リバーシ!

文月

文字の大きさ
55 / 248
六章 思えば‥フラグだったんだ。

7.黒歴史ってことで‥封印、封印!

しおりを挟む
(side ヒジリ(心は聖、見た目はヒジリ))


 俺、もしかしてこの前ぶっつけ本番で、かなりヤバいこと‥しかも人前でしてしまったかも!?

 ミチルにバレないようにしよう‥


 ‥でもまあ‥

 あの程度の被害(※ボールが頭に直撃して、頭にこぶをつくった)で済んで良かったな~!

 
 そもそも‥俺は熟考、後に行動に移すってのが苦手なんだ。
 俺はそんなに賢くない(自覚在り)から、考えて行動したところで「あれ意味なかったな」って思うことも、結構多い。もしかしたら、「馬鹿の考え休むに似たり」って奴かもしれない。
 やっても仕方ないこと、やらなくていいこと、‥やらない方がいいこと。
 賢い人が「やらなくてもわかるでしょ」てこと、俺はやってみないと分からない。
 分からなくって、もやもやする。
 ならやってみよう‥って思う。
 何かあったらその後考えよう。その為の保険を掛けることは‥この頃流石に覚えた。
 AとBの道で迷ったとき、Aを試して、間違ってたら来た道(Aの道)を戻ってBの道を行きなおすってこと。
 昔はAで迷っても「そのうち何とかなる」って来た道戻ることすらなかったから大きな進歩だ。

 俺は、昔とは違う。ちゃんとやれてる!


 ‥何とかなるって思ったんだけどな~。


 あの時は、初めて「ヒジリの身体」でこっちに帰ってきちゃったときの事だった。

「なあ、国見ぃ! キャッチボールしようぜ! 」

 俺はある実験をする為に、昼休み、後輩の国見をキャッチボールに誘った。
 国見っていう男は、テンプレな「会社の中で一番若い社員」って感じの男だ。(仕事を覚えない‥とかいう悪い意味じゃない。愛される年下君って感じ? 分かるでしょ? )
 先輩に「学生気分抜けてないよな‥」って嫌味言われるほどってじゃないけど、ベテラン社員には「今どきの若者は」って言われるほどは、「今どき」‥そんな感じ。
 ただ「モテそう」とかじゃ、ない。
 運動が苦手って訳ではなさそうだけど、そう活動的でもない。ダンスとかスケボーとかとは無縁なタイプ(←聖の「今どきのパリピなモテ男」の基準。今どき‥? )なんだ。

「あ? 昼休みにキャッチボールって‥。聖がそんな健康的なこといいだすなんて、驚きだな! 」
 ただ、愛される年下君じゃないところって言ったら、先輩で年も2歳とはいえ年上な俺に対して、敬語を使ったりしないとこだ。(※ 聖は気付いてないが、聖に対してだけだ)
 そういう運動部系の習慣がない。

 俺はあるよ? 運動部だったし!

 多分、高卒で仕事をしてきた国見にとっては、転職してこっちに入って来たから先輩後輩になってるけど、職歴なら俺のが長いぜ~みたいな感じなんだろう。(※ と、聖は解釈しているようだ。多分それもあるだろうが、聖が舐められてるだけかも‥)

 確かに、社会人としては先輩だなって思わせるところが国見にはあった。

 考え方もしっかりしてるし、なにより、仕事ができる。
 転職だって、前職の会社が倒産しただか何だかで、同じ職種のこの会社に紹介されて入ったんだから、後輩と言えど国見に対して俺が教えられるようなことは何もなかった。
 逆に教わったりすることもあるくらいだけど、そういうことで国見は「こんなことも知らないの? 」みたいなことは言わない。
 職歴では先輩だけど、この会社からしたら後輩。
 俺にとっての国見の認識はこうで、国見もそう接してくれてる。
 まあ、今では「いい友達」みたいな感じだ。
 先輩風吹かせて「生意気」なんて言う気もないしね。

「まあまあまあまあ」
 揶揄うような表情を向ける国見にボールを渡す。
 別に家から持って来たわけではない。社内野球部の部員が要らなくなった野球ボールを貰ったんだ。
 別に問題なく使える様な気がするのに何でイラナイんだろ。線が消えたらつかみにくい‥とか「つるつるになったらもうダメ」とか‥そういうの俺は分からないし、全然問題ない。

「キャッチボールねぇ‥」

 同期の吉川を誘わなかったのは、別に吉川を避けているから‥ってわけではない。
 吉川は、壊滅的に運動音痴なんだ。
 それに比べれば、国見は、まあ「普通」程度だけど運動をしてたはずだ。この前事務所の親睦会『他事務所合同歩こう会』にも(うちの事務所の人数合わせのために)出てたし、別に最後までばててなかったし。
 ‥因みに、我が事務所は佐藤さん、俺、中川さん、国見っていうメンバーだった。

 ‥完璧全員数合わせだね!

「投げるぞ! キャッチしろよな!! 」
 って構えるフォームもなかなか様になってる。
 俺は構える。
 が、今日の俺の目的は国見のボールを受けて、投げ返す(← キャッチボール)じゃない。キャッチオンリーだ。

 スキルが「止めてくれる」のを確かめるために、あえて、国見の球を食らう覚悟で今ここにいる‥っ!
 そのために、グローブの中の指に指輪(金属 注:アルミ)をつけてるぜ!
 そう、実験は「こっちで「金属で何でも止めるチートなスキル」が使えるか」を試すことと、その強化だ。

 が

「って~!! いてぇ! 」
 痛い!! 本気で痛い!!
 何手加減ゼロでボール投げてんだよ!! 鎖骨だか肋骨だかに直撃したぞ!!
 俺が蹲って悶絶していると、
「って受けろよ!! 危ないだろ!! 俺を過失致傷とかで訴えようとしてんのか!? 新手の後輩いびりか?! 」
 国見が慌てて走り寄って来た。
 心配してるっていうより、
 ‥ドン引きして、呆れてるって感じ。いや、ちょっと怒ってるかな。
「‥お前、俺のこと先輩だなんて思ってないだろ! ‥ちょっと油断してただけだ。今度は止めるぜ‥!」
 俺は、国見を下から睨み上げると(蹲ってるから視線が下なだけ、国見とだって、立ってたら俺の方が身長は高いよ!! )国見が、更に呆れた様な顔をした。
「‥大丈夫かよ‥。ホント、オレ、シャレなんないの嫌だからな‥」
 国見は、呆れた顔のままため息をついて、元の位置に戻っていく。どうやら続けてくれるようだ。

 ‥よかった、国見に頼んで。吉川だったら今頃「医務室に行け、もうやらん」って言われてるぞ。

「児嶋さん、運動神経悪すぎですよね‥」
 いつの間にそこに来ていたのか、後輩の事務員中川さんが缶コーヒーを三本抱えて立っていた。
 完全に、呆れ顔だ。
「ホント、マジそうっすわ。受けろって感じっすわ」
 何故か、国見は、ギリ先輩になる中川さん(※ 中川さんの採用は、俺の一年後で国見の一年前)には敬語っぽい変な口調で話す。
 今みたいな‥感じにだ。

 いつの間にか、こっちに来てるし。(俺に対して‥と態度違いすぎない?? )

「違うわ!! 」
 中川さんと国見に「イジラレ」、俺が逆ギレしていると、「仕方ない人ですねぇ」と中川さんが俺と国見にコーヒーをくれた。
 あ、すげえ国見喜んでる。
 お前、普段砂糖入ったコーヒーなんて飲まんだろうが。

「はいはい、今度は受けますよ‥。もう一度お願いします。国見サン」

「仕方ないなあ」
 ‥あ、これどうだろ。このおもちゃの指輪より‥堅そう。
 さっきもらった缶コーヒーのプルタブ部分を指にこっそりはめなおす。
 国見が投げて‥
 俺が受ける

「よし! 止めた! 」

 思わずガッツポーズだ。
 よし、止まったぞ!! スキル発動だ!!
 大喜びしてしまった俺に
「‥よかったな」
 国見はドン引きして‥
「‥そんな一回くらいで大喜びされても‥。やっぱり、児嶋さん運動神経‥」
 中川さんが疑いの目で俺を見ている。
「だから!! 」
 ‥俺は運動神経はわるかねえ! 
 ‥あ、そうか。自分で受けたのかもしれないな。ミラクル反射神経と、超絶運動神経が自然に発動しちゃって‥。
 じゃあ、金属(※プルタブだけど)つけたまま‥わざと、油断して‥
「もう一回! 」
 国見にぶんぶんと腕を振る。

 よっしゃ! こい!

「はいはい‥」
 呆れ顔の国見と
 ちょっと「大丈夫ですかあ」って意地悪な顔で俺を見る、中川さん。
 見てろ、中川さん。よそ見してても華麗にキャッチするぜ!
 超雑反射神経に見せかけての~

『スキル! 金属でなんでも止める‥! 』

「ちょっと! 聖! 」
「児嶋さん!? 」

 ‥痛い。


 さすさすとこぶができた頭を撫ぜて、母さんが渡してくれた氷嚢をこぶに当てる。
「一体何をしようとしていたの? 」
 母さんが呆れた様な顔で、それを見ている。
 ‥恥ずかしいから、見ないで欲しい‥。
「こっちで、スキルを使ってみようとしてたんだ」
 ため息とともに白状すると
「‥無茶なことを‥」
 母さんも、呆れた様にため息をついた。
 痛いし、人にも迷惑かけた。
 ‥これからは、人を巻き込んで実験するのは止めよう‥。

 結局あの後、‥でも、何とかリタイアもせず俺は就業迄仕事をして、帰りは家が近い吉川に車で送ってもらった。吉川は、呆れた様な顔をしていたが、何も言わなかった。
 ‥てっきり、めっちゃ馬鹿にされるかと思ったが、
「大丈夫か? 」
 と、ぼそりと一言聞かれて、‥かえって反省した。
 馬鹿なことした。
 吉川に送ってもらって帰って来た俺を見て母さんは凄く驚いて、吉川にお礼を言って「一緒に晩御飯を」って勧めた。一人暮らしの吉川は「じゃあ‥」って言って、一緒に食べて、今帰ったところだ。
 吉川は、(相変わらず微かだけど)笑顔で母さんと話したり、‥結構普通の人みたいだった。
 母さんと二人で
「聖は馬鹿だから心配」
 だの、
「吉川さん、聖がご迷惑おかけして申し訳ありません」
 だの、俺はやたらイジラレてたんだけど、‥なんか面白かった。
 俺はいじられキャラって奴なんだろうか? 


 ‥って「一連の出来事」を俺の当時の感想やなんかを含めて思い出した。
 あれは‥黒歴史って奴なんだろう。
 黒歴史はひっそりと封印して忘れてしまうのに限る。‥皆が忘れてくれる、かは別として‥。

 まあ‥学ぶことは‥あった。
 ボールは当たると痛いから、実験するにせよ、違う方法を試せってことだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...