リバーシ!

文月

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二章 別に生活に支障を感じなかった特異なリバーシ

10.夢のような現実の話をする。

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 ‥嫁入り前の娘が朝帰り‥
 貞操の心配は‥だけど、今現在男の格好をしている俺に対してはしないだろう。(よそのお嬢さんをひっかけたって心配は、俺に関してはないって断言できる。今まで俺って、そういうことにびっくりするほど淡泊だったから。‥それってホントは女だったから‥ってことなんだろう。深層心理で「なんか違う」ってストッパーがかかったのかも)

 娘を持つ親としての心配。(主に貞操関係)
 息子を持つ親としての心配。(主に責任問題)

 その二つのパターンの心配が一瞬にして浮かんできたんだ。
 ‥なんでか、他人事として。
 俺の方は‥びっくりするほどそういう心配なかった。
 だって、外見は男だから(見るからに女に苦労してなさそうなイケメンの ←一応言っておくが、僻んではいない)ミチルが「そんな気になる」わけないし、女だけど、今まで女だったことすら忘れてたから、急に‥ねぇ。
 ‥ってなわけで、俺のことはどうでもいいって‥何にも考えてなかったけど。
 母さん見て「そうだ! 母さんに心配かけてしまった! 」って気付いたんだ。
 
 どういう心配だろうか。
 ‥勿論母さんは俺が今は(訳あって)こんなナリをしてるけどホントはあの絶世の美女(笑)だってことしってるわけだし、そりゃ心配にもなる‥
 しかも、‥12時になったらバタン・きゅ~な体質! ‥あんな美女がなんて無防備な!! 
 って‥
 でも、今この形は、男でしかない。
 ‥でも、男がお好みな相手だったら‥
 いや、だけど、俺って「なんかお前‥違うんだよな~。男か女かっていうか‥なんかな~」っていろんなタイプの人たちに今まで散々言われてきたんだよな~。

 恋愛対象・女の友人(♂)には「そこらの女より綺麗だけど、そもそも女じゃないし」ってわざわざ言われ‥
「お前といたら、恋愛対象がなんか分からなくなるからお前といるのやめるわ」
 って絶縁され‥
 恋愛対象・男の友人(♂)には「女っぽくていやだ‥」って言われ‥

 そもそも、俺のこと、恋愛対象として見なければいいんじゃないのか!? 

 って感じの‥ 

 ってまあ‥そんなわけだから俺に限ってそんな心配は必要ナシってわけで‥
 だけど、そんな俺でも、母さんにとっては、(娘だろうが息子だろうが)子供に違いない。
 それも、色々問題満載の子供、だ。
 母さんの青白い顔。
 きっと、一晩中起きていたのだろう。‥心配させてしまった。

「ごめん、あの‥俺」

 昨日の事を説明したいんだが、さてどこから話したもんだか‥
 なんせ、自分でもパニック&パニックで、現実の話とは思えてない‥

 と、
「‥ブレスレットがない‥」
 母さんが驚愕の目が、俺の手首に向けられた。
 俺は、ゆっくりと頷く
「母さん、俺‥。あっちの世界に行ってきた‥」


「あっちでの俺は眠り続けてた。それで‥ミチルが言うには、これが俺の力を封印していたから、あっちでの俺は眠りっぱなしだったって。起きるのがもうちょっと遅かったら、死んじゃうところだったって」
 俺は、外したブレスレットをダイニングのテーブルに置きながら言った。
 軽い、こつん、っていう金属音。
「‥‥」
 母さんは、黙ってボロボロ涙を流しながら、俺を抱きしめた。
「よかった‥。ヒジリが死んじゃわなくて良かった‥」
 何度も何度も呟く。
「‥あっちでの俺は、血色も良くって、そんな「死にそう」な感じなんてなかったよ? 」
 ホントに不思議な話。
 ‥なんであんなに元気だったんだろ。あの身体。

 ありあまる魔力がケアしてくれてた‥的な?

 母さんを椅子に座らせ、取り敢えず落ち着いてもらう。
 ‥あっちでの俺が、女だったってことは、ちょっと恥ずかしくて言いたくない。‥母さんも当然知ってるわけなんだけどね。
「‥大きく成ってたんでしょうね。母さんたち、あっちには随分帰ってないから、‥分からない。ええと‥、もう10年になるのかしら」
 記憶が途切れたのが、たしか10歳位だったから‥そんな感じなのかもしれない。
 俺は頷いた。
「俺、今まで忘れてた。なんでだろ‥」
「暗示をかけておいたの。あなたは、ここで産まれて、ここで育ったって‥」
「ふうん。成程ねえ。で、あっちに帰るの? ミチルが俺たちは、もともとあっちの世界の住人だって言ってたけど」
 母さんが頷く。
「そうよ。私たちはあっちの世界の住人だわ」
 聞いてたとはいえた、実際に母親から聞くと‥
 現実って感じが‥実感されるっていうか‥
「あ、‥あのさ、ミチルっていうのは‥」
「ミチル君と一緒にいたの? 昨日」
 母さんが、あからさまにほ、っとした表情になった。
「ミチルの事しってるの? 」
「ええ。あっちの聖‥ヒジリの体の様子を見にあっちにいったときになんどか会ったわ。何回か、こっちに送ってもらったし」
 母さんたちはリバーシじゃないから、一人ではあっちとこっちの移動が出来ないらしい。
 それは、魔力がないからってことではなく、魔法使いであるらしいラルシュもできないらしい。
「‥ふうん。そっか、‥母さんたちもあいつの事知ってたんだ‥」

 それにしても‥母さんたちがあっちに時々帰っていた‥とはね。
 俺に内緒で、だ。
 あっちの世界出身の両親には、あっちですることもあるのだろう。知り合いも当然いるわけだし‥帰りたいだろうしね。
 だけど、なんか複雑。
 俺だけが何も知らないっていうのが、‥すごく嫌だ。

 それにしても、ミチル‥
「まあ、悪い奴ではないと思うけど‥」
 俺が首を捻る。
 いや、悪い奴‥かな?? 「俺が起きていなくならないように」考えられないような魔法(?)を俺に平気で使ったらしいし‥。別なイケメンにその件で怒られてたし。

「他にイケメン‥ 王子様のことかしら? あの部屋によくいらっしゃったわ。‥王子様は確かにイケメンだわ」
 母さんが、ふふ、と笑う。
 何その生暖かい顔。
 関係ないよ? 知ってるでしょ? 俺、そういうの‥

 っていうか、なんで俺、城にいるの?

「なぜって? あなたは王子様のフィアンセだから。
 貴女に一目ぼれして、悪い人たちに襲われたところを助けくださったって! 
 そして、悪い呪いで眠り続ける貴女を「お城で目覚めるまでお守りします」って! 」

 いやいや、そこで母さんうっとりした顔しない。
 うっとり要素無いよ? 
 一目惚れして、そくプロポーズって、王子としてないでしょ??
 そもそもおかしいよ? 俺、あの時そんな美女じゃなかったよ? 残念草顔の子供だったよ??

 色々意味が分かんないよ!??
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