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第十一章
74.
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春なのに失恋した。街ゆく人達は皆、幸せそうなのにあたしだけ、あたしだけ。
目が覚める度に胸の辺りが苦しくて立ち上がれなくなる。寝ても覚めても加賀さんのことばかり思いだして苦しくなる。
こんなに苦しいのにあたしの身体は水分を欲し、食料を欲し、一定時間活動すればまた睡魔が襲ってくる。人間という生き物は薄情だ。心と身体が別々の感情を抱いている。
あたしはなにもしたくないのに、生きているだけで喉が渇く。お腹が空く。排泄がしたくなる。いつの間にか眠っている。
加賀さんとお花見に行きたかった。加賀さんと手を繋いでデートがしたかった。加賀さんともっと色んなことがしたかった。加賀さんとならなんだって楽しく感じられたのに。
こうなったのはあたしの所為。あたしが加賀さんからのプロポーズを断ったから。あたしが加賀さんとの関係を壊したんだ。
あたしが自分から壊しておいて、苦しいだなんておかしいよ。こんなに苦しい想いをするなら最初から断らなければよかったのになんて今更すぎる。もう何度、頭の中であの日をやり直したか。
『ね、愛莉さん。僕と結婚しよっか』
「うん、うん、あたし、加賀さんとなら結婚できる」
『結婚したいじゃなくて、できるんだ?』
「できるよ。加賀さんとならなんだって」
繰り返し、繰り返し、夢をみる。あたしと加賀さんが結婚を誓い合う未来を。
そして目が覚める度に絶望するの。ああ、やっぱり夢だったって。
加賀さんに会いたくて苦しい。もう何日。ううん、何週間会ってない?
ようやく鹿児島さんが学校にくるようになったのに、あれから学校にだって行ってない。
あたしが行こうって言ったのに。鹿児島さんが通いやすい環境作りをしてきたのにごめんなさい。ごめんなさい。
こんなふうに考えてるのはあたしだけかもしれないけど、鹿児島さんからしたらあたしなんていてもいなくても同じなのかもしれないけど。これは被害妄想なんかじゃない。だってあれから一度だって鹿児島さんはあたしに会いにこない。
それが答え。だからこれは被害妄想なんかじゃない。
もしかしたら他に友達ができたのかもしれない。だからあたしがいなくても平気なんだ。鹿児島さんは平気なんだ。あたしだけが苦しいんだ。
一人でいると考えちゃう。一人でいるから考えちゃう。誰かといなきゃと思っても、誰にも会いたくないから考えちゃう。
だめだだめだだめだだめだだめだ考えちゃうからだめなんだだめだめだめだめ。
誰かに必要とされたいのに、自分から手を伸ばすのが怖くて縮こまる。
いまは流もいない。高松、高松は?
そうだよどうして高松はこないの?
同じクラスになったんだから、あたしが学校休んでるの知ってるくせに、わかってるくせに。どうして心配で心配で落ち着かなくなって家まできたりしないの?
あたしとデートしたくせに。あたしとデートしたくせに!
あたしじゃなくてもよかったってこと?
今頃他の女といちゃいちゃしてるのかなぁ?
朝からずっと真っ黒なきもちばかりが身体中で疼いてる。
時間を確認するのも嫌で、いまが何時なのかもわからない。あたしは目が覚めてからずっとベットの中でひたすら寝返りを打っているだけ。
愛莉は今頃なにをしているのかな。加賀さんに振られてざまぁと笑っているのかな。そもそもどうしてあたしの中からでてこないんだろう。自分の意思ではでれないの?
だったらこのまま消えちゃいたい。あたしがあたしで有るうちに。
どうせ消えるならその前に一目でいいから加賀さんの姿を拝みたい。別に話さなくたっていいの。加賀さんの姿をこの瞳に焼きつけておきたいだけ。もうこれで最後だから、それくらい許してくれるよね。
そうと決まればあれだけ重たかった身体も軽く持ち上がり、何事もなかったかのように身支度を整える。ボサボサだった髪もブラシで元通り。わざわざ勝負下着に履き替えて服を着て、足取り軽く加賀さんのいる喫茶店へ。
喫茶店の前に着くと、あたしは中に入らず店内を覗きみる。姿さえ拝めればと思ってきたのだから、わざわざ中に入る必要はなかったのだ。
だが。
「……あれ?」
加賀さんがいない。もしかしたら奥の方で接客をしているのかもしれないとも思ったけど、いくら待っても加賀さんの姿はみえなかった。
いまは休憩中なのかな。それとも今日は休みなの?
ふと、店内に男性の店員さんらしき人をみかけたので、あたしは中に足を踏み入れた。
「いらっしゃいませ」
こんな店員さん、いたっけ。あたしが意識してないだけで元々いたのかもしれない。
「あ、あの。今日は加賀さんはおやすみですか?」
「加賀ですか? 加賀は先日、退職致しました」
「えっ、な、なんでですか?」
「どうやら実家に戻られるようで」
「実家って、何処ですか!」
「それは個人情報ですのでお答えできません」
「お願いです、教えてください!」
「それは個人情報ですのでお答えできません」
いくらあたしが食い下がっても、店員さんは教えてくれなかった。やめたなんて聞いてない。実家に戻るなんて聞いてない。あたしなにも聞いてない。あたしが一番、加賀さんの近くにいたはずなのに。
「加賀さん……何処に行ったの……」
誰か、誰か加賀さんの居場所を知っている人は。
「あ」
いるじゃないか、一人だけ。加賀さんの近くにいた人が。
『加賀さんの実家って知ってる?』
柚留ちゃん。あれ以来連絡がこなくなったあたしの義妹。
加賀さんに一時期飼われていた柚留ちゃんなら、加賀さんの実家もわかるかもしれない。返事がくるかどうかは微妙だけど。
お願い。もう柚留ちゃんだけが頼りなの。他に加賀さんと接点ある人なんて藍子さんくらいしかいないけど、藍子さんに会うということはお兄ちゃんに会う可能性が高いということで、藍子さんの家にいるお兄ちゃんはきっと藍子さんのことが好きだから、そんな二人をみたくないから、だから。
祈るようにスマホをギュッと握り締める。
『知らない』
柚留ちゃんからの返事に胸がギュッとなる。知らないなんて困るのに。知らないなんて困るのに!
このままじゃあたしが藍子さんに会いに行かなきゃならないじゃん!
このままじゃお兄ちゃんと鉢合わせちゃうかもしれないじゃん!
あたしを好きじゃないお兄ちゃんになんか会いたくない!
会いたくない!
会いたくない!
感情が一気に昂ったあたしは、気がつけば柚留ちゃんに鬼返していた。
『どうして?』
『どうして?』
『一番近くにいたくせに』
『どうして実家もわからないの?』
『困るよ』
『困るよ』
『困るよ』
『あのね』
『加賀さんがいなくなっちゃった』
『だから会いに行かないと』
『行かないと』
『いけないのに』
『どうして』
『なにも』
『なにも』
『知らないの』
『なにも』
あたしは無我夢中で文字を打っていた。支離死滅だと思われても構わない。あたしはいま、この瞬間に感じたきもちを吐露しないとあたし自身が壊れてしまいそうで怖かった。
最初はすぐに既読がついた。だけど途中で鬱陶しいと思ったのか、柚留ちゃんから着信が鳴る。
「……はい」
『八つ当たりもいい加減にしろよ』
それはとても落ち着きのある低い声だった。
「だ、だって、加賀さんが」
『なにがあったか知らないけど、こっちはいきなりでてけって言われて家から追いだされたんだよ。なんで追いだされたのかもわからないまま。だからこっちも二度と関わりたくないんだよね』
「それは、あたしもわからないけど……な、なんでもいいの、なにか知らない? 加賀さんと親しかった時にどんな話をしたとかさ」
どんなことだっていい。なんでもいいから加賀さんの情報が知りたくて、あたしは必死に食らいつく。
『だから知らんて。歴代のお友達にでも聞いたらいいじゃん。お友達なんて星の数ほどいるんだから、一人くらいなにか知ってるんじゃないの?』
「歴代のお友達って、加賀さんの相手のこと? ほ、星の数ほどはいないんじゃ」
『あっそ。数なんかどうでもいいわ。とにかく柚留はなんにも知らないから。こういう時だけ連絡してくるのやめて、うざい』
「そ、そう」
沈黙が続く。
『ていうかあんた、学校行ってないんだって?』
「え……なんで柚留ちゃんが知ってるの?」
『なんか噂になってたから』
噂になってた?
あたしが?
どうして?
いくら愛莉が目立つ存在だからって、あたしがたかが数日数週間学校を休んだくらいで噂になったりするだろうか。いや、ならないはずだ。誰かがなにかを言わない限り。でも、いったい誰が。
『中学と違って高校は義務教育じゃないからいいけどさ、大学行こうとか思ってんなら行った方がいいんじゃない? ま、どうでもいいけど』
「え?」
『えってなに』
「あ、いや。柚留ちゃんからそんなふうに言われるとは思ってなくてびっくりしたっていうか」
『は? 柚留をなんだと思ってんの?』
「だ、だって柚留ちゃん、あたしのこと嫌いでしょ?」
『うん。死ねばいいと思ってる』
「だ、だから、あたしが高校に行ってないからって行った方がいいんじゃない? とか言わないと思ってた」
そうだよ柚留ちゃんはあたしのことが嫌いだから、あたしがなにをしてたとしても無関心なんだと思ってた。
『まぁ、あんたはあいつとは違うから』
「え?」
『なんでもない。とにかく柚留はなんにも知らないから聞いてこないで』
「わ、わかった。あ、で、電話ありがとう、ごめんね?」
ぷつりと切れる通話音を聞きながら、あたしの頬は緩んでいた。
柚留ちゃん、あたしと愛莉を別々の人間としてみてくれているんだね。それが嬉しくて、さっきまで感じていた大きな不安が嘘みたいに消えていく。
大丈夫、落ち着いて。あたしが次にする行動は。
「あら、こんにちは愛莉ちゃん」
「……あの、お話があるんですけど」
目が覚める度に胸の辺りが苦しくて立ち上がれなくなる。寝ても覚めても加賀さんのことばかり思いだして苦しくなる。
こんなに苦しいのにあたしの身体は水分を欲し、食料を欲し、一定時間活動すればまた睡魔が襲ってくる。人間という生き物は薄情だ。心と身体が別々の感情を抱いている。
あたしはなにもしたくないのに、生きているだけで喉が渇く。お腹が空く。排泄がしたくなる。いつの間にか眠っている。
加賀さんとお花見に行きたかった。加賀さんと手を繋いでデートがしたかった。加賀さんともっと色んなことがしたかった。加賀さんとならなんだって楽しく感じられたのに。
こうなったのはあたしの所為。あたしが加賀さんからのプロポーズを断ったから。あたしが加賀さんとの関係を壊したんだ。
あたしが自分から壊しておいて、苦しいだなんておかしいよ。こんなに苦しい想いをするなら最初から断らなければよかったのになんて今更すぎる。もう何度、頭の中であの日をやり直したか。
『ね、愛莉さん。僕と結婚しよっか』
「うん、うん、あたし、加賀さんとなら結婚できる」
『結婚したいじゃなくて、できるんだ?』
「できるよ。加賀さんとならなんだって」
繰り返し、繰り返し、夢をみる。あたしと加賀さんが結婚を誓い合う未来を。
そして目が覚める度に絶望するの。ああ、やっぱり夢だったって。
加賀さんに会いたくて苦しい。もう何日。ううん、何週間会ってない?
ようやく鹿児島さんが学校にくるようになったのに、あれから学校にだって行ってない。
あたしが行こうって言ったのに。鹿児島さんが通いやすい環境作りをしてきたのにごめんなさい。ごめんなさい。
こんなふうに考えてるのはあたしだけかもしれないけど、鹿児島さんからしたらあたしなんていてもいなくても同じなのかもしれないけど。これは被害妄想なんかじゃない。だってあれから一度だって鹿児島さんはあたしに会いにこない。
それが答え。だからこれは被害妄想なんかじゃない。
もしかしたら他に友達ができたのかもしれない。だからあたしがいなくても平気なんだ。鹿児島さんは平気なんだ。あたしだけが苦しいんだ。
一人でいると考えちゃう。一人でいるから考えちゃう。誰かといなきゃと思っても、誰にも会いたくないから考えちゃう。
だめだだめだだめだだめだだめだ考えちゃうからだめなんだだめだめだめだめ。
誰かに必要とされたいのに、自分から手を伸ばすのが怖くて縮こまる。
いまは流もいない。高松、高松は?
そうだよどうして高松はこないの?
同じクラスになったんだから、あたしが学校休んでるの知ってるくせに、わかってるくせに。どうして心配で心配で落ち着かなくなって家まできたりしないの?
あたしとデートしたくせに。あたしとデートしたくせに!
あたしじゃなくてもよかったってこと?
今頃他の女といちゃいちゃしてるのかなぁ?
朝からずっと真っ黒なきもちばかりが身体中で疼いてる。
時間を確認するのも嫌で、いまが何時なのかもわからない。あたしは目が覚めてからずっとベットの中でひたすら寝返りを打っているだけ。
愛莉は今頃なにをしているのかな。加賀さんに振られてざまぁと笑っているのかな。そもそもどうしてあたしの中からでてこないんだろう。自分の意思ではでれないの?
だったらこのまま消えちゃいたい。あたしがあたしで有るうちに。
どうせ消えるならその前に一目でいいから加賀さんの姿を拝みたい。別に話さなくたっていいの。加賀さんの姿をこの瞳に焼きつけておきたいだけ。もうこれで最後だから、それくらい許してくれるよね。
そうと決まればあれだけ重たかった身体も軽く持ち上がり、何事もなかったかのように身支度を整える。ボサボサだった髪もブラシで元通り。わざわざ勝負下着に履き替えて服を着て、足取り軽く加賀さんのいる喫茶店へ。
喫茶店の前に着くと、あたしは中に入らず店内を覗きみる。姿さえ拝めればと思ってきたのだから、わざわざ中に入る必要はなかったのだ。
だが。
「……あれ?」
加賀さんがいない。もしかしたら奥の方で接客をしているのかもしれないとも思ったけど、いくら待っても加賀さんの姿はみえなかった。
いまは休憩中なのかな。それとも今日は休みなの?
ふと、店内に男性の店員さんらしき人をみかけたので、あたしは中に足を踏み入れた。
「いらっしゃいませ」
こんな店員さん、いたっけ。あたしが意識してないだけで元々いたのかもしれない。
「あ、あの。今日は加賀さんはおやすみですか?」
「加賀ですか? 加賀は先日、退職致しました」
「えっ、な、なんでですか?」
「どうやら実家に戻られるようで」
「実家って、何処ですか!」
「それは個人情報ですのでお答えできません」
「お願いです、教えてください!」
「それは個人情報ですのでお答えできません」
いくらあたしが食い下がっても、店員さんは教えてくれなかった。やめたなんて聞いてない。実家に戻るなんて聞いてない。あたしなにも聞いてない。あたしが一番、加賀さんの近くにいたはずなのに。
「加賀さん……何処に行ったの……」
誰か、誰か加賀さんの居場所を知っている人は。
「あ」
いるじゃないか、一人だけ。加賀さんの近くにいた人が。
『加賀さんの実家って知ってる?』
柚留ちゃん。あれ以来連絡がこなくなったあたしの義妹。
加賀さんに一時期飼われていた柚留ちゃんなら、加賀さんの実家もわかるかもしれない。返事がくるかどうかは微妙だけど。
お願い。もう柚留ちゃんだけが頼りなの。他に加賀さんと接点ある人なんて藍子さんくらいしかいないけど、藍子さんに会うということはお兄ちゃんに会う可能性が高いということで、藍子さんの家にいるお兄ちゃんはきっと藍子さんのことが好きだから、そんな二人をみたくないから、だから。
祈るようにスマホをギュッと握り締める。
『知らない』
柚留ちゃんからの返事に胸がギュッとなる。知らないなんて困るのに。知らないなんて困るのに!
このままじゃあたしが藍子さんに会いに行かなきゃならないじゃん!
このままじゃお兄ちゃんと鉢合わせちゃうかもしれないじゃん!
あたしを好きじゃないお兄ちゃんになんか会いたくない!
会いたくない!
会いたくない!
感情が一気に昂ったあたしは、気がつけば柚留ちゃんに鬼返していた。
『どうして?』
『どうして?』
『一番近くにいたくせに』
『どうして実家もわからないの?』
『困るよ』
『困るよ』
『困るよ』
『あのね』
『加賀さんがいなくなっちゃった』
『だから会いに行かないと』
『行かないと』
『いけないのに』
『どうして』
『なにも』
『なにも』
『知らないの』
『なにも』
あたしは無我夢中で文字を打っていた。支離死滅だと思われても構わない。あたしはいま、この瞬間に感じたきもちを吐露しないとあたし自身が壊れてしまいそうで怖かった。
最初はすぐに既読がついた。だけど途中で鬱陶しいと思ったのか、柚留ちゃんから着信が鳴る。
「……はい」
『八つ当たりもいい加減にしろよ』
それはとても落ち着きのある低い声だった。
「だ、だって、加賀さんが」
『なにがあったか知らないけど、こっちはいきなりでてけって言われて家から追いだされたんだよ。なんで追いだされたのかもわからないまま。だからこっちも二度と関わりたくないんだよね』
「それは、あたしもわからないけど……な、なんでもいいの、なにか知らない? 加賀さんと親しかった時にどんな話をしたとかさ」
どんなことだっていい。なんでもいいから加賀さんの情報が知りたくて、あたしは必死に食らいつく。
『だから知らんて。歴代のお友達にでも聞いたらいいじゃん。お友達なんて星の数ほどいるんだから、一人くらいなにか知ってるんじゃないの?』
「歴代のお友達って、加賀さんの相手のこと? ほ、星の数ほどはいないんじゃ」
『あっそ。数なんかどうでもいいわ。とにかく柚留はなんにも知らないから。こういう時だけ連絡してくるのやめて、うざい』
「そ、そう」
沈黙が続く。
『ていうかあんた、学校行ってないんだって?』
「え……なんで柚留ちゃんが知ってるの?」
『なんか噂になってたから』
噂になってた?
あたしが?
どうして?
いくら愛莉が目立つ存在だからって、あたしがたかが数日数週間学校を休んだくらいで噂になったりするだろうか。いや、ならないはずだ。誰かがなにかを言わない限り。でも、いったい誰が。
『中学と違って高校は義務教育じゃないからいいけどさ、大学行こうとか思ってんなら行った方がいいんじゃない? ま、どうでもいいけど』
「え?」
『えってなに』
「あ、いや。柚留ちゃんからそんなふうに言われるとは思ってなくてびっくりしたっていうか」
『は? 柚留をなんだと思ってんの?』
「だ、だって柚留ちゃん、あたしのこと嫌いでしょ?」
『うん。死ねばいいと思ってる』
「だ、だから、あたしが高校に行ってないからって行った方がいいんじゃない? とか言わないと思ってた」
そうだよ柚留ちゃんはあたしのことが嫌いだから、あたしがなにをしてたとしても無関心なんだと思ってた。
『まぁ、あんたはあいつとは違うから』
「え?」
『なんでもない。とにかく柚留はなんにも知らないから聞いてこないで』
「わ、わかった。あ、で、電話ありがとう、ごめんね?」
ぷつりと切れる通話音を聞きながら、あたしの頬は緩んでいた。
柚留ちゃん、あたしと愛莉を別々の人間としてみてくれているんだね。それが嬉しくて、さっきまで感じていた大きな不安が嘘みたいに消えていく。
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