この度、押しかけ女房に押し切られました。 ~押しかけ女房はレア職でハイスペックな超美人でした~

文月

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204.美味しい女子会だけど‥話してる内容は重~い。

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 シャルルとフタバの女子会前、コリンたちは三人で十分話し合った。
 まず、シャルルに何を聞くか。
 リラックス空間を作るために何を用意するか。
 とかだ。
 まあ‥言い方とか聞く順番とかは、フタバに丸投げだ。コリンもロナウもそういうの、苦手だから。

「何を聞くか‥まずは「魔薬を飲んだの? 」よね。それで、イエスなら「どこで誰から買ったの? 」と「なぜ買ったの? 買おうと思ったきっかけは? 」「いくらだった? 」「貴方の不満は何? 」‥位かしら? 」
 メモ用紙に書きながらフタバが言った。
「そうだね‥。それくらいしか僕も浮かばない」
 ロナウが頷くと、
「‥そうだよね。
 ああ、あと‥飲んだ後、どうなった? も‥聞いておくか。売り子からどういう風に声を掛けられたか‥、初めからシャルルのことを知っているようだったか。それとも、たまたま声を掛けた風だったか‥とか? 」
 コリンが付け足す。
「だけど、元々知ってたとしても‥偶然を装ったりしない? 」
 って、ロナウのもっともな疑問に
「‥寧ろ相手が知ってて‥探されてた‥って方が、話を聞くかもしれない。「シャルルさん‥ですよね。私は教会の者です。教会に来て下さると待っていたのに、貴女は来られなかった。何かご事情でも? 」って具合に話しかけられた‥とか? 」
 って‥提案で返したのはフタバ。
「お~ありそうww」
 ロナウが感心したように言った。
 その声は明るかったけど、表情はどこか冴えない。
「まあ‥ホントの教会の人間ならそんなことは絶対あり得ないけどな」
「ああ、ホントの教会の職員がそんなことするわけがない」
「スカウトしてきたのは‥別の人間だ」
 と、ぽつりぽつりと三人三様に呟き‥その後誰からとなく‥顔を見合わせると、

「元ネタ(情報)は、教会で間違いはないだろうけど、声を掛けたのは別の人間だ」
 声を合わせた。

「「誰か」が、教会からデータを盗み、それを元に「魔力を持つ者」に声を掛ける。なぜなら、魔薬は「飲む魔法陣」というだけあって、魔力を持つ者の方が扱いやすいから。(魔力を持たない者にも効果があるのかは、実験したことがないからわからない)
 だから、
 魔力を持っているが、教会などに行っていない平民や貴族の子女がターゲットに選ばれている‥という可能性があると‥仮定する」
「そして、シャルルもその中の一人だった‥」
「シャルルが選ばれたのは‥きっと、偶然ではない」

 仮定と言いながら、この辺りはほぼ間違いはないだろう。
「だけど‥この話はシャルル嬢に確認できるものでは無い。「教会で魔力の有無を調べたことがあるか」の確認は必要だろうけど、シャルルは貴族だし、「自分が魔力持ちであることを知っていた」から、この辺りを確認する必要も無いだろう。寧ろ色々聞いて「なぜそんなことを聞くんだ? 」って不審がられてはいけない」
 ロナウが言い、フタバが頷く。そして、手元のメモ用紙に「聞く事リスト」と書き込んだ。

 そんなこんなで、今。

「貴女は‥「魔薬を飲んだの? 」。飲んだ‥っていう表現は適切じゃないのかしら? 使用したの? 」
 直球な質問に、シャルルは口を閉ざした。
「これは、‥分かってはいると思うけど、単なる興味からの質問なんかではない。そして、誓って貴女を貶めようとしているわけでもない。私は‥私たちは、貴女に同情していたり‥助けようと動いている訳では‥ないですが、結果的に私たちがすることは、きっと貴女を‥貴女たちを助けることになるだろう‥っておもってる」
 フタバの静かな口調と、真剣な表情に‥
 シャルルは僅かに残っていた躊躇‥抵抗を捨てた。

「はい。私は確かに‥何か‥違法と思われる薬物を服用しました。‥あれが、貴女の言う魔薬というものだったのかはわかりません」
 俯きがちに小声で答えるシャルルに、フタバは静かに‥だけど、気遣う様子など見せず‥事務的に質問を続ける。
 だけど、当初の予定だった「どこで誰から買ったの? 」は‥あまりにも事務的すぎるかな‥と思って、先に
「‥そう。それで、魔薬の効果はこの前コリンによって無効化されたわけだけど‥、その後の体調はどう? 大丈夫? 不調はない? 」
 と、シャルルを気遣う言葉を入れた。
 コリンが「大丈夫だろう」って言ってたから大丈夫なんだろうけど‥一応だ。
 それに、そう聞いておいた方が人道的でしょ?
 シャルルは、俯いたまま軽く頷いた。
「大丈夫です‥」
「そう‥よかった。‥質問を続けてもいい? 」
 フタバはシャルルが頷くのを待って質問を再開する。
「どこで誰から買ったの? 売られたのは‥知ってる人から? 」
 シャルルは俯いたまま首を振る。
「街で声を掛けられて‥。知らない人でした。
 優しそうな‥真面目そうな‥
 教会の人の様な‥人でした」
 ぼそぼそとシャルルが答える。フタバはそれをメモに残しながら
「自分の事を教会関係者ってなのったの? 」
「いいえ。ただ‥私に魔力があることを知っていたから教会の人なのかなって思って。それに‥なんだか雰囲気もそんな感じだったから‥」
 フタバは心の中で小さくため息をつく。
 ‥あまりにも、自分たちの予想通りだ。
 それにしても
 あまりにもしょげ返ったシャルルの様子に‥これ以上「尋問」を続けるのも‥どうだろう‥って気になった。
 それで‥気が重くなったところに、ふと、尋問は誓約士であるコリンの方が向いてるんだろうな~って思ったり。
 だけど‥
 きっとコリンだって仕事だからしてるんであって、好きでやっているわけでもないんだろうな。
 必要な情報を聞き出す「インタビュー」と「尋問」‥似て非なるもの(似てるかな)。
 気が‥重い。

 あとは、
「なぜ買ったの? 買おうと思ったきっかけは? 」
「いくらだった? 」
「(買おうと思ったきっかけになるであろう)貴方の不満は何? 」
 を聞かなきゃならないんだけど‥嫌だなあ‥。

 そんなことを思っていたら‥どんどん‥何もかも嫌で嫌で仕方がなくなった。
 私がこんなことを聞かなきゃならないことも、シャルルと楽しくお話したいのに‥シャルルを暗い顔にさせてしまったことも、シャルルにこんな顔させる原因となった魔薬も、それを売った奴も‥それを作った奴も、協会も! みんなみんな‥嫌で嫌で仕方が無いし、憎くて憎くて‥仕方が無くなった。
 フタバはシャルルを抱きしめて
「大丈夫。悪い奴は、私たちが絶対に退治するから‥。だから、辛いだろうけど‥私に全部教えて」
 と‥言い聞かせるように‥強い口調で言う。
 シャルルが、顔を上げてフタバを見て‥ためらいがちに頷き、涙を流す。
「‥有難う‥ございます‥。よろしくお願いします‥」
「‥分かったわ」
 ぽろぽろと涙を流し、フタバにしがみつくシャルルの背中を優しく撫ぜながら、フタバは真っすぐと‥まだしっぽすらつかめていない敵の姿を‥空を‥睨みつけるのだった。
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