リバーシ!

文月

文字の大きさ
77 / 248
八章 未来と過去と

11.有名人

しおりを挟む
(side ヒジリ)


「‥もしかして、ナラフィスで実験しましたか? 」
 以前、ラルシュ様がサラージ様に言ってた。
 異界に転移してるリバーシの抜け殻は、蹴っても起きない‥って話だ。
 そうそう、その‥実験台に使われた、‥蹴られた被害者の名前がナラフィス‥。
 いや‥ナラフィス大先生だった。

 あの時のあの名前‥なんか‥聞いた名前だと思ったら、あの「一週間地球に来てみた! 」ってチャレンジ論文書いた博士だった。
 あの、「意識を伴わない本体には魔力の自動補充機能はないよ。一歩間違えると、魔力切れ起こして、本体に帰れなくなって、死ぬよ」「やっぱり、充電に帰らないといけないよね」って皆がゾッとした‥あの論文。
 
 まさかそんな有名人で超重要人物を「(抜け殻って)蹴っても起きないかな」なんて知的(知的かな)好奇心を満足させるために‥。
 サラージ、恐ろしい子っっ!
 ってか
 ‥二人とも友達だったんだね?
 二人と持ってか‥三人? (← ナラフィスさんとラルシュ様兄弟ね)
 今も、ラルシュ様にすっごいフランクに話してるしね。
 ‥実はナラフィスさんって王族に関わり合いがあるご身分な人って感じ‥なのかな?
 顔とか似てないから‥親戚ではなさそう。
 それどころか‥共通点もない感じ。
 だけど、親戚じゃなかったらもっと王族に対してぺこぺこするだろうに、そんな感じゼロ。
 普通にフランク。すんごい、素。堂々としてるっていってもいい。
 気は強くなさそうなのに‥
 意外。

 ‥意外っていえば。

 身体を張ったチャレンジだ。もっとごっつい肉体をした「体力タイプ」を想像してたけど、違った。ザ、文系って顔してる。
 まあ、‥脳筋には、あんな立派な論文書けない‥かな? (← 偏見)
 ‥ザ、文系っていっても、ガチガチの真面目君でも、オタクって感じでもない。
 人の好さそうな‥癒し系‥?? 
 目がほっそくって、いかにも人畜無害で、老後は辺境でスローライフ送りそうなタイプ。(だけど、意外にアグレッシブに狩りとか(←でも、銃じゃ無く弓)で動物仕留めて、その肉を燻製とかにする、ワンランク上の自給自足生活を送るんだ‥。
 それまではばっちり都会にいて、清潔な大学生活をおくって卒業して‥教授に気に入られて大学院に残り、そのまま運よく講師になって、教授が退官したからそのまま助教授になって‥気付けば教授になってましたって感じ。
 そういう、欲はないのに気が付けば‥ってタイプ‥に見える。(で、老後はワンランク上のスローライフ)で、夏休みにお孫さんがロビンソン・クルーソーごっこしに来る‥。

 ‥はっ! 第一印象で色々想像しちゃった‥。

 俺も、大概動揺してるな。
 いやだって‥! 本当に驚いたから‥! 。
 なんか、論文を書いてる人って雲の上の人って感じで、‥実際にいる人って感じはないじゃない? ある意味、芸能人より「会えない人」って感じするよね? リスペクト半端ないよね? 。教科書に載ってる様な有名な文学作品を書いてる有名な作家さんって、全員故人だって思っちゃうよね? それと同じ。
 ‥まさか会うことになるとはなあ。
 ‥有名人にあっちゃったっ! 。
 ってか、俺、有名人に‥。
 ベッドの上で目覚めた時それを聞かされた時は、驚いたけど‥次の瞬間羞恥心で恥ずか死にそうだった‥。 


「ヒジリ! 」
 ラルシュ様の声が聞こえて、魔力切れの瞬間、最後に‥気絶する瞬間に目の端に捉えたのは、確かにラルシュ様だったんだけど、俺を支えたのは、‥だけど、知り合いのラルシュ様じゃなくって、ナラフィスさんだった。
 ‥ミチルのベッドに取り敢えず運んだのも、ナラフィスさん。
 横抱きで運ばれたらしい。(ここは覚えてない)
 初対面の有名人に横抱き。
 ‥女のなりをしてても、成人男性‥しかも、結構身長あるし、‥いや、今は若干小さいけど‥結構筋肉だってあるし‥いや、ね‥まあ、今はそれもないけど‥
 兎に角!!
 男が、ひょろっとした、‥もしかして自分と変わんない様なひょろっとした男に運ばれるとかって‥!! しかも、その人は雲の上の大先生‥っ!!
 せめて知り合いのラルシュ様に‥
 まあ、‥でも、ラルシュ様は王子様だし?! そういうことかな?!
 ちょっとジト目でラルシュ様を見ていたら、(なぜか)言いたいことが伝わってしまったらしく(多分伝わったんだと思う)
「あの時は、ヒジリに触るわけにはいかなかったんですよ‥でも、気になりますよね‥申し訳ありませんでした」
 って、凄く謝られてしまった。困惑全開って顔させてしまった‥。王子にこんな顔させて、もしかして‥ヤバい? もしかじゃないけど、不敬罪‥?? あとで口止めしておこう‥。(いや、先に謝り倒さねばならん‥)
 ってか、‥「あの時は」「触るわけにはいかなかった」って? ‥ぎっくり腰的な事情があったのか? ‥それなら睨んで悪かった。
 ‥なんか、それも伝わったらしい。
 ちょっと胡乱気な目で見られた。(それにしても、あんな表情でも、カッコよくて上品で綺麗ってもはや同じ男だとは思えないな! あんだけ違ったら、ジェラシー感じるレベルとかじゃない‥。いや、王子と普通の一般人は性別同じだろうが「同じ男」でくくっちゃだめですよね! )
「別に私の体調は悪くありませんし、別に貴女位運べます。こう見えて体力は人並みにある方だと‥」
 口元はいつも通り微笑んでるのに、目が笑ってな~い。
 いつも完璧に笑顔なのに、こういう表情って新鮮。
 作り笑いじゃなくって、砕けた感じっていうのかな。‥とにかく、なんか年相応って笑顔に見えたんだ。

 ‥普段見せない顔を見れる。‥友達って感じだな!! 

 ああ‥そうか。‥仮だけど婚約者だったんだっけ。形だけだけど。結婚したら、城に幽閉まっしぐらコースだけど。(思い出したら落ち込むなあ‥)‥いや、ちょっとだよ。俺は男。‥男にはしなくちゃならないこともある‥。俺一人の感情なんて、国民の安心と安全に比べたら‥。
 一人で落ち込んでたら、
 隣で
「‥あれが人並みだったら、他の奴はミジンコだな」
 ナラフィスさんも、ぶつぶつ言っていた。
 ‥この人も直ぐに自分の世界に入っちゃうタイプかな? 学者だから、色々考えることあるんだな。うんうん。(納得)
 内容までは聞かなかったけどね! いや、聞かないよ? 独り言、他の人に聞かれたら恥ずかしいじゃないか! 武士の情けって奴だな! 

「いや、‥ラルシュの体力問題でも、王子的な何かでもなくてだな」
 (やっと自分の世界からかえって来た)ナラフィスさん曰く、ラルシュ様に俺の魔力が吸収されてしまうから、あんな(弱り切った)状態の俺に触れたら、‥俺がヤバかったらしい。
 ‥なにそれ。‥怖い怖い。
 そういえば昔ラルシュ様が言ってたな。魔法使いはリバーシから魔力供給出来るって。手とか触るだけでも魔力がもらえるって。
 ‥そうか、触れたら自動的に‥。
 ゾッとした。
 普段ならいいけど、魔力が残ってないときとか‥ヤバいな‥!
 ナラフィスさんも「うんうん」って顔してる。‥そんな関係って、結婚してたらヤバいんじゃないだろうか‥そこは‥何とかなるんだろうか。よくわからんが‥。

「すみませんでした。‥ナラフィスさんの論文で立証されてたのに魔力不足で死にかけるとか‥俺‥」
 殊勝な感じで謝ると、ナラフィスさんは首を傾げ
「今回の君の状態って‥俺とは違うぞ。魔力切れでアウトで助けてもらったって状況は同じだけど‥」
 ん? 
 違いますかね?
 俺は首を傾げる。
「いや、俺の場合はホントに純粋に魔力不足だったんだ。あっちに置いてる本体‥身体が作る魔力以上にずっと意識が魔力を使ってたわけだからね。
 意識体で、仮の身体を作って生活するって魔法だ。
 つまり、俺の場合は「本体と意識体が分離した状態」だった。
 だけど、君の場合は本体ごと来てる。
 本体で魔力を作ろうとしたが、空気中の魔素が少なすぎて魔力生成に間に合わず‥ってほど、魔力も使ってない。
 つまり、今回の君は‥
 ‥アレだ。睡眠不足。
 そりゃ、リバーシだって意識と身体両方とも起きたまま24時間とか、無理だろ。寧ろ良くもったと思うぞ? 」
 ‥そうか、俺‥魔力不足に成る程‥別に魔力とか‥使ってない。

 睡眠不足‥!
 寝ないのに、睡眠不足!

 ‥兎に角ベッドから降りよう‥隣にミチル寝てるし‥。
 これでミチルが起きたら‥なんか大事故になる。
 ‥大事故って‥いや、男同士だからいいんだけど‥
 ビビるよね? 寝る前にはいなかったのに、起きたらいるとか。(周りにナラフィスさんとかいるってのも驚くだろうし)

 慌てて飛び起きて、ベッドから飛び降りようとしたら
「ヒ~ジ~リ~」
 ‥とってもイイ笑顔のミチルに腕をつかまれた。

 ひいぃ! すみません!! すぐ降りますから!!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...