インチキ霊媒師のキョウセイ異世界除霊旅

なぐりあえ

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五話

実録!真夜中の恐怖体験!

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俺は聖都に戻る旅を続けていた。途中悪霊と化したカクタスを同行者として向かい入れた。馬車の中には首無し騎士に骸骨の神官が相席している何とも愉快な地獄絵図が広がっていた。このまま馬車に火をつければ完璧だろう。俺は御免こうむるが。
 カクタスがリッチーとなり徘徊していたアナスタシアの街は今や誰もいない。俺に浄化を頼んだ修道士にもその事を伝えると泣いて喜んだ。また一つ御使様の伝説を作ってしまった。
 あまり目立つとろくなことがないのは知っている。元々教会から目をつけられている身だが流石に色々やり過ぎだ。暗殺されるのも時間の問題な気がする。
 もう一つ懸念事項がある。剣の達人の元騎士団長グラジオラスにスケルトンの軍団を操れるカクタス。これだけでも危険視される。自分の身を守る為とはいえ過剰戦力だ。いざとなったら強制的に成仏されるのも手かもしれない。それだけの爆弾を俺は抱えている。
 二人の取り扱いを考えていると御者台に座るメリアが声をかけてきた。
「そろそろ街に到着します、何処か隠れる所を探しましょう」
 この化け物二人を街に入れる訳にはいかないので街の周囲にある森に化け物共を置いていく。
 グラジオラスもカクタスが仲間になって寂しくないだろう。二人で大人しく過ごしてな。俺はここの教会に泊まるからな。
 行きの旅程にもこの街の教会に泊まった。大きな街で至る所綺麗に整備されており過ごしやすかった。もちろん教会も大きく素晴らしい泊まり心地であった。
 時間があるなら観光するのもいいだろう。運河があり様々な物が入っているらしく、店の品揃えも豊富で中々楽しめそうである。
 日本にいた時は除霊に呼ばれて行った街の観光をするのも仕事の楽しみであった。
 馬を馬宿に預けてメリアと二人で街を行く。相変わらずメリアは人気者で街行く人に声を掛けらていた。
 教会に着くと年老いた男の司祭と若い男の司祭が深刻そうな顔で話していた。
「おや、メリア様とウンスイ様。おかえりなさいませ」
 年老いた司祭がこちらに気付いて挨拶をした。彼はここの教会の人間であり既に行きで会っている。
「すまない、取り込み中であったか?」
「いえ、私の事はお気になさらず」
 若い司祭は遠慮して一歩後ろに下がった。
「待ちなさい、メリア様に相談してみては?」
 年老いた司祭が若い司祭を引き留めた。何だかやな予感がする。そしてメリアはこの相談事に必ず首を突っ込む筈だ。
「私で解決出来るなら何でも言ってくれ」
 ほら見ろ。安請け合いするんじゃないぞ。

 俺にはどうする事も出来ない相談であった。
 この辺りを任せられている領主、ルーピン・プティーは強欲な男らしい。この街の運河を通る時に徴収する通行税でかなりの資産を形成していた。それによりこの街も発展して素晴らしい景観を誇っている。
 しかし彼が任されているのこの街だけではなく、街の周囲には他に幾つかの村も存在する。そこの村には多額の税負担を強いているそうだ。
 通行税で領は潤っているのに税金は安くならず、更に厳しい取り立てをしており村の人間は生活が立ち行かないそうだ。
 ルーピンにとってこの街と運河にしか興味が無く、他の村では搾れるだけ搾り取ろうとしているのだ。廃村しても運河あるので税の心配はないのでやりたい放題らしい。
 そんな状況を見かねた村の司祭がこの街の司祭に相談に来た。その時にタイミング良くメリアが訪れた。そう言う訳である。
 なら俺は関係ない。相手は教会でも悪霊でもない。メリアもどうする事も出来ないからさっさと断れ。
「分かりました。私が直接領主に直談判します!」
 こいつ……マジで何考えてるんだ。
「ありがとうございます、メリア様、御使様」
 何故かしれっと俺も含まれている。そうなると嫌だとは言えない。
「僕もやれるだけの事はやってみます」
 笑顔で嫌々承諾した。解決するとは言っていない。
 空いた時間で街の観光をしたかったがとんだ予定が入ってしまった。ならさっさと領主のとこに行って断られてくるか。
 足早に外に出たメリアを俺は渋々追いかけた。何も考えていないのだろう。それでもメリアの目は正義に燃えていた。

ルーピンは庁舎にいるらしいので取り敢えずそこに向かった。どうせ門前払いされると思っているのでメリアに大人しくついて行く。
 こんな面倒事にも首を突っ込むからメリアは市民に人気なのだろう。それで解決するならいいがイタズラに敵を作るだけだろう。こんな生き方は俺には出来ない。例え市民から感謝されようが大金を得ようがだ。
 
 立派な庁舎に着くとメリアは受付でルーピンへの面会を頼んだ。神聖騎士であるメリアが突然来たことにより周囲はざわついている。もちろん受付も何か重大な事件が起きたのかと勘繰り裏にバタバタと引っ込んで行った。
 神聖騎士団と言うのは随分影響力があるのだと実感した。アポ無しで来て追い返される事なく直ぐに対応してもらえるのだから。
 俺達は直ぐに応接室に案内された。応接室にはやたらと高そうなソファにテーブル、絵画、彫刻等が置いてあり、この街がいかに儲けているのかよく分かった。
 大きな窓からは運河が見え多くの船が行き交っている。この賑わいこそ街の発展に繋がっているのだと実感できた。やはりいい街だ。何かあったらここに逃げ込もう。
 そんな明るくも後ろ向きな将来設計を考えていると応接室の扉が開いた。そこにはやたらと身なりのいい肥満気味な中年男性が立っていた。ニヤニヤと下心がありそうな下品な笑みを浮かべながら男は俺達の前に立った。
「大変お待たせしました。私が領主のルーピン・プティー伯爵です。噂の神聖騎士であるメリア・アルストロ様にお会いできるとは、何という幸運でしょう」
 ルーピンはあからさまなゴマスリをしている。
「やや!もしやそちらのお方は噂の御使様では?大変噂になっております、メリア様と各地で除霊の旅をしているとか。お会いできて光栄です」
 ルーピンは俺にもわざとらしいゴマスリをする。メリアの表情は硬いままだが俺は柔らかな表情で応対する。
 あれこれ騒いだルーピンはようやくソファに座った。するとメリアはいきなり本題を切り出した。
「ルーピン殿に周辺の村から減税の嘆願が出ている」
「ほう、その様な事が」
「ええ、村の代表が私に頼んできたのだ」
「しかし、周囲の村はこの街よりだいぶ税は少ないはずです」
「それでも生活が立ち行かなくなっているそうだ。この街の税が高くてもやっていけるのは運河があり栄えているからではないか?」
「メリア様、何か勘違いされておられる。それならこの街でなくとも周囲の村々は運河の恩恵を受けています。遠い異国の果実に織物、どれも他の領では手に入らないものです。それなのにその恩恵にただ乗りするのは如何かと」
「しかし」
「それにこの税はしっかりと聖都の方に確認をとって決定したものです。何か不備があれば教皇様に」
 メリアは反論出来なくなってしまった。そもそもメリアは弁が立つ奴じゃない、無策に乗り込んでも何とかなるわけがない。
「メリア様、プティー様も公務で忙しいでしょうから今日は帰りましょう」
「おやそうですか。そうだ、今日の晩私の屋敷で晩餐会があるのですが是非ともご参加願いたい」
「いいのですか?私どもがお呼ばれして」
「何を仰る。お二人がお越しいただければ会場も盛り上がるでしょう。各国から取り寄せた美食の数々をお楽しみください」
「それは今から楽しみです」
 プティーの晩餐会の誘いを受けて俺達は庁舎から出た。メリアは何一つ納得していない様子である。
 
 少し歩いたところでメリアは俺の腕を引っ張り裏路地へと連れ込み壁に押し付けた。痛い。壁に頭をぶつけた。
「どうして尻尾を巻いて逃げた!」
「じゃあどうやって説得するつもりだった?反論出来てなかったじゃないか」
「それは……粘り強く……」
「あの話は教皇が出てきた時点で勝ち目は無いんだよ」
「なら直接教皇様に!」
「知らない訳無いだろ。教皇もグルだよ。この街は潤っているから多額な寄付金を出してんだろ?教会は金出すやつには自由にさせる。そう言うもんだ」
「ぐっやはり我々が教会を変えるしかないのか」
 また正義に燃えてる。こんな事に首を突っ込むから嫌われてんのに。
「ウンスイはプティーの話に納得しているのか」
「してないね。運河の恩恵とか言ってるが日々の暮らしに珍しい調度品なんて要らない。村の人間は高値の輸入品なんて買えやしない」
「それなのによくあの場で笑っていられたな」
「特技だからな」
 メリアは軽蔑した目で俺を睨んでくる。いつもの事だ。
「まあ、俺もああいうゴミクズ野郎が気に入らないから手を貸そう」
 メリアは驚いた様な顔をしている。
「何だよ。なんか文句あるのか」
「いや、まさかお前がそんな事を言うとは」
「そう言う時もあるんだよ。ほらさっさと行くぞ。準備がある」
 俺はこの薄暗い路地裏から表へ出た。後頭部はまだ痛む。
「何か策があるのか?」
「やらないよりはマシ程度だよ」
 俺は後頭部を摩りながら歩いていく。


「領主様、迎えの馬車が来ております」
「すぐ行く」
 全く時間通りに来ないとはとんだ御者だ。このルーピン伯爵を待たせるとは。
 執務室から出た私はこの庁舎で働いている者から頭を下げられ出ていく。無能共ばかりだが頭を下げられるのは気持ちいい。この征服感はいつも堪らない。
 それにしてもあの教皇の犬め。少し調子に乗らせておけば好き勝手に言いよって。自分の立場を理解していない様だな。いくら教皇がこの国を支配しているとは言え、金を出している貴族には逆らえないのだ。そんな簡単な仕組みも理解出来ないとはやはり剣を振るだけしか能の無い奴等よ。
 教皇も教皇だ。飼い犬には首輪を着けて噛み付かない様に躾けてもらわないとな。明日になったら教皇に苦情を伝えるか。そうすればあの小娘も黙るであろう。
 それと気になったのがあのウンスイとか言う奴だ。本当に御使なのか?威厳も何も感じなかった。ニコニコ笑っているだけで何も言わなかったのが気になる。敵意は無いようだが小娘と一緒に来たのだ、何か文句の一つでも言うと思ったのだが。
 しかし小娘よりは話が通じる相手であった。何がしたいのだアイツは。教皇も何故あんな奴を野放しにしておくのだ。
 そうこう考えているうちに馬車の前まで来た。
「遅いぞ何をしていた!」
「申し訳ありません」
 御者は馬車の扉を開けた。動きもぎこちなく慣れていないのが分かる。やたらとブカブカの外套を羽織っているのも気に入らない。最近では仕事ができる奴が減ったな。御者一人とってもこの程度だ。
「早くだせ!」
「はい!」
 全く、どいつもこいつも私を苛立たせおって。こちらが命令しないと何一つ出来ん。これだから育ちが悪い奴らは嫌いなのだ。
 まずは屋敷に戻ってから着替えて、それから会場に向かうのだが、使用人共は気を利かせて服を用意しているだろうか。アイツらも何年働いても鈍臭くて気が利かなくて役立たずばかりだ。金でどこかの屋敷の使用人を引き抜いてもいいかもしれないな。教育するのも手間だし、金なら幾らでもある。
 ん?何だ?何処に行くんだ。こっちじゃないぞ。
「おい!何処に向かっておる!まずは私の屋敷に向かえ!何をしているんだ!この役立たず!」
「……」
「おい!聞いているのか!」
 聞こえないのか?全く面倒だ。窓を開けるしかないか。
「おい!屋敷に向かえ!何処に行くつもりだ!」
「……」
「おい!……ひい!お前……首が……無い?」
 御者を見ると身体は確かに馬の手綱を握っている。だが明らかにおかしい。何でコイツには首が無いんだ。何でだ。振り返った。こっちを見た。いや見てない、顔が無いからだ。じゃあ何で動いているのだ。何で首が。手を伸ばしてきた。
「ひいいいいいぃぃぃ!!」
 私は勢いよく馬車から飛び降りた。転びそうになりながらも何とか着地して走っていく。ここは何処だ。街の外れの森か?何でこんな所に。それより迎えに来た御者は?初めからか?そんな事どうでもいい早く逃げないと。奴が降りてきた。追ってくる!首が無い!なのに歩いている!
 辺りは暗く何も見えない。とりあえず来た道を戻らないと。幸いな事に遠くに人集りが見えた。よかった助かった。
「おい!お前ら!私を助けろ!この地の領主!ルーピンだ!」
 人集りが私に気付いた。ゆっくりとこちらに向かってくる。これだけ人がいればあの首無しに対抗出来るだろう。
 安心したのも束の間、月明かりに照らされた人集りは、
「骸骨……」
 人じゃない。スケルトンだ。何故こんな所に魔物の群れが。それより逃げないと。後ろからは首無し、前はスケルトンの群れ。今は森の中に!
 暗く見通しの悪い森の中に逃げ込んだ私は必死に走った。肺が潰れそうになっても足の感覚が無くなっても兎に角がむしゃらに進んでいく。
 行く先々でスケルトンが現れてその度に追いかけ回される。今や森の何処にいるかも分からない。何で私がこんな目に。
 森の出口も分からず彷徨っていると遠くに小さな光が見えた。誰かいる。それだけで希望が持てた。
 後ろからはスケルトンが追ってくる音が聞こえる。私は最後の力を振り絞り走った。あの光の下に行けば救われる、そう確信した。
 木々の隙間を抜けて足をもつれさせながら何とか光の下に辿り着いた。光は私の馬車の中から出ていた。
 森の中から出れた。それだけで嬉しかった。馬車に入ろう。そこに隠れてやり過ごそう。
 馬車の扉を開けようとするがいくら引いても開かない。
「開け!開け!」
 後ろからはスケルトンの音が迫っているのが聞こえる。私が必死に足掻いていると馬車の中の光がゆらりと動いた。
「どうされました」
「誰だ!さっさと開けろ!」
「少々お待ち下さい。なんせ乗り慣れていないもので」
「早くしろ!」
 振り返るとスケルトンが森の中から見えた。
「早く!早くしてくれ!」
「うーん、ここかな?」
 ガチャリと鍵が開く音が聞こえた。扉がスルリと開き私は馬車の中に逃げ込んだ。
「はぁはぁはぁはぁ」
「無事で何よりです」
「はぁ、ぉ前は……ウンスイ……」
「おや、覚えていてくれたのですか、光栄です」
 馬車にはカンテラを持ったウンスイが座っていた。何故コイツがここにいるんだ。
「そうだ!メリアは!あの聖騎士は何処だ!早く外の奴らを退治しろ!」
「メリア様はここにはおりません」
「何だと!ならお前が何とかしろ!御使なのだろ!」
「勿論何とかしてあげたいのは山々なのですが」
「なら早くしろ!金なら幾らでも払う!」
「彼らは怨霊です」
「だからなんだ!」
「この世に恨みを持ち死んでいった哀れな魂、それには実態は無く退治する事はできないのです」
「何だと!どうすればいいのだ!」
 ウンスイはカンテラを私の顔に近付けた。小さな光がチカチカと眩しい。
「恨みを晴らせばいいのです。重税を課した者への復讐ですよ。そんな哀れな魂に心当たりがあるでしょう?」
「そんな!馬鹿な!それでは私はどうなる!」
「さあ?私はこの世の人間です。あの世の事は外にいる彼らに聞いて下さい」
 スケルトンが馬車の窓に張り付きこちらを見ていた。
「ひぎぃ!お願いだ!助けてくれ!」
「なら誓うのです。これから哀れな魂を生み出さない事を。民からかき集めて溜め込んだ金を返す事を」
「いやだ!あれは私の金だ!」
「早く決断しないとどうなるか分かりませんよ?時間はあまり残されていない様です」
 スケルトンが馬車を叩く。激しい音にカンテラの明かりで頭がおかしくなりそうだ。
 ガチャ、そんな音が聞こえた。扉を見ると少し隙間が空いていた。
「おや?扉が開いた様ですね」
「待て!待ってくれ!まだ死にたくない!」
 スケルトンが私に腕を伸ばす。幾つもの腕が私に絡みつく。
「助けてくれ!お願いだ!」
 息が苦しい、腕が喉に、視界も塞がれる。
「なら誓うのです。さぁ!さぁ!さぁ!」
 ウンスイの言葉がこだまする。
「分かった!誓う!金も返す!だから!」
 スケルトンの腕が私の顔を覆う。もう何も見えない。カタカタ聞こえる骨の音しか聞こえなくなった。

「ルーピン様、屋敷に到着しました」
「うわあぁぁぁぁ!!」
 夢?なのか。窓の外を見ると私の屋敷の前であった。冷や汗で服はびっしょりだ。
「ルーピン様?どうされました」
「何でもない!」
 御者が心配そうな声を掛ける。そいつには首から上があった。やはり夢なのか。らしくない夢だ。この私が良心の呵責に耐えられるずあんな夢を見たと?そんな訳がない。あのメリアという小娘のせいで馬鹿馬鹿しい夢を見たのだ。何処まで私を不愉快にさせれば気が済むのだ。
 御者が馬車の扉を開けて私は馬車から降りた。今朝出たはずなのに屋敷を目にすると懐かしささえ覚えた。
「そうだ、ルーピン様」
 御者が私に声を掛けた。私は振り向いたが御者は扉を閉めて馬車の方を向いたままだ。お前が声を掛けたのにこちらを向かないとは無礼な奴だ。
「御使様から伝言を預かっております」
「御使様?」
 何だ。何のことだ。何も理解できないが私は嫌な予感がした。
 御者は馬車の方を向いてこちらに背を向けている。それなのに頭だけがゆっくりと後ろを向いた。
「約束を忘れぬ様に、と」
「ひいいい!!」
 私は屋敷に向かって走った。夢じゃない。あれは本当のことだ。化け物だ。私は化け物に付け狙われているんだ。
 屋敷に入り扉を閉めた。肩も足も震えて立てない。その場にしゃがみ込んで使用人が心配そうに駆け寄ってきた。
 使用人が何を言っているか分からない。ただ耳には呪いの様にウンスイの言葉がまとわり付いていた。


「えげつないの」
 カクタスはそう言った。俺も同じ感想だ。我ながらえげつない事をしたと思っている。
 グラジオラスがルーピンを屋敷に届けているのを俺達は森の中で待っていた。
「本当にこれで改心するのか?」
 メリアは心配そうにこちらを見ている。
「メリアはアレをやられて改心しないのか」
「ワシはするのう」
「私も……するだろう」
「まあこれでダメなら今度は夜に直接屋敷を襲撃すればいい」
「はっは、それは気の毒なことだ」
 カクタスは笑っているがメリアは頭を抱えている。騎士としては褒められたやり方ではないのだろう。カクタスは案外乗り気でこの作戦にスケルトンを快く動かしてくれた。一方グラジオラスはというと。
「待たせたな、ルーピンは屋敷に逃げ込んだ。これで安心だろう」
 グラジオラスは馬車に乗って帰ってきた。
「それにしても病みつきになりそうだ、デュラハンになって初めて首が取れる事を感謝したよ」
 グラジオラスもこの作戦にノリノリであった。何処の世界も男って奴はこういうドッキリが好きなのだ。憧れの騎士であるグラジオラスも楽しんでいるのを見てメリアは更に頭を抱えた。

 翌日、ルーピンから減税の御達しがあった。その事は一夜にして決まった事ですぐさま周辺の村々に伝達された。
 数日この街に滞在して様子を見るつもりであったがあっさりしたものだ。おかげで直ぐに出発する事になった。
 村の司祭は頭を下げて俺達にお礼を言った。
「この度は本当にありがとうございます。メリア様」
「いや、今回私は何もしていない。全てはウンスイがやってくれた」
「そうでしたか、ウンスイ様ありがとうございました」
 村の司祭は俺の手を握って頭を下げた。メリアは自分の手柄にしなかった。俺の事は嫌いだが手柄を横取りする様な人間ではないらしい。
 個人的にはメリアと俺のどちらかがやったと明確ならない方がいい。その後状況によってどうとでも対応出来るからだ。メリアに全ての責任を擦りつけるのも一つの手である。逃げ道は幾らでもあったほうがいい。
 俺達は教会から出て馬宿に向かった。その道中にもメリアは市民にお礼を言われていた。この街には村から出稼ぎに来てる人も多いとか。その一人一人に訂正する事も出来ないのでメリアはバツの悪そうな顔で笑うだけであった。
 馬車に乗り込み森で待機している化け物共を回収しに行く。
「何故ウンスイは助けたのだ?今回は除霊でも無ければ金も手に入らないのに」
「気に入らなかったって言ったろ」
「それだけか?」
「そうだよ、俺も労働者階級だ。搾取されるのは真っ平御免なんだよ」
「詐欺師は労働者じゃないだろ」
「痛いとこを突くな」
「まあ、今回は良くやったと思っている」
 コイツが俺を素直に褒めている。
「何だ?お前もグラジオラスとカクタスに脅されたか?」
「うるさい!」
 メリアは手綱を操り馬のスピードを上げた。
「うお!」
 馬車はガタガタ揺れて喋れなくなってしまった。照れ隠しはもっと優しい感じのにしろよ。
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