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リナリアの本質
しおりを挟むカーネリアンはリナリアに恋情を抱いているが、リナリア本人も、周囲にもその事実に気付く者はいない。
彼は普段、好きな人に特別構われているのに、喜ぶ素振りはまるで無い。
その時の態度は、好意を仄めかすものではなく、リナリアの自己中心的態度に、嫌気がさしているようにも見えた。
カーネリアンが、そう見えるように意図して行動していたからだ。
最初は確かに、気にくわない部分もあった。
だが、一緒にいればわかることもある。
リナリアが自分を偽っていることに、カーネリアンは薄々気付いていた。
強気で、我が儘で、驕っている、というのが、リナリアに対する共通認識である。これだけ聞くと、何故リナリアが人気者なのか分からないだろうが、彼女の類いまれなる美貌は、全ての欠点を補って余りあるものだ。
カーネリアンもその容姿の美しさに見惚れたことがないと言えば、嘘になる。
それでも見ためだけで好きになった訳ではない。
本音が言えなくて、自信がなくて、母思いなリナリア。
カーネリアンは共に過ごすうちに、リナリアの本質を垣間見た。
恐らく、気が滅入った時などに、ふと滲み出ていたのだと思う。
表面上の彼女と、内なる彼女の印象には、隔たりがあった。
気付いてしまえば、無性に優しくしたくなった。
非常にいじらしく思えて仕方がない。
つまりは、その頃から好きになっていたのだろう。
友人を名乗っていた周囲の、手のひらの返しようには呆れてものが言えない。
表立って好意を示しているわけではないカーネリアンはともかく、散々持ち上げて助長してきた連中が、誰もリナリアの味方になってやらないのだ。
神様の恩恵を受ける街、と名高い場所では、呪い持ちとはそれだけ異質で、受けいれ難いことなのかもしれない。
それにしても、リナリアが哀れだった。
話すことの出来ないリナリアは、嘘をつけなくなったようなものだ。
強気な発言で誤魔化すことが出来ないため、表情からよく読み取れてしまう。
不安な時も、安堵の瞬間も、感謝の気持ちも、リナリアは潤む瞳で伝えてきた。
健気で美しいそれは、カーネリアンだけが見ることが出来た。不謹慎だが、純粋に嬉しかった。
端的に言えば、カーネリアンはリナリアの気を引くために、無愛想に接していたのだが、その結果好かれると思ったことはない。
まして恋人になれるはずもないと思っていたし、精々他と違う、と認識されるために行動していた。
カーネリアンは初めから諦めていた。
勝算のない賭けはしないのだ。
大多数に埋もれて、信者のように遠くから眺めるなんて御免である。
リナリアから向けられる感情が、無関心以外であればよい方だろうと、身の程を弁えていた。
それが、どうだろう。
リナリアが辛く悲しい思いをしているというのに、好機だと思っている。
このような仕打ちに、確かに憤っていたというのに、リナリアを拒絶した人達を出し抜けると思っている。
孤立したリナリアの、唯一の味方になれる。
彼女が、不安を湛えた表情で、カーネリアンを頼ってくれる。
想像して浮かんだ感情は……愉悦だった。
今なら、優しくしても、リナリアは離れていかない気がした。
だから、リナリアに親切にすることを、カーネリアンは自分に許した。
教会の一件から幾日か過ぎても、街の人々のリナリアに対する態度は軟化しなかった。
笑顔で負けてくれた店の人にも、リナリアが手振りで買いたいものを伝えても、「黙ってちゃわかんないよ」と冷たくあしらわれる。
筆談しようとすれば、それを待たずに皆離れていってしまう。
リナリアは辛かったが、何とか耐えていた。母の存在と、カーネリアンが変わらず側に居てくれることが救いだった。
カーネリアンはリナリアと距離を置かなかったが、周囲とも角がたたないように、上手く立ち回っているようだ。
フリージアのことも耳に入った。
極々弱いが、神様の加護を受けているらしい。
以前のリナリア程ではないが、羨望の的になっていた。
時々、何か言いたげなフリージアと遠くから目が合うことがあったが、周りが二人を近づけさせまいとしていたので、会う機会はなかった。
リナリアは反省していた。
以前の自分の態度もそうだが、今の状態になって、フリージアの気持ちがわかった気がした。
彼女はきっと、リナリアの言葉に酷く傷付いたはずだと、今更だと思いながら、心が傷んだ。
謝りたくても、謝れない日々だった。
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