橋本愛莉というおんな

まなづるるい

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第三章

21.

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 翌日、学校に行くと流がいた。

「おはよぉ愛莉」
「おはよ、流」

 そうだ、すっかり忘れてたけど、もしかしたら流が嘘を吐いてるかもしれないんだ。でも、どうやって話を切りだそうか。

「怪我、大丈夫? お風呂とかしみなかった?」
「大丈夫だよぉ。それより鹿児島には会えたの?」
「ううん、会えなかった」
「そっかぁ。ま、しょうがないねぇ。会えたら教えて」
「うん」

 鹿児島さんはずっと病院にいたよ。ねぇ、本当に鹿児島さんは学校にきたの?
 流が嘘吐いてるんじゃないの?
 その怪我は本当なの?
 聞きたいけど、聞くのが怖かった。絶対にどっちかは嘘を吐いてるはずで、だけど流はクラスの皆と保健の先生が、鹿児島さんは監視カメラが、それを本当なんだと主張してる。流やクラスの皆だけならまだしも、保健の先生まであたしに嘘を吐く理由は?
 監視カメラの方が本当なんじゃないの?
 だって、遠山さんがあたしに嘘を吐くなんて……大人が、看護婦さんが、なんのために?

「……流」
「なに?」
「傷、みせて」
「は?」
「傷、みたい」
「やだ、愛莉ってば趣味わるうい」

 傷があれば流を信じられる。あたしは流を信じたい。だからみせて。

「みせて」
「ちょ、やめてよ愛莉、もしかして嘘だと思ってんの?」
「思ってないよ。思ってないけど、みたいの」

 やめてよ流、そんなに拒まれたら信じられなくなるじゃん。あたしは流を信じたいんだってば。

「やっ……やぁぁぁ! やだっ、やだぁぁぁ!」

 周りの視線なんか関係ない。いま、此処で流を逃がしたらきっともうみせてもらえない。
 じたじたと暴れる流の包帯を無理やり取ると、しゅるしゅると包帯が地面に落ちていく。

「……え?」

 傷がない。流は怪我なんてしてなかったんだ。

「あーあ、だからやめてって言ったのに」
「嘘だったの……どうして……」
「そんなの、鹿児島を精神的に追い詰めるために決まってんじゃん」

 流はそこまでしてでも鹿児島さんをどうにかしたいの?

「流はなんでそんなに鹿児島さんが嫌いなの?」
「うざいから」
「あたしは鹿児島さんを虐めようとは思わない。むしろやるなら小長井さんでしょう?」
「だぁっていつまで経っても愛莉は行動しないんだもん。釘を刺すならとっとと刺せばいいのにばっかみたい。退屈だから鹿児島に嫌がらせしてやろうと思っただけだし」

 あたしがいつまでも小長井さんに釘を刺さないから、鹿児島さんに矛先が向くの?
 そんなことして鹿児島さんが本当に死んじゃったらどうするの?
 鹿児島さんは被害者じゃん。助けるべきなのは鹿児島さんで、傷つけていい対象じゃない。

「……わかった。いまから小長井さんに会いに行くよ」
「は?」
「ちゃんと釘を刺してくる。だから鹿児島さんにはなにもしないで」
「はぁ……お人好しぃ……ま、頑張ってぇ」

 あたしは流に小長井さんの家の場所を聞くと、制服のままそこに向かった。
 鹿児島さんを守るために、あたしが小長井さんに釘を刺す。流が鹿児島さんにしたことを絶対に後悔させてやる。
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