所以外の産地も試さなければならない。
地元神奈川産は見掛けることが無い、千葉と東京があるのを発見して買ってみたが、やはり効果は現れなかった。
産地も関係無いのだろうか?
ここまでで言えることは、意識すると手作りでもインスタントでも効果が出ない。
無意識で普段の生活の中で、たまたま納豆とあさりの味噌汁の組み合わせになると覚醒することがある。
でも必ず毎回ではない。
高校に入学してから二年と三ヶ月もの間で、こんなことしか分からなくて申し訳なかった……
七月になった。
もう予選の組み合わせも決まり、順当ならば四回戦で横浜学院と当たるブロックになってしまった。
蛮の甲子園への道は閉ざされたも同然だ。
「でぇ~ 星よぉ~ 今までお前にも苦労を掛けたが、こうなったら今のメンバーで横学を倒すしかないと思ってる。
ウチの実力はお前が思っているより高いぞぉ~ でぇ~
まだ諦めるのは早い! 甲子園で試合をするのは八月だ。
あと一ヶ月あるから、最後まで諦めずに何とか覚醒する法則を見つけるぞぉ~ でぇ~」
蛮の意気込み通り、三回戦までは勝ち抜いたが、横浜学院との実力差は歴然だった。
無名の公立校としては、かなり健闘したと思うが、3対7で敗退が決まり蛮の高校野球は終わった。
「でぇ~ 星よぉ~ 申し訳なかったっ! お前の実力を甲子園で披露したかったが、俺たちが力不足だった。でぇ~」
って、何を言ってるんだ……
本来ならば強豪校に行って、強肩強打のキャッチャーとして甲子園に出場できる実力があったのに、僕の為に無名の紅陵高校に来たばっかりに、一度も甲子園に出場することができなくて、申し訳なく思うのはこっちのほうだよ……
「星よぉ~ 俺はプロ志望届を出すぞぉ~
今年は何処からも指名されないかもしれんが、俺の次の目標はプロでお前とバッテリーを組むことだぁ! でぇ~」
おいおい、蛮の実力なら大学で実績を残して、将来プロになれる可能性はあると思うけど、それまで僕は納豆とあさりの味噌汁の法則を見つける生活をしないといけないのか?
今年は受験生だから、横浜ボールパークでの弁当屋のアルバイトは自粛して、ちょっと受験生っぽく生活していたが、夏休みになったら両俣山荘での住み込みのアルバイトはしたいと思っているし、山岳部恒例の登山にも行くつもりでいる。
今年は八ヶ岳の赤岳に決まった。
しばらくの間、納豆とあさりの味噌汁は忘れさせて欲しいよ……
予選敗退が決まり、蛮は野球部を引退した。
高校入学以来、野球部中心の生活をしていたので、何もやることが無くなって気が抜けている様子だったので、横浜ボールパークの広島戦でも観に行こうっ!
と誘ってみた。
去年までは弁当を売りながら試合経過を確認して、弁当売りが終わった終盤は、こっそりスタンドで観戦していたが、純粋にチケットを購入して観戦するのは、高校に入学してから初めてではないか?
この日は引退した蛮を労う気持ちと、最後まで覚醒する条件を見つけられなかった償いみたいな気持ちもあって、僕が蛮を招待するような形で観戦することにした。
中学生の頃に、蛮も含めて野球部の仲間と何度も観戦しに来たが、お金が無いので外野席専門だった。
今日は今までのアルバイトで貯金もあるし、蛮の為に奮発して内野B指定席を購入した。
僕にとっても初めての指定席だ。
スタンド下の売店で、飲み物と軽食を買おうと思い列に並んでいると、見覚えのある後ろ姿を発見した。
「姉貴、今日は観にきてたんだっ!」
「あら、満。偶然ねぇ。あんたも来てたんだ」
「でぇ~ お姉さん、お久し振りですぅ~ でぇ~」
「あら、蛮君じゃない。偶然ねぇ」
「でぇ~ 香織先輩。何で居るんですかぁ~ でぇ~」
「何よ、居ちゃぁ悪いみたいな言い方しないでよっ! 今日は亜希子さんと一緒に来る約束をしてたのよ」
姉と香織先輩がどんな関係なのかは知らないが、姉はお兄さんの口利きでエキサイティングシートのチケットを持っているらしい。
僕と蛮の分も頼んでみれば良かった……
普段はケチな姉なのだが、今日は蛮が一緒だったので、コーラとフライドチキンとフライドポテトを奢ってくれた。
まさか後で請求されないよなぁ……
今日は両チームのエースと言われている今中投手と青木投手の先発だ。
青木投手は高校時代からお兄さんのライバルだったらしく、去年は新人王をお兄さんに奪われているので、ドルフィンズ戦は特に気合が入った投球をしてくる。
試合は予想通り息詰まる投手戦になった。
160キロに迫る速球をポンポン放って来る青木投手に対して、スピードでは負けているが、今中投手もキレのあるストレートと落差のあるチェンジアップを交えて対抗する。
スコアボードには両チームとも0が並び、八回の表まで終わった。
八回裏は打順良く一番の水野さんからだ。
「冬樹、打てぇ~!」
エキサイティングシートで姉と一緒に観戦している香織先輩の声が、B指定席まで聞こえた。
よく通る声だ。
でも今日の青木投手を打つのは簡単ではないだろう。
と思った初球だった。
少し振り遅れ気味に見えた水野さんの打球は、低い弾道でライトポール際のスタンドに入った。
プロ入り初ホームランだった。
お兄さんの高校の後輩だった水野さんにとっても、青木投手はライバルだったのだろう。
高校時代からの関係は、この先何年も続いて行くに違いない。
僕とは住む世界が違う気がした。
一点でもリードすれば、最終回はお兄さんの登場だ。
水野さんとの先輩後輩バッテリーは、今や他チームが恐れる絶対的存在になっている。
この日も魔球レベルのナックルボールが冴えまくり、今中投手との完封リレーを完成させた。
「でぇ~ 星よぉ~ 今日はいい試合だったのぅ 広島打線は裏をかかれて自分のスイングをさせてもらえてなかったように見えたぞ。
水野さんのリードが凄いんじゃないかのぅ? でぇ~」
流石はキャッチャーだ。
やはり見るところが違う。
「でぇ~ リードだけじゃない。決勝のホームランも狙い球を絞って打った感じだと思うぞ。
プロになるには体力的な技術だけではなく、頭脳的な技術も必要なんだなぁ……
俺ももっと勉強せんとイカンなぁ…… でぇ~」
いやいや、お前の洞察力や考え方も、既に高校生離れしてると思うぞ。
大学野球で頑張れば、必ずプロに注目される選手になれるんじゃないかと思う。
今日は蛮に元気になってもらいたくて誘って来たのだけど、元々そんなに落ち込んでいた訳でも無さそうだったし、お兄さんと水野さんの活躍が観れて良かった。
広島の青木投手も凄いピッチングだった。
来年大学生になったら、また弁当屋のアルバイトに来て、登山費用を稼ぎつつ、野球も楽しみたいなぁ……
姉もリリーフカーの運転手から、近所のディーラーの受付に転属となったので、横浜ボールパークとは縁が薄くなっている状態だ。
機会があったらお兄さんにお願いして、水野選手と会わせてもらいたいと思っているが、今のところ納豆とあさりの味噌汁の法則を見つけることが最優先なので、もう少し落ち着いたら考えてみようと思う。
あさりの産地まで意識したのだが、何も効果が出ないまま、五月の連休が過ぎてしまった。
愛知・北海道・福岡・静岡は全て試した。
仕入先が違う可能性も考慮して、スーパーも二ヶ所で購入したのだが、調査するも何もこの期間で覚醒することが無かったのだ。
この四ヶ所以外の産地も試さなければならない。
地元神奈川産は見掛けることが無い、千葉と東京があるのを発見して買ってみたが、やはり効果は現れなかった。
産地も関係無いのだろうか?
ここまでで言えることは、意識すると手作りでもインスタントでも効果が出ない。
無意識で普段の生活の中で、たまたま納豆とあさりの味噌汁の組み合わせになると覚醒することがある。
でも必ず毎回ではない。
高校に入学してから二年と三ヶ月もの間で、こんなことしか分からなくて申し訳なかった……
七月になった。
もう予選の組み合わせも決まり、順当ならば四回戦で横浜学院と当たるブロックになってしまった。
蛮の甲子園への道は閉ざされたも同然だ。
「でぇ~ 星よぉ~ 今までお前にも苦労を掛けたが、こうなったら今のメンバーで横学を倒すしかないと思ってる。
ウチの実力はお前が思っているより高いぞぉ~ でぇ~
まだ諦めるのは早い! 甲子園で試合をするのは八月だ。
あと一ヶ月あるから、最後まで諦めずに何とか覚醒する法則を見つけるぞぉ~ でぇ~」
蛮の意気込み通り、三回戦までは勝ち抜いたが、横浜学院との実力差は歴然だった。
無名の公立校としては、かなり健闘したと思うが、3対7で敗退が決まり蛮の高校野球は終わった。
「でぇ~ 星よぉ~ 申し訳なかったっ! お前の実力を甲子園で披露したかったが、俺たちが力不足だった。でぇ~」
って、何を言ってるんだ……
本来ならば強豪校に行って、強肩強打のキャッチャーとして甲子園に出場できる実力があったのに、僕の為に無名の紅陵高校に来たばっかりに、一度も甲子園に出場することができなくて、申し訳なく思うのはこっちのほうだよ……
「星よぉ~ 俺はプロ志望届を出すぞぉ~
今年は何処からも指名されないかもしれんが、俺の次の目標はプロでお前とバッテリーを組むことだぁ! でぇ~」
おいおい、蛮の実力なら大学で実績を残して、将来プロになれる可能性はあると思うけど、それまで僕は納豆とあさりの味噌汁の法則を見つける生活をしないといけないのか?
今年は受験生だから、横浜ボールパークでの弁当屋のアルバイトは自粛して、ちょっと受験生っぽく生活していたが、夏休みになったら両俣山荘での住み込みのアルバイトはしたいと思っているし、山岳部恒例の登山にも行くつもりでいる。
今年は八ヶ岳の赤岳に決まった。
しばらくの間、納豆とあさりの味噌汁は忘れさせて欲しいよ……
予選敗退が決まり、蛮は野球部を引退した。
高校入学以来、野球部中心の生活をしていたので、何もやることが無くなって気が抜けている様子だったので、横浜ボールパークの広島戦でも観に行こうっ!
と誘ってみた。
去年までは弁当を売りながら試合経過を確認して、弁当売りが終わった終盤は、こっそりスタンドで観戦していたが、純粋にチケットを購入して観戦するのは、高校に入学してから初めてではないか?
この日は引退した蛮を労う気持ちと、最後まで覚醒する条件を見つけられなかった償いみたいな気持ちもあって、僕が蛮を招待するような形で観戦することにした。
中学生の頃に、蛮も含めて野球部の仲間と何度も観戦しに来たが、お金が無いので外野席専門だった。
今日は今までのアルバイトで貯金もあるし、蛮の為に奮発して内野B指定席を購入した。
僕にとっても初めての指定席だ。
スタンド下の売店で、飲み物と軽食を買おうと思い列に並んでいると、見覚えのある後ろ姿を発見した。
「姉貴、今日は観にきてたんだっ!」
「あら、満。偶然ねぇ。あんたも来てたんだ」
「でぇ~ お姉さん、お久し振りですぅ~ でぇ~」
「あら、蛮君じゃない。偶然ねぇ」
「でぇ~ 香織先輩。何で居るんですかぁ~ でぇ~」
「何よ、居ちゃぁ悪いみたいな言い方しないでよっ! 今日は亜希子さんと一緒に来る約束をしてたのよ」
姉と香織先輩がどんな関係なのかは知らないが、姉はお兄さんの口利きでエキサイティングシートのチケットを持っているらしい。
僕と蛮の分も頼んでみれば良かった……
普段はケチな姉なのだが、今日は蛮が一緒だったので、コーラとフライドチキンとフライドポテトを奢ってくれた。
まさか後で請求されないよなぁ……
今日は両チームのエースと言われている今中投手と青木投手の先発だ。
青木投手は高校時代からお兄さんのライバルだったらしく、去年は新人王をお兄さんに奪われているので、ドルフィンズ戦は特に気合が入った投球をしてくる。
試合は予想通り息詰まる投手戦になった。
160キロに迫る速球をポンポン放って来る青木投手に対して、スピードでは負けているが、今中投手もキレのあるストレートと落差のあるチェンジアップを交えて対抗する。
スコアボードには両チームとも0が並び、八回の表まで終わった。
八回裏は打順良く一番の水野さんからだ。
「冬樹、打てぇ~!」
エキサイティングシートで姉と一緒に観戦している香織先輩の声が、B指定席まで聞こえた。
よく通る声だ。
でも今日の青木投手を打つのは簡単ではないだろう。
と思った初球だった。
少し振り遅れ気味に見えた水野さんの打球は、低い弾道でライトポール際のスタンドに入った。
プロ入り初ホームランだった。
お兄さんの高校の後輩だった水野さんにとっても、青木投手はライバルだったのだろう。
高校時代からの関係は、この先何年も続いて行くに違いない。
僕とは住む世界が違う気がした。
一点でもリードすれば、最終回はお兄さんの登場だ。
水野さんとの先輩後輩バッテリーは、今や他チームが恐れる絶対的存在になっている。
この日も魔球レベルのナックルボールが冴えまくり、今中投手との完封リレーを完成させた。
「でぇ~ 星よぉ~ 今日はいい試合だったのぅ 広島打線は裏をかかれて自分のスイングをさせてもらえてなかったように見えたぞ。
水野さんのリードが凄いんじゃないかのぅ? でぇ~」
流石はキャッチャーだ。
やはり見るところが違う。
「でぇ~ リードだけじゃない。決勝のホームランも狙い球を絞って打った感じだと思うぞ。
プロになるには体力的な技術だけではなく、頭脳的な技術も必要なんだなぁ……
俺ももっと勉強せんとイカンなぁ…… でぇ~」
いやいや、お前の洞察力や考え方も、既に高校生離れしてると思うぞ。
大学野球で頑張れば、必ずプロに注目される選手になれるんじゃないかと思う。
今日は蛮に元気になってもらいたくて誘って来たのだけど、元々そんなに落ち込んでいた訳でも無さそうだったし、お兄さんと水野さんの活躍が観れて良かった。
広島の青木投手も凄いピッチングだった。
来年大学生になったら、また弁当屋のアルバイトに来て、登山費用を稼ぎつつ、野球も楽しみたいなぁ……
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる