3 / 6
第3話
しおりを挟む
会長のおでこにキスをする。
会長の熱がマスク越しに伝わる。恐らく38度以上はあるだろう。
唇を離すと会長と視線がぶつかった。会長の瞳が潤んでいる。
ごめんなさい、ごめんなさい。私、会長にキスしちゃった。
断りもなしに。熱があるのをいいことに。
「会長、かなり熱があるでしょう。凄くおでこが熱いです」
笑って誤魔化した。
ベットに座って、会長に背を向けて、優しく何度も頭を撫でる。
「会長」
「眠っていいですよ。私、ずっとここにいますから」
「喉乾きませんか?」←
「喉乾きませんか?」
私はテーブルに置いてあるペットボトルを手にとると、会長の上体を起こそうとした。
「ん、持ち上がらないな。すいません、私の力じゃちょっと起こせそうにないです。口移しでもいいですか」
私は自分のマスクをとると、ペットボトルの中身を一旦口に含み、会長の口の中へと注いだ。
ところが。
だばだばだばー、と水分が会長の口から零れていく。流石に口移しは無理だったか。
私は自分の行いに後悔すると、そのまま会長の家を飛びだした。
>>>>やり直し
「眠っていいですよ。私、ずっとここにいますから」←
「喉乾きませんか?」
「眠っていいですよ。私、ずっとここにいますから」
会長は安心したのか、すやすやと寝息を立てて眠りはじめた。
良かった。
起きたら全部、忘れていてほしい。
私が会長の髪に触れたこと。私が会長のおでこにキスをしたこと。
どうか全部、忘れて。
暫くすると、会長の部屋の本棚にある本を一冊手にとってみた。
内容は、世界の終わりの話。
人類は遂に滅亡する。その瞬間まであと数時間。
例えばテレビの右下にあるワイプ画面。例えば街中にある大きなモニター。例えば選挙カーで演説するかの如く、「世界滅亡まであと○時間!」などと語る者。
世界中のありとあらゆるもの達が、世界の終わりまでのカウントダウンをする。
意識せざるを得ない環境に皆、不安を抱えたまま最期の時を過ごしている。
そして主人公である僕は何も出来ないまま、無事に最期の時を経て……。
そこまで読んだ私は。
本の最後のページに感想を書いた。←
こっそり涙を拭った。
本の最後のページに感想を書いた。
「明日人類が滅亡するとしたら、貴方はどう過ごしますか」
この問いに対する私の答えを書こうと思ったのだ。
『私は貴方と手を繋ぐ。私は貴方を抱き締める。私は貴方の傍にいる。これが答え。これがすべて。』
私の手は震えていた。こんな告白めいたもの、会長に見られたらおしまいだ。
どうか一生、気付かないで。気付かれてしまったら、私が塵となってしまう。
私はその本を閉じると。
あった場所に戻した。
さっきとは違う場所に戻した。←
さっきとは違う場所に戻した。
今ならまだ、あった場所に戻せる。それなのにわざと違う場所に戻したのは、気付かないでほしいと願いながら、本当は気付いてほしいから。
なんて浅ましい女。自分で自分がいやになる。
私は会長が目を覚ます前に帰ろうと、急いで家を飛びだした。
>>>>やり直し
あった場所に戻した。←
さっきとは違う場所に戻した。
あった場所に戻した。
これでいい。これならきっと、気付かない。少なくとも今は。
「ん」
「あ、会長。目が覚めましたか」
「そこで何してるんだ」
「会長の部屋、本が沢山あるなあって、見てたんです」
「そうか。気になるなら好きな本を手にとってくれていい」
「お気持ちはとても嬉しいですけど、今は会長の体調を治さないと。本ならいつでも読めますから。ね」
大丈夫。私の笑顔は完璧だ。
きっと会長は気付いていない。
会長の熱がマスク越しに伝わる。恐らく38度以上はあるだろう。
唇を離すと会長と視線がぶつかった。会長の瞳が潤んでいる。
ごめんなさい、ごめんなさい。私、会長にキスしちゃった。
断りもなしに。熱があるのをいいことに。
「会長、かなり熱があるでしょう。凄くおでこが熱いです」
笑って誤魔化した。
ベットに座って、会長に背を向けて、優しく何度も頭を撫でる。
「会長」
「眠っていいですよ。私、ずっとここにいますから」
「喉乾きませんか?」←
「喉乾きませんか?」
私はテーブルに置いてあるペットボトルを手にとると、会長の上体を起こそうとした。
「ん、持ち上がらないな。すいません、私の力じゃちょっと起こせそうにないです。口移しでもいいですか」
私は自分のマスクをとると、ペットボトルの中身を一旦口に含み、会長の口の中へと注いだ。
ところが。
だばだばだばー、と水分が会長の口から零れていく。流石に口移しは無理だったか。
私は自分の行いに後悔すると、そのまま会長の家を飛びだした。
>>>>やり直し
「眠っていいですよ。私、ずっとここにいますから」←
「喉乾きませんか?」
「眠っていいですよ。私、ずっとここにいますから」
会長は安心したのか、すやすやと寝息を立てて眠りはじめた。
良かった。
起きたら全部、忘れていてほしい。
私が会長の髪に触れたこと。私が会長のおでこにキスをしたこと。
どうか全部、忘れて。
暫くすると、会長の部屋の本棚にある本を一冊手にとってみた。
内容は、世界の終わりの話。
人類は遂に滅亡する。その瞬間まであと数時間。
例えばテレビの右下にあるワイプ画面。例えば街中にある大きなモニター。例えば選挙カーで演説するかの如く、「世界滅亡まであと○時間!」などと語る者。
世界中のありとあらゆるもの達が、世界の終わりまでのカウントダウンをする。
意識せざるを得ない環境に皆、不安を抱えたまま最期の時を過ごしている。
そして主人公である僕は何も出来ないまま、無事に最期の時を経て……。
そこまで読んだ私は。
本の最後のページに感想を書いた。←
こっそり涙を拭った。
本の最後のページに感想を書いた。
「明日人類が滅亡するとしたら、貴方はどう過ごしますか」
この問いに対する私の答えを書こうと思ったのだ。
『私は貴方と手を繋ぐ。私は貴方を抱き締める。私は貴方の傍にいる。これが答え。これがすべて。』
私の手は震えていた。こんな告白めいたもの、会長に見られたらおしまいだ。
どうか一生、気付かないで。気付かれてしまったら、私が塵となってしまう。
私はその本を閉じると。
あった場所に戻した。
さっきとは違う場所に戻した。←
さっきとは違う場所に戻した。
今ならまだ、あった場所に戻せる。それなのにわざと違う場所に戻したのは、気付かないでほしいと願いながら、本当は気付いてほしいから。
なんて浅ましい女。自分で自分がいやになる。
私は会長が目を覚ます前に帰ろうと、急いで家を飛びだした。
>>>>やり直し
あった場所に戻した。←
さっきとは違う場所に戻した。
あった場所に戻した。
これでいい。これならきっと、気付かない。少なくとも今は。
「ん」
「あ、会長。目が覚めましたか」
「そこで何してるんだ」
「会長の部屋、本が沢山あるなあって、見てたんです」
「そうか。気になるなら好きな本を手にとってくれていい」
「お気持ちはとても嬉しいですけど、今は会長の体調を治さないと。本ならいつでも読めますから。ね」
大丈夫。私の笑顔は完璧だ。
きっと会長は気付いていない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
姉の引き立て役の私は
ぴぴみ
恋愛
アリアには完璧な姉がいる。姉は美人で頭も良くてみんなに好かれてる。
「どうしたら、お姉様のようになれるの?」
「ならなくていいのよ。あなたは、そのままでいいの」
姉は優しい。でもあるとき気づいて─
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる