リバーシ!

文月

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九章 ナツミというただの女の子

8.足りないもの

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「反政府組織の問題は‥黒の思想が利益を求めるのが第一で、道徳感情をおろそかにする傾向があるってところなんだ」
 ふう、とラルシュがため息を着いた。
 不満げな表情で「おろそか‥ではないか」と付け加えている。
 一言で言うと歯切れが悪い様子で、それはいつも穏やかで‥だけど堂々としたラルシュ様には珍しいな、とヒジリは思った。

 物腰や表情は柔らかいんだけど、言葉その他には迷いが無いって感じなんだ。改めて「王族! 」って感じがするよね。
 それにしても‥なんだろ、反政府組織に俺が思う以上に悩まされてます‥って感じなのかな? (まあ‥そうだろうなぁ)
 
 なんでこんな話になったかっていうと、ナラフィスが
「そもそも、ヒジリを狙ってる反政府組織ってどんな集団なんだ? 」
 って聞いたからだ。
 ナラフィスは(サラージが)以前、「研究馬鹿でそれ以外の事は結構何も知らない」って言ってっけ。
 ミチルは目の前の「如何にも賢そう」な青年を見ながらそんなことを思いだしていた。

 ‥だけど、こういう情報(黒の思想だとか、反政府組織の詳細)なんてものは、ゴシップに疎いナラフィスじゃなくとも、そう皆が知ってる情報でもなさそうな気はするな。(国家秘密、的な? )
 あれだ、国民を悪戯に恐れさせたくないって奴。この国って、結構過保護‥っていうか、秘密主義なところあるよね。
 だけど、ナラフィスは仲間だから情報ぐらい共有しとかないと‥って感じなんだろう。さっきの表情も案外(反政府組織まじ困るわ~だけじゃなくて)「仕方が無いから話すけど出来れば言いたくないな~」って感じの表情だったのかもしれない。
 この国もだけど、ラルシュも結構秘密主義者だよね。(俺は密かに「ラルシュって案外ムッツリタイプなんだろうな~」って思ってるぞ)
 想像してミチルがにんまりしている間にも、ラルシュによるナラフィスへの反政府組織講座は続いていた。

 (白の思想寄りな城の政策と合致しない)黒の思想を信仰しているゆえに反政府組織と呼ばれている‥と説明した上で黒の思想の説明を聞いたナラフィスは
「黒の思想‥考え方自体は合理的で正しい思想だっていえるよな。別に考え方自体は‥間違ってるって感じはしない。だけど問題は‥その考えに固執するあまり白の思想主義者を受け入れられていない‥そんなところがある‥って感じかな? ‥わからんけど」
 って腕を組んで考え込む。
「黒の思想は確かに国の発展にとってなければならない考え方だ。だけど、白の思想同様「それだけではダメなもの」なんだ」
「それは一つの考え方だけでなく、いろんな人の意見を聞くべき‥って意味で? 」
 ラルシュの言葉に、ヒジリが首を傾げ‥口をはさむ。
 その答えが、冒頭の言葉だ。

「人々の生活水準を発展させる根底となる「利益追求」‥物理的な欲求を満たすための経済活動全般。「いいものがほしい」「よりいい暮らしがしたい」人間のあくなき物理的な欲求は経済を発展させる起爆剤だ。
 経済学とは、だけど、それが人間の本質に密接に関わっている限り‥社会のルールにのっとっていなければならない。‥倫理、道徳観がもっとも必要とされる学問なんだ。
 各自自分の利益追求の先にこそ、社会の発展がある‥って彼らは考えているが‥それだけじゃない。
 盗んだり殺したりしなければさえ、社会のルールを守った‥と言えるかどうか。
 そもそも、社会のルールとは何ぞや」
 さっきまで説明していたラルシュの突然の問い掛けにヒジリが首を傾げる。
「何って‥」
 急に聞かれても困る。‥そんなに聞いてなかった‥わけでは無いけど、‥うん。
 ヒジリが苦笑いして、いったん言葉を濁し
「法律とか? 」
 どうにかこうにかって答えをひねり出す。
 ラルシュはそれに頷くと
「それも一つではあるね」
 って微笑んだ。
 ご名答、満足する答えですね、ってわけではなさそうだ。
「あとは、刑法もそうだな。
 さっき言った他人の権利を侵さず奪わず殺さず‥は刑法の管轄だな」
 さっきまで黙っていたミチルが付け加える。
「つまり‥彼らが「ルールは守ってる」って主張してるのは、刑法のみのことで、法律とかまでは守ってない! ってことか? でも、法律違反なら逮捕できるよね」
 ナラフィスがポンと手を打って笑顔を浮かべた。
 そう簡単なことでもない‥ってことだろう。

 問題は、彼らが法律の隙間を抜けて来るって話。「そんなこと常識的に考えてやらないよね」ってことに対する法律っていうのはないことが多い。
 法律にするほどでもない‥とかじゃなくって‥

 奴らの発想に法律が付いてきてないって現状。

「法律も司法も、過半数‥だいたいの人から見れば「当たり前」のことを文章にしている。それは何故か。
 ‥ある人にとってそれは、当たり前ではないということが起こり得るから。
 力があるものがそう言ったからそう、ではなく、これは社会のルール(法律、刑法)で決まっている‥とあらかじめ決めておく必要がある。
 それが公平な社会の実現には必要だ」
「そりゃね。そりゃそうだ‥。
 十人十色、100人いたら100の意見がある‥。性格やら趣味嗜好ならそれでいいだろうけど、善悪の問題はそうはいかない。
 公平な社会‥

 ‥あ、社会保障‥か」
 途中で「分かった」って顔をしたのは、ミチルだ。
「富める人も貧しい人も国民全員が安全に安心して暮らせる社会の実現‥。そういう「相互扶助」って考えが黒の思想主義者にはないって話か‥? 」
 そう呟いて眉を顰める。
 つまり「社会のルール」とは
「強者のみが利益を追求する社会ではなく、すべての人間が公平に利益を追求しうる社会の枠組み‥」

 黒の思想主義者は基本、個人主義、実力主義者の集団だ。
 自分に厳しく、他者にも厳しい。
 同じ目的を持つもの同士集まっているが、別に助け合うって感じではない。
 ただ、同じ方向を向いて同じ行動をしているに過ぎない。
 つまり、利害が一致したから一緒に行動しているに過ぎない集団ってわけだ。
 努力を尊む彼らは、例えば怪我その他で働けない社会的弱者を「努力しない忌むべき存在」と切り捨てることをいとわない。それは、相手が仲間であろうとも‥だ。(仲間じゃなかったら猶更‥初めから歯牙にもかけないんだろう)
 
「ストイックな実力主義者で、自分にも他人にも優しくない集団って訳か‥」
 俺も利己主義者かなって常日頃思ってるけど、流石にそこまで酷くはないな。(違う、ナラフィスはただの研究至上主義者で他のことに無頓着すぎるだけだ)
 ナラフィスが呟いて
「でも、黒の思想主義者だからって、そういう奴らばかり‥そういう考えに凝り固まっちゃった「頭が固い」奴ってわけでもないんでしょ? 」
 ラルシュに聞いた。

「そりゃね‥でも、インフルエンサーは確実に「そういう奴」だね。
 彼らは、そういう‥純粋な存在なんだ」

 ぼそり、とラルシュが呟く。
 ミチルがそっとヒジリを見る。
 ヒジリは
 他人事の様に、「へ~、そういうもんなんだ~」って顔で話を聞いている。

 ヒジリは。
 ‥ヒジリも白のインフルエンサーだ。
 だけど、幸いなことにヒジリには「記憶を失って地球で暮らして来た」記憶がある。地球で「いろいろな人の意見」を聞く機会に恵まれて来た。
 夜の国での記憶を失っていた故に、柔軟に知識を吸収することが出来た。
 だけど、あのまま‥幼少期からずっと夜の国に暮らしていたら‥白の思想寄りの城で暮らしていたら‥
 きっと白のインフルエンサーであるヒジリは「黒の思想なんて理解もできない」って人間に育っていただろう。
 今の「ある程度柔軟な姿勢」をヒジリが持っているのは、ある意味奇跡だと言える。

 ヒジリがああいう性格だったからこその奇跡だって言える。

 生まれながら貴族ってのはいない。貴族の家で貴族の生活をしてきたら貴族になるんだ。もし、平民の子供だって貴族の家で貴族の生活をしたら貴族の様になるだろう。
 これは「氏より育ち」だ。
 そういうことではなく、どんな環境であれ、変わらない「本質」って話。
 『心が美しいシンデレラは、苛められても美しい心が変わることなく、そして美しい娘に成長した』
 有名な話ではあるが、これは「特殊ケース」だ。
 シンデレラは、特別に「ブレない性質」をしてたってことだろう。
 優しいだけではなく、彼女は心が特別強かったんだ。
 普通だったら、苛められて育つうちに心が蝕まれ性格が捻くれた暗い大人になったって、意地悪な義母や義姉を恨む暗い大人になったっておかしくないのに、だ。
 むしろ、それの方が普通だろう。

 シンデレラは普通のラッキーガールではない。

 つまり‥それだ。
 ヒジリも特殊ケースなんだ。
 環境が変わっても「性格そのものは変わらない」が、「世の中にはいろいろな人間がいる」ということを知ることが出来、また持ち前の博愛精神から‥「そんな人たちも幸せに暮らす術はなかろうか」‥と考えた‥ってこと。

「いろんな人がいるってことを認めることは‥だけど、残念ながら容易ではない。
 国民は、あの国(夜の国)しか知らない。そして、皆前に倣え‥じゃないけど、城の政策に沿った生活を何の疑問も持たず過ごしている。
 それは、「環境」だ。特に不便が無い限り、人々は日々の生活‥自分の置かれた環境に疑問を持つことも反抗心を持つこともない」
 ラルシュが話すことをミチルは頷きながら聞いていた。
 日々に疑問を持つこともないかな? どんなに平和でも、「これでいいのかな? 」とか「もっと良くならないかな‥」って考えること位はあるけど‥とは、ちらりと思ったが、口には出さなかった。
 ラルシュが話しているのは、「あくまでも夜の国では」って話で、地球とは事情が違うこともあろう。
 それ程、夜の国の住民の政治に対する信頼度が高いってことかな、と納得することにした。
 ヒジリもそう思ったのか、複雑な表情をしている。
 ナラフィスは‥
 興味がないのか、聞いてもいないって感じ。
 微妙な表情の「地球組」にラルシュは苦笑いをしながら
「そんな彼らに、変化を与えうる唯一の存在が「インフルエンサー」だったってわけ。
 平凡で当たり前だと思っていた生活に疑問を持たせ、「もしかしたら別の生活もあるかもしれない」って期待を持たせる。
 そういうことが出来る人間。それがインフルエンサーだ。
 インフルエンサーはいるだけで人々を惹きつける。
 だけど、インフルエンサー自体が彼を‥誰かを「変える」わけではない。
 インフルエンサーと話した者は、生活の中の「ほんの小さな疑問」や「欲求」「不満」に気付かされる。インフルエンサーは言うなれば「気付かせる」切っ掛けに過ぎない。
 気付く‥それは、小さなことなのだが‥彼にとっては「特別な変化」だ。
 恋が今までの平凡な生活に色を与えるように‥、それは生活を大きく変え得る」
 話しをつづけた。
 
 恋が今までの平凡な生活に色を与える‥!

 このセリフ、ラルシュが言うと‥嘘っぽいことこの上ない。嘘つけお前、そんな体験したことないだろう。って突っ込みそうになったのをミチルは何とか我慢した。
 きっと「一般論」って奴だろう。
 俺にもそんな体験ないけど、‥なんか一般論としては分かる気がするから‥ラルシュもそういうつもりで言ったに過ぎないってことだろう。

「心が変われば‥行動に移したくなる。
 疑問の解決に乗り出したくなるし、不満を解消したくなるし、欲求を通したくなる」

 それが国家規模になったら‥レジスタンスになるってことか。
 
 人々の生活に色を添える「気付き」(変化)‥これは、薬だ。社会をよりよく変えていく切っ掛けとなる薬。だけど、過ぎれば害になる。‥つまり毒になる。
 毒と薬は紙一重って話だ。

 頭を抱え込み、深いため息を着く一同(ナラフィスは除く)だった。
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