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第4話
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会長が元気になった。私がお見舞いに行ったことは覚えているようで、これはお礼にと一冊の本を貸してくれた。
その本は奇しくもあの日、私が手にとった本で、この本がお気に入りなんだと教えてくれた。
会長、知ってます。
そんなことは言えないので、ここは素直にありがとうございますと言っておく。
会長は何も言わないが、いったいどこまで覚えているのだろうか。
「感想、読み終わったら伝えますね」
放課後。机の上に本を広げて、私が書いた文字を指でなぞる。
「なんだ、まだいたのか」
「か、会長!」
私は咄嗟に本をぱたりと閉じた。
「誰か待っているのか? あんまり遅くならないようにしろよ」
「あはは。会長こそ、今帰りですか?」
「生徒会の仕事でな。書類整理してたんだ」
どうしよう。心臓の音、聞こえちゃうかも。
「あ、良かったら一緒に」
「へ」
「……ああいや、なんでもない」
一緒に。なんだというのだろう。会長は今、私に何を言おうとした?
聞いてみてもいいのかな。
聞く。←
聞かない。
聞く。
「か、会長。今、なんて言おうとしたんですか?」
「い、いや。別に対したことじゃないんだ。そもそもきみは人を待っているんだったな。迂闊だった、ごめん」
「私、誰も待っていませんよ」
「え、で、でも」
「私はただ、この本を読もうと思っただけです」
言いながら机の上にある本を会長に見せる。
「あ、ああそうか。読書の邪魔をしたな、ごめん」
会長、なんだか謝りすぎじゃないだろうか。
会長は何も悪くないのに。
「それで会長は、私と一緒に何をしたかったんですか?」
「ああー……ええっと」
いったい何を躊躇う必要が。こんな会長、見たことがない。
私は。
「会長、言って」
「会長、無理に言わなくてもいいですよ」←
「会長、無理に言わなくてもいいですよ」
「へ」
あんまり意地悪したら可哀想。
「そ、そうか。時間をとらせてごめんな。じゃあまた明日」
「はい会長、また明日」
>>>>やり直し
「会長、言って」←
「会長、無理に言わなくてもいいですよ」
「会長、言って」
多分、この期を逃したら会長は逃げるようにして帰ってしまう。
そんな勿体ないことはさせない。
「い、一緒、に」
会長は私から視線を外す。
私は会長をじっと見つめていた。
会長また、肌がほんのり赤く染まっている。
何をそんなに照れているの?
「一緒に帰らないか」
「へ」
「に、二度も同じことは言わない」
心臓の、音が。私も顔が、赤いかも。
「か、帰ります!」
私は勢いよく席を立つと、本を鞄にしまって会長の元に駆け寄った。
「か、会長」
「ん?」
「なんだか緊張しますね」
「隣、歩いていいですか」←
「隣、歩いていいですか」
「あ、ああ」
会長の隣、会長の隣。夢みたい。私、会長の隣を歩いている。
一歩間違えれば肩と肩が触れ合う距離。
手を伸ばせば届く距離に会長がいる。
ああもうだめ、心臓が口から出そう。
会長、どうして一緒に帰ろうなんて言ったんですか。ううん、ただの気まぐれだっていい。何か、何かお話した方がいいのかな。
本の話をする。←
黙って歩く。
本の話をする。
「そ、そういえばあの本、とても面白いですね」
「あ、ああそうだろう」
「明日人類が滅亡するとしたら、会長はどう過ごしますか?」
「そうだな。僕なら、好きな人に告白して塵となる……かな」
「……その言い方だと、なんだか会長に好きな人がいるみたいですね」
「そんな大層な人はいないよ」
「ほんとかなあ」
「……いないよ」
私って狡いな。自分が傷付きたくないからって、会長の言葉を茶化してる。
会長の、いないよの声のトーンの意味を考えないようにしてる。
話すんじゃ、なかったな。
自分から話を振っといて傷付くなんてばかみたい。
私は一歩。ほんの一歩だけ、会長から離れて歩いた。
>>>>やり直し
本の話をする。
黙って歩く。←
黙って歩く。
沈黙がつらい。もしかしたら会長の方から何か話題を振ってくれるかもと思ったのに、会長は黙ったまま。
こんなに距離が近いのに、心の距離は遠いみたい。
この空気に居た堪れなくなった私は一歩。ほんの一歩だけ、会長から離れて歩いた。
>>>>やり直し
本の話をする。←
黙って歩く。
本の話をする。
(早送り)
その本は奇しくもあの日、私が手にとった本で、この本がお気に入りなんだと教えてくれた。
会長、知ってます。
そんなことは言えないので、ここは素直にありがとうございますと言っておく。
会長は何も言わないが、いったいどこまで覚えているのだろうか。
「感想、読み終わったら伝えますね」
放課後。机の上に本を広げて、私が書いた文字を指でなぞる。
「なんだ、まだいたのか」
「か、会長!」
私は咄嗟に本をぱたりと閉じた。
「誰か待っているのか? あんまり遅くならないようにしろよ」
「あはは。会長こそ、今帰りですか?」
「生徒会の仕事でな。書類整理してたんだ」
どうしよう。心臓の音、聞こえちゃうかも。
「あ、良かったら一緒に」
「へ」
「……ああいや、なんでもない」
一緒に。なんだというのだろう。会長は今、私に何を言おうとした?
聞いてみてもいいのかな。
聞く。←
聞かない。
聞く。
「か、会長。今、なんて言おうとしたんですか?」
「い、いや。別に対したことじゃないんだ。そもそもきみは人を待っているんだったな。迂闊だった、ごめん」
「私、誰も待っていませんよ」
「え、で、でも」
「私はただ、この本を読もうと思っただけです」
言いながら机の上にある本を会長に見せる。
「あ、ああそうか。読書の邪魔をしたな、ごめん」
会長、なんだか謝りすぎじゃないだろうか。
会長は何も悪くないのに。
「それで会長は、私と一緒に何をしたかったんですか?」
「ああー……ええっと」
いったい何を躊躇う必要が。こんな会長、見たことがない。
私は。
「会長、言って」
「会長、無理に言わなくてもいいですよ」←
「会長、無理に言わなくてもいいですよ」
「へ」
あんまり意地悪したら可哀想。
「そ、そうか。時間をとらせてごめんな。じゃあまた明日」
「はい会長、また明日」
>>>>やり直し
「会長、言って」←
「会長、無理に言わなくてもいいですよ」
「会長、言って」
多分、この期を逃したら会長は逃げるようにして帰ってしまう。
そんな勿体ないことはさせない。
「い、一緒、に」
会長は私から視線を外す。
私は会長をじっと見つめていた。
会長また、肌がほんのり赤く染まっている。
何をそんなに照れているの?
「一緒に帰らないか」
「へ」
「に、二度も同じことは言わない」
心臓の、音が。私も顔が、赤いかも。
「か、帰ります!」
私は勢いよく席を立つと、本を鞄にしまって会長の元に駆け寄った。
「か、会長」
「ん?」
「なんだか緊張しますね」
「隣、歩いていいですか」←
「隣、歩いていいですか」
「あ、ああ」
会長の隣、会長の隣。夢みたい。私、会長の隣を歩いている。
一歩間違えれば肩と肩が触れ合う距離。
手を伸ばせば届く距離に会長がいる。
ああもうだめ、心臓が口から出そう。
会長、どうして一緒に帰ろうなんて言ったんですか。ううん、ただの気まぐれだっていい。何か、何かお話した方がいいのかな。
本の話をする。←
黙って歩く。
本の話をする。
「そ、そういえばあの本、とても面白いですね」
「あ、ああそうだろう」
「明日人類が滅亡するとしたら、会長はどう過ごしますか?」
「そうだな。僕なら、好きな人に告白して塵となる……かな」
「……その言い方だと、なんだか会長に好きな人がいるみたいですね」
「そんな大層な人はいないよ」
「ほんとかなあ」
「……いないよ」
私って狡いな。自分が傷付きたくないからって、会長の言葉を茶化してる。
会長の、いないよの声のトーンの意味を考えないようにしてる。
話すんじゃ、なかったな。
自分から話を振っといて傷付くなんてばかみたい。
私は一歩。ほんの一歩だけ、会長から離れて歩いた。
>>>>やり直し
本の話をする。
黙って歩く。←
黙って歩く。
沈黙がつらい。もしかしたら会長の方から何か話題を振ってくれるかもと思ったのに、会長は黙ったまま。
こんなに距離が近いのに、心の距離は遠いみたい。
この空気に居た堪れなくなった私は一歩。ほんの一歩だけ、会長から離れて歩いた。
>>>>やり直し
本の話をする。←
黙って歩く。
本の話をする。
(早送り)
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