リバーシ!

文月

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七章 ヒジリは自立したい。

7.なんか‥恥ずかしい‥っ!

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(side ヒジリ。主に回想)


 ラルシュが、水が入ったコップに表面張力で水面が盛り上がるまでぎりぎりに水を入れると
「このコップが人が持ちうるギリギリの量の魔力が入る限界としよう」
 と説明を始めた。
 人が持てる魔力の量は生まれながらにして決まっているって話。それは昔母さんから聞いたことがある。
「魔法使いは確かにリバーシより魔力が少ない。
 だけど、
 リバーシより持っているコップが大きい。
 つまり、いれることが出来る水の量‥魔力の量は魔法使いの方が多いってことだ」

「! 」

「だけど、魔法使いは自分ではその量を貯めることが出来ない。自分で作ることは出来ないし、自然に回復する量は、もともと持っている魔力量までだけだだ」

「つまり、それって‥
 他から補えば最大量‥自分の許容容量いっぱいまで持つことが出来るってことか? 」
 ミチルが身を乗り出した。
 
 他から‥。それが魔石ってことか。
「魔石から‥もしくは、パートナーからなら直接貰える」

「パートナー? 」
 結婚相手ってこと? ‥なんだかちょっと顔が赤くなった(気がする)俺が照れ隠しに横に座っているミチルを見たらミチルもの顔もちょっと赤くなっていた。
「ん~。ビジネスパートナーって感じかな? 魔法使いは、魔力の相性のいいリバーシと組むことが多いんだ。魔力が少ない魔法使いにとって魔力の確保は大切だからね。リバーシにしても、魔力を使って、また新しく作り出す‥そうやって循環させた方が調子がいいし」
 ずっと古い(?)魔力を貯めたままだと、よどんだりするらしい。リバーシに多い頭痛持ちは主にそれが原因ならしい。
 運動して体力をつかったりしないと体がなまるよ‥って感じかな?
「それは誰でもいいの? いや、さっき‥相性のいい魔力って言ったな。それって? 」 
「魔法使いにはそれこそ血液型みたいなものがある。大きく分けると属性だけど‥血液型以上に細かい分類があって‥魔法使い同士はもう100%といっていいくらい相性が合わない。
 それに対してリバーシの魔力はそういうタイプがない。割となんにでも合う。属性が同じだったら尚いい‥そういう感じ」
「どうやって貰うの? 」
「直接体に触れる。手をつないだりするだけでいいんだ」
「じゃあ、リバーシは魔法使い皆から狙われるってこと? 」
 ミチルが言った一言に、ぞくっとする。
 そうだよな。そういうことになるよな‥
「いや? その為のパートナーだ。
 パートナー契約を結んだ者同士しか魔力譲渡は出来ないんだ。立ち合いを立てて誓約をして‥法律的にも物理的にも魔力譲渡が出来なくなる。
 そして、
 リバーシとパートナー契約を結んだ魔法使いにはそのリバーシを守る義務がある。
 だけど、物理的に‥直接守れる程魔法使いは武力に長けてないから、保護魔法をかけるんだけど、その頻度は魔法使いの能力による。
 結婚して毎日保護魔法をかけるってのが多いね」
「魔法使いの能力が低くって毎日かけなければいけない‥ってこと? 」
 で、いっそ結婚した方が早くない? ってなっちゃうってこと??
 それでいいのか結婚って‥。
 ヒジリが微妙な顔をしていると、ラルシュが苦笑した。
「う~ん。それもあるでしょうが、多分、一緒にいる時間が長いから情が移る‥とかいった理由でしょうね。一日持たないような弱い保護魔法しか掛けられない魔法使いは、そもそもリバーシとパートナーなんて組めませんよ。主に資金面で」
 それを聞いて、今度はミチルが微妙な表情になる。

 あ、ただじゃないんだ。パートナー契約。
 つまり‥
「契約料やらその他のお金を払うなら‥結婚したらただじゃね? ‥って考えか? ‥それって、人間としてどうなんだ‥?? 」
「「‥‥‥」」
 ‥いや、だから‥そういうことじゃなくて‥
 さっき、「情が移る」ってラルシュが言ってたじゃん。聞いてた??

「でも‥リバーシとパートナーを組むのは‥攻撃系の魔法使いって‥ことにならないか? だって、攻撃系以外は、そう日常で魔力を要する魔法を連続使用するってことはないよね? 」
 そんな戦いの場にパートナーのリバーシを連れて行くってこと?? ‥酷くない??
「それだよ。攻撃系の魔法使いは‥反政府組織に多い。つまり、リバーシが狙われて、無理やりパートナー契約を結ばされる‥そういう危険から守る為に、リバーシは城の中で保護されているんだ」
 
 決して、危険だから世間から隔離している「だけ」ではない。
 ラルシュはそう言いたかったんだろう。
 ラルシュは、やっぱり王族で城側の人間で‥だけど、リバーシである俺たちの友達だ。

「俺は、誰ともパートナー契約組んでないな」
「ミチルは地球人ですからね。夜しかこっちにいないじゃないですか」
 成程。
「じゃあ俺もそういう感じかな」
 俺も、今は(←その当時は)夜しかこっちに来ていない半地球人だ。
「え? ヒジリは‥私のパートナーですよ? 未成年同士だったし、ヒジリの承認は得ていませんが‥国家を保証人とした特例として契約を結んだんです。表向きには私とヒジリは婚約者ってことになってます」
 え!! 婚約者ってそんな「がっつり」してるもんだったの!?
 ゴシップ王子・サラージが言うように「国民向け」のもんだと思ってた‥っ!
 政略結婚どころではなく、契約結婚!
「そうすること‥ヒジリとパートナー契約を結んでいる魔法使いがいることによって、他の魔法使いからは狙われにくくなります。契約者のいるリバーシを誘拐目的その他で害することは、魔法使い同士の法律に反しますから、厳罰に処されます。
 つまり
 魔法使いの資格もはく奪されますし、魔力も没収されます」
「え? そういうのって‥どうやって分かるんだ? 傍から」
 例えば結婚しているって知らせるために結婚指輪をしている的ななんかが‥
 ない。
 別に、俺は何もつけていない。
「魔法使いが見たらわかるんです。パートナー契約を結んでいるリバーシと魔法使いは同じ色の魔力を纏いますからね。同じ色で同じ魔力。
 魔力を譲渡してもらったり、保護魔法をかけたりしているうちに、そういう風に自然になっていくんです。
 だから
 もとから相性がいいんですが、パートナー契約を結んだあとは、より魔力の相性がよくなるんです」
 ふわりとラルシュが微笑んだ。

 ‥なんか恥ずかしい‥っ!
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