リバーシ!

文月

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二章 別に生活に支障を感じなかった特異なリバーシ

13.異世界再び

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「そのブレスレットをあんたにつけた幼馴染。‥俺は、その人物もその組織の一員だと思っている」

 ‥ナツミのこと。
 ‥ミチルまでそんなふうに言うのか‥。
 隣で母さんが頷いている。父さんは‥無反応だ。母さんたちに同意するわけでもないが、反論したい俺に共感する‥とかでもない。
 難しい顔で黙り込んでいる。
 俺に関心がない、とかじゃない。母さんの様に感情的じゃないだけで、多分、母さん寄りの意見だろうが、まだ結論は出すべきじゃない‥って思ってる‥って感じかな。
 ‥父さんはそういうところがある。

「何言ってるんだ? ナツミが俺の敵なわけないだろ? 」
 俺は、冷静にそうとだけ返した。
 ミチルは何も知らないんだ。‥そう思っても仕方が無い。
 だけど、反論だけはしておかないといけない。

 ‥「ミチルたちがそう思うのは当然だけど、それは全くの事実無根だ」って分かってもらわないといけない。

 ミチルの表情はさっきから、変わっていない。
 さっき、ナツミのことを敵だと言った時の、真剣な‥少し不機嫌な顔をした、そのまんまだ。
 俺の反論は‥届いているようには思えないし、‥そう簡単に伝わらないだろう。
「逆に何故敵じゃないっておもうの? 」
 怖いくらい整ったミチルの顔がひたり、と俺を見る。
 真っ黒じゃない瞳は、見慣れている。自分も両親もそうだからだ。寧ろ、漆黒の瞳を見たら、へえ、綺麗だな羨ましいな‥って思う。だから、‥オリーブのその瞳に違和感を感じたわけではない。
 だけど、‥怖い。
 綺麗な顔ってのは、何か怖い。
 ミチルは親しみの持てるタイプのイケメンだと思っていた。でも、今彼の表情にそんな親しみやすさは、
 ‥ない。
 企んでいるとか、じゃない。
 俺のこと心配してくれてるんだってことも、分かる。
 だけど、‥彼は、今、俺自身ではない存在として俺を見ている。
 異世界人、そして、国家に必要な人物であるらしい俺だから、心配している。いや、寧ろ自覚を持たせようとしている。
 あっちの俺は、どうやら、そんな俺の感情で気ままに動いていい存在では無いらしい。

 リバーシ‥で、王子の婚約者。

 俺は細く長く息を吐いた。
 ぴくり、とミチルが動き、俺は、はっとして、つい‥身構えた。
「もうすぐ、12時だ」
 ミチルが俺の背後の壁に掛かった時計を見る。
 12時。
 こっちのミチルが、ダウンする時間。
 でも、‥昨日分かったんだけど‥俺は、この身体は、もともとここには、ない。
 俺の身体は、あっちで眠っていて、ここにいるのは実体の無い映像みたいなもんなんだ。
 ミチルと違って、俺はここに身体を置いていくのではない。
 今までは‥考えたことなかったけど、12時に成ったら「消えて」たのかな?
 (‥そりゃお泊りや修学旅行も行けないよな‥)
 一つ短く息を吸って、ミチルを見た。
 ミチルは母さんと父さんに指示を出しているようだ。
 曰く、ミチルがあっちの世界に渡る際に俺の父さんと母さんを「連れて行く」らしい。それには膨大な魔力がいるが、それ位ならミチル一人で問題は無いらしい。
 俺までは一緒に連れていけないけど、「今朝一緒に帰ってきたから、ついてくる位はできるだろ? 」って聞かれて、「多分」と‥言うしかなかった。
 だって、そうだろ? ここで、「無理」とか言える?
 ‥正直に言った方がよかったかな。一回で「出来るだろ」って無茶だろ‥。
 そんな俺にはお構いなしって感じで、父さんと母さんがバタバタと動き回っている。
 久し振りにあっちに帰るんだ。準備もあるんだろう。
 忙しそうだけど‥どことなく嬉しそうだ。(そりゃ、「久しぶりの里帰り&10年ぶりに娘に会う」んだもんな)
「ミチル君。我が家のベッドで良かったら‥」
 父さんがミチルに言い、
「ヒジリのベッド貸してね」
 母さんが俺に許可を取った。許可を取るっていっても‥俺に拒否権は無いんだろう。
 俺がしぶしぶ頷くと、
「ありがとうございます。では、そこでしましょう」
 ミチルはベッドに腰をかけ、両親と手を繋ぐ。
 俺に
「あんたは自分で。大丈夫、目をつぶってれば、いける」
 と言うと、目をつぶる。(要らない心配だと思うが、このまま「寝て」しまうと、三人がベッド脇に重なるみたいに倒れて‥明日の朝は確実に「寝違え」るだろう。三人とも床に(ミチルを真ん中に川の字で)寝転がる方がいいんだろうけど、よく知らない他人と他人の家で床に寝転ぶのは‥やっぱり問題だな。)
「わかった」
 俺も了承したが、俺は無理矢理、母さんと父さんがミチルと繋いだ手に自分の手を重ねた。

 ‥両親が心配だからであって、決して「はぐれたら困る」とか「自信がない」とかじゃないぞ!!

 ふわっと緑色の光が母さんたちとミチルを包み、三人ががベッドに重なるように倒れこむのが最後に見えた。
 俺は、若草色の光に包まれている。
 あ、これ、俺の目の色みたい。‥そうか、さっきのミチルを包んでいた光はミチルの目の色にそっくりだった。あっち側の、だ。
 引っ張られる様な感覚が一瞬して、
 目を瞑り、次に目を開けると

 次の瞬間、目の前に、あの時の‥イケメンが居た。
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