上 下
17 / 29

第17話本当の被害者

しおりを挟む
(一撃で仕留めないとミガニシとオンガの様にやられる。ここで一気に電気を流しこんでやる)
電気を拳一点に集め、ヒカルは攻撃を仕掛ける。
「攻撃体勢を確認。これよりリアリティビジョンシステムを起動する」
タッグパートナーであるオールフュージョンが出現し、データベースの山札からカード4枚引く。
「ドロー」
手札を1枚加え、5枚になる。
「私はリボルバーブースターを召喚し、オールフュージョンのパートナースキルでプレイヤーに装備する」
リボルバーブースターは変形し、バイロンの左腕に装備される。
「やめろバイロン! そんな事しても意味がないだろ!」
「私は戦闘用に改造された。だから私の意思では止められない」
説得も虚しく、銃口をヒカルに合わせ、トリガーが引かれる。
銃弾が撃ち出され、ヒカルの方へ飛んで行く。
しかしヒカルの電撃によって、銃弾は消し炭になる。
(捉えた!)
拳を突き出す、次の瞬間。
「ディフェンスアイテム、スキルジャマーを発動。相手のスキルをこのターンだけ無効化する」
電気が打ち消され、さらに右手で首を絞められる。
「やめろ、やめてくれ」
「ケン、本当にすまない」
力を加え、バイロンはヒカルを殺そうとする。
しかしもう1人の雇われ屋、白髮のヤマトがケンを取り押さえようとするのをやめ、バイロンの右腕を眷属の力で強化した警棒で切り裂いた。
「バイローーーーーーン!?」
「ケン・・・・・早く・・・・・逃げろ」
「バイロン・・・・・」
バイロンはデータベースからカードを引く。
「私はアタックアイテム・・・・・ミサイル炸裂を発動・・・・・相手のフォロワーを1体破壊する」
効果によって、突然ミサイルが出現し、ヤマトに向かって飛んで行く。
ケンはバイロンが自分を逃がすためにやった事だと思い、その場から逃げ出す。
「待て!」
犯人を逃すわけにはいかない。
ヒカルはケンを追いかけ、その場を離れた。
命中したミサイルは炸裂し、ヤマトの体は爆発に巻き込まれる。
(この痛み、なにかが違う)
生存反応の確認が終了し、ケンを追いかけようとする。
「待てよ」
後ろ振り返ると、倒したはずのヤマトが無傷でそこにいた。
「お前は・・・・・今私の手で殺したはず」
「俺は不死身だからな、そして知った。お前の殺害プログラムの全貌を」
「そんな事で私は動揺などしない」
「お前のシステムの中に相手の脳を刺激する電波を流す発信プログラムがある。脳には様々な可能性があるが、それを逆手にとった。脳のすべてを一瞬だけ覚醒させ、一種の催眠波で自分を吹き飛ばす様に命令し、あたかもゲームの影響で吹き飛ばされた様に見せかけた。タッグバレットと言うゲームを利用していたのは武器が多く登場するため使いやすかったから。まあ簡単に言うとこうだ。利用されたゲーム会社とそのプレイヤー、そして残された遺族に壊れて償え」
罪の重みを伝えたところで、ヤマトは一気に加速し、かかと落としをバイロンにくらわせようとする。
「バトル」
銃口をヤマトに向け、迎撃しようとしたが、接近された状態では分が悪く、かかと落としが顔に命中、まるでプレス機で潰されるようにバイロンの頭はグチャグチャになった。
(こいつの頭を壊したところでメインカメラを殺っただけ。次は心臓部であるCPUを・・・・)
敵を踏み台にし、高く飛び上がる。
右腕を眷属の力で強化し、後ろに引く。
(この吸血鬼の腕でぶち壊す!)
落下し、くうを切る音をセンサーが感知し、リボルバーブースターの銃口をヤマトに向ける。
放たれた銃弾をまともに受け、脳が100%と覚醒し、催眠波を受ける。
それが仇になるともバイロンは知らずにいた。
「俺にはそんな催眠術は効かねえよ」
吸血鬼の眷属家族であるヤマトに催眠術など通じない。
身体能力を底上げされたまま、 拳が唸る。
一瞬にして殺人マシン本当の被害者は破壊され、爆発を引き起こした。

一方その頃、ヒカルはケンを捕らえ、警察に車で連行しようとしていた。
「バイロンをどうするつもりだ!」
「破壊する、それだけだ」
「なんだと!」
「いいのか? 罪が重くなるぞ」
「俺は行方不明になっていたバイロンの本当の利用者だ! 改造されててかなりびっくりしたけど、バイロンをちゃんと直してやれば元の友達ロボットに戻る!」
「それは法廷で言ってくれないか。俺達の仕事は戦闘用ロボットの破壊とそれを利用している犯罪者の身柄を警察に届ける事だ。話を聞いてやる筋合いはない」
ヒカルが呆れた表情でケンを見ていると、自動運転車が急に止まる。
思わず前の窓を確認する。
黒く、赤い複眼の戦士が素立ちしていた。
ヒカルは車から降り、ドアを閉める。
今のうちにケンは外に出ようとするが、オートロックをされてしまい、出る事はできない。
「なんだお前は?」
「悪に名乗る名前はない」
戦士の言葉に鼻で笑うヒカル。
「悪? お前は正義のヒーローを気取っているのか? この世に正義も悪もない」
「子どもだと思うなら笑え、俺はお前を殺すだけだ」
戦士であるセイギは戦闘体勢に入り、一気に加速する。
「なっ」
だが電撃の一斉照射により、肉体から血が吹き出し、蒸発し、膝をついた。
「俺に無駄で、ボランティア的なことをさせるな。迷惑なんだよ。お前」
左手に電気を集め、構えながらゆっくりと黒き戦士にヒカルは向かって行く。
「大丈夫かセイギ?」
腰に巻かれたトランスフォームが黒き戦士であるセイギを心配する。
「トランスフォームのおかげでなんとかな。だが今回の敵は手強そうだ」
その黒き戦士はサイコキラー。
その雇われ屋は電気を操る能力者。
果たして、生き残るのはどちらなのだろうか。
しおりを挟む

処理中です...